【感想】マリグナント 凶暴な悪夢
2021年 アメリカ
監督 ジェームズ・ワン
出演 アナベル・ウォーリス
マディー・ハッソン
ジョージ・ヤング
あらすじ
感想
やたらと評価が高く、2021年ベストに挙げる人も少なくない本作。悪夢ホラー繋がりということで、『ラストナイト・イン・ソーホー』に続いて視聴しました。
初めはよくあるスリラー系ホラーの出だしというか。暗闇からパッと謎の怪人が襲いかかってくるシーンが多いんだけど、フェイントを多用したり、登場の仕方を凝らせたり、とにかく怖いジャンプスケアを作ろうという気迫が感じられました。
ただまあ、良くは出来てるんだけどそこまで絶賛されるほどなのかなぁと試聴を続けていると。中盤から後半にかけてはガラッと雰囲気を変えてきます。監督が『ジャンルをブレンドしている』と語っていたそうなんですが、まさにそんな感じ。
中盤は推理パートみたいになっていて、主人公であるマディソンの過去が徐々に明かされていきます。その情報の出し方が実に絶妙で、いきなり核心に迫ることはなく、かと言ってあまりチマチマ出しすぎることもない。サスペンスとしても非常によく出来ていました。
特に殺人鬼の正体に関しては、情報が出揃ったあたりでなんとなく観客側も推測できるので、あーもしかしてあの伏線はこういうことなのか、って見ている間に気付くことができました。観客の理解度を巧みにコントロールして、映画の進行に合わせる技術は素晴らしかったと思います。
そんでもって、ラストにかけてはアクション映画になるんですよ。あんまり言うとネタバレになるんですが、殺人鬼の特徴を活かしたユニークでスタイリッシュな動きがめっちゃ気持ちいい。見ていて完全にホラーであることを忘れるくらいの完成度でした。
ホラー映画って、最後まで観客のテンションを持続させるのが難しいジャンルだと個人的に思っていて。メインとなる怖いシーンは記憶に残ってるんだけど、他はどんなストーリーだったっけ、って私はよくなります。例えば、『リング』を見たことある人、あれも貞子が出てくるシーンしか覚えてなかったりしませんか?
この映画は、序盤にとにかく怖がらせて観客の心を掴み、あとは色んなジャンルの要素を取り込むことによって最後まで楽しませようという意図が感じられる構成になっています。ずっと新鮮な高揚感を維持しながら見られるわけですね。このエンタメに極振りしている感じが、映画好きにウケたのかなぁと思いました。
私はといえばそこそこ捻くれてますので、あまり期待値を上げすぎずに見ることをオススメします。確かに全体通してめっちゃ面白いんですけど、キャパオーバーしているというか、各ジャンルとして見ればどことなく中途半端さがあるような感じ。これはベスト映画なんだ!と気張らずに、ジャンクフードを食べるような気構えの方がより楽しめる映画だと思います。
まとめ。ジャンルを混ぜることで、よりエンタメに特化させたハイブリッドな一本。怖さも謎解きもアクションも全て平均点以上、時間を忘れて楽しめる映画、って感じです。
以上、お疲れ様でした。
視聴:アマプラ