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ロックに留まらぬ多彩な魅力 ロック名盤感想シリーズその③ 『Sticky Fingers』/The Rolling Stones

ストーンズと言えば

 ジャニーズの某グループの方が若者には通じることが多いであろう今日この頃、しかしローリング・ストーンズは今もなお精力的に活動している、生きる伝説である。ビートルズやクイーンの知名度を見るに、劇的な最期というものはある程度人気を招くものではあるが、今でも活動しているというのは本当に素晴らしいことである。私は完全にクラシックロックは後追い世代で、ジョンやジョージ、カートでさえ生きていた時代を知らないほどの若造であるが、そんな私にとって今も生きているというのは、それだけで感動に値するのである。
 私のストーンズの印象としては、R&Bなどの要素をルーツに持つ、ポップ・ロックとはまた違ったロックといった感じである。そしてその中でもこの『Sticky Fingers』は耳馴染みが良かったので、今回語らせていただこうと思う。
 位置づけ的にはビートルズでいう『The Beatles(ホワイト・アルバム)』のような、アーティスト本人らが立ち上げたレーベルの第一のアルバムである。あっちが個性のぶつかり合いのような混沌としたアルバムであるのに対し、こちらはわりと調和のとれた、明るめの楽しいアルバムである。


Sticky Fingers

1. Brown sugar

 代表的なリフから始まるノリノリナンバー。キースはリズムギタリストというのが面白くて、有名なギターソロというのはあまり聞かないのだけれども、それでも成り立っているというのが凄いところですよね。その代わりにサックスのソロが入っているのも、柔軟性があってとても良い。新しいストーンズを象徴する素晴らしい一曲。エリック・クラプトンが参加したヴァージョンも素晴らしいので聴いたことがなければ是非。

2. Sway

 なんか不思議な曲。この曲のギターも大好きなんですけど、これはミックが弾いてるらしいです。そしてコーラスが、フーの人などが参加していることもあって、聴いていて心地よい。アウトローのギターもとてもかっこいいんですけど、曲の中になじんでいて自然に聴けますよね。

3. Wild Horses

 ゆったりとした落ち着きのあるセクシーな曲。アコギのサウンドがよく沁みますね。スライドギターがたまらない。

4. Can't You Hear Me Knocking

 今ではあまり聞かないような潰れた、刻みのよいギターから入って、力強いボーカルが続く。そして後半からはジャムセッションが始まるという面白い曲。サックスもギターも素晴らしいですが、リズム隊が良いですね。段々盛り上がっていって、最後は意外とすっきりと終わるという。これも癖になりますね。

5. You Gotta Move

 ちょっと間の抜けた?ようなボーカルとギターが特徴的な曲。もともとは黒人文化の伝統的な楽曲のようですね。それをここに挟み込んでくるのが面白くて、ストーンズの特徴とも言えますね。それこそ最初の方は大体カバーでしたし。

6. Bitch

 前曲とは一転して疾走感のある曲。サックスも相まってとてもノリノリ。『Brown Sugar』がシングルの時のカップリングがこれであったそうだから、相当ノリノリなレコードに仕上がっていますよね。「Yeah, when you call my name」のところからが大好き。盛り上がりがぶちあがります。

7. I Got The Blues

 今度はゆったり目な曲。緩急があって良いですね。でもとても力強くて、思いが伝わるような曲。こういう恋と歌そのものをテーマにした曲って良いですよね。

8. Sister Morphine

このアルバムで一番暗い感じの曲。最初はアコギだけで始まり、だんだん他の楽器が参加していく。退廃的というか、沼に沈んでいくような息苦しさを感じます。これでいてまあまあ曲が長いのが効きますよね。フェードアウトだからどうなっちゃうの~ってまんまで曲が終わってしまう。

9. Dead Flowers

 さきほどの曲とは違った優しい感じのサウンドから始まります。まあでも歌詞はどこか危うさを感じさせます。この時期の曲はやっぱりドラッグソングが多くて、このアルバムでも全体的にそうなんですけど、ドラッグソングがドラッグを服用しなくなってしまった私たちにありのままの姿をさらけ出しているのか、疑問に思う所でもあります。

10. Moonlight Mile

 どこか浮遊感のあるサウンドの曲。このアルバムがこの曲で締まるのが結構好きですね。どこかに物足りなさのようなものを感じつつも、もうおしまいだと諭されているような。神秘的な気分にさせられます。

総括

 本当にロックというジャンルに留まらないと言うか、メインジャンルはロックじゃないんじゃないかと考えさせられると言うか、そんなアルバムでした。様々な音楽性を見せてくれるんだけど、実験的というわけではなく完成していて、とても聴きごたえがありますが、聴いていて疲れない。まさに名盤だと思います。コンスタントに聴きたくなるようなアルバムです。ビートルズとはまた違った魅力を見せてくれます。ストーンズのキャリアは長くて全て追うのは難しいですが、ゆっくりと聴いていきたいですね。



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