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モモちゃん 1
上京して3年目の1999年、私は茶色いウサギを飼った。
足立区の家賃5万円のボロいマンションで飼うなんて無謀な行為だったが、
物心ついたときから動物と暮らしていた私には動物のいない生活は考えられなかったのだ。
今思えば東京暮らしの寂しさに耐えられなかったのもあると思う。
命をそんな理由でそばに置いては本当はいけないんだろうけど。
一応管理会社に問い合わせてみると、鳴かない動物でうるさくなければ良いとのこと。
ウサギ、良いじゃん。
1999年は卯年だった。
巷ではウサギブームでペットでウサギを飼う人も多かった。
私は年末の休みを利用し、池袋西武の8階にあるペットショップに向かった。
心はもう決まっていたので、早々に飼育グッツを買い、
あとはウサギ様を迎え入れるばかりになっていた。
耳の短いネザーランドドワーフ。
毛がビロードのような触り心地のミニレッキス。
どのウサギも可愛くて迷った。
ふと一番端っこのガラスケースの中に子ウサギというにはちょっと育ちすぎた
茶色くて鼻の周りだけが泥棒のように黒い、微妙に可愛いのか?可愛くないのか?というようなウサギがいた。
プレートには『ヨーロッパトイラビット』と書いていた。
そんなウサギの種類聞いたこともないし本にも書いていなかった。
『なんかずっと寝てて太々しいし、ビジュアルもあまり可愛くないぞ…。』
とりあえず心を落ち着かせるために上の階のロフトに行ったり、
スウォッチ売り場をのぞいたりしてみた。
やっぱりあの茶色いウサギが気になる。
意を決して8階のペットショップに戻り、店員さんに
『あの端っこのガラスケースの中の茶色いウサギを下さい。』
といった。
ウサギはメスだった。
泥棒顔の女の子。
名前は『モモ』にした。
ここから一人と一匹の9年余りの共同生活が始まるのである。
この写真はだいぶ育ってからの写真です。