Be Place シニアの地域デビュー
ほどよい関係って無理ですか?
●地域デビューのオーディション
「シニアの居場所探し」というテーマを目にすると必ずといっていいほど登場するのが「地域デビュー」というキーワードです。これまでの勤務先中心の生活では自分が住んでいる家の周辺や近隣とのお付き合いなどありませんから、リタイアしてから生活の基盤が地元となればそれはそれで外せないポイントのひとつではあります、が。
自分の子供が幼い頃のネットワーク、たとえば野球、サッカーといったスポーツクラブなどをきっかけに親同士が知り合うといったケースや、ある程度世帯数の多い団地に住んでいて自治会などのコミュニティに携わったときの縁があるなど、ある程度の知り合いがいる人たちはこの地域デビューとやらの一次予選は通過しているような気もします。ここでいう「居場所探しの迷い人」とはそれすらも持たない人たち。向こうからやってくるキッカケなどありそうもない人が「地域デビュー」をするにはいったいどうすればよいのでしょうか。
●シニアの社交性と面倒くささは紙一重
これまでの時代は、どんなに無趣味で平凡な生活をしていようとも日常生活で人と触れる機会に買い物の場面などがあったりしましたが、最近のスーパーマーケットではセルフレジが増えてきてコンビニでさえもレジにおける購入手続きはほぼ自力で無言の処理をするのが常識のようです。また、健康保険や年金手続きといった行政機関の窓口や、病院など医療機関におけるやりとりも少なからず会話があるとはいえそれはどちらかというと必要最低限の確認作業だけに終始します。
このように日常での会話の場面が縮小しているというのに、ことさらに地域を意識した新しいコミュニティへの参加を頑張らなくてもよいのではないかと。今まで通りに日常の会話に少しふくらみをもたせたぐらいの社交性で充分ではないかと簡単に思ってはいけません。ただでさえ多くの生活インフラでセルフ化が進む中、もともと最低限の会話しかしてこなかった人間が急にウィットに富んだやりとりなどできるはずもなく。それも目の前にいる他人は間違いなく年下でしょうから聞き流されて終わりです。ちょっとした会話上手というのはその人が本来持つ才覚に負うことが多いので、慣れないことは逆効果にしかなりません。ここは無理をしないように。
●まだ見ぬ船出の行き先は
「地域デビュー」はどうやら今までにない何らかのアクションを自ら起こさなければいけないみたいです。ただ住んでいるだけではダメで存在のアピールが必要なようです。では、その地域デビューをするためのきっかけとはいかなるものか。一般によく言われているその動機とエントリー方法にどんなものがあるのでしょうか。
〇「仲間づくり」にサークル活動はいかが、らしい
目的は地域に知り合いができることだと気持ちを割り切ってしまえば、特に興味のある趣味だとか得意ジャンルを持たなくてもどっかのサークルに入ってしまうのがひとつの方法。ふだんはあまり見ていない役所関係からの広報や自治会情報をチェックするとかならず種々雑多なサークル活動の案内が出ていますね。そこで頑張ろうなどと思わずに暇つぶし程度に軽くデビューしてみる感覚で。ただ、気を付けなければいけないのはそこでデビューしてもいきなりいい配役(役割)を望まないことですね、脇役で良いのですよ。どこにもいろんなタイプがいますから、会社と一緒で。あくまで適当に。
〇「学ぶ、習う」ため講座に通う、らしい
成人して社会に出る前までの勉強はみずから学ぶことを選択してというより仕事に就くためという手段のような目的ありきだったというのは否めません。仕事に従事してからも必要に迫られて対応するためのスキルアップ、学ぶというよりこなしていくといったイメージでしょうか。これから学ぶ、習うということは誰からも強制されませんし生活のためでもありません、しかし逆に何も役にも立たないかもしれません、いや、立たないでしょう。美しく言えば自己啓発とでもいいましょうか。
もともと勉強したいことや趣味などないので身につかないかもしれませんが誰も期待していないので心配はありません。たまに、いままで気が付かなかった世界に引き込まれるきっかけになる人もいますが、ほとんどの場合こういったアクションが地域デビューとしておすすめされているのはそこでのふれあい、ネットワークづくりが狙いです。ということはあくまで謙虚に学ぶ、を忘れずに。
〇「楽しみ」を求めてイベント参加、らしい
確かに何らかのイベントに参加するというのはきっかけとして難易度が低いような気がしますね。ただ、「楽しみ」を求めるのが必須になってしまうと選択肢が絞られてしまうので様子見程度に覗いてみましたぐらいがちょうど良いのではないでしょうか。イベント内容も個人の行動が能動的に求められすぎるのもどうかと思いますし、やはり人が集まると多種多様なタイプの集合体になりますから自然と組織化されて俗にいう「会社」と何ら変わらない感覚になることもあります。自分の趣味嗜好がはっきりしていればそれなりのスタンスがもてますが地域デビューのきっかっけであればいつでもフェイドアウトするくらいで臨んだ方が身のためです。
〇「ボランティア」で役に立ってみる、らしい
地域デビューの入口としてはまったく非の打ち所がないように思いますね。ボランティアといっても内容はいろいろありそうなので特にスキルがなくても気持ちさえあれば参加できるものが見つかるでしょう、もともとそういう主旨の活動ですから。近隣の公園や歩道のごみ拾いから花壇の管理、子供たちの登下校の見守りなどそれこそシニアならではの社会的役割の発揮でしょうか。そこでは大小問わずある程度の責任もでてくるのでチームワークが必要でコミュニケーションが生まれますから最低限の「孤立」は避けられるでしょう。
●どんな船に乗ろうとも
識者がアドバイスする「サークル活動」、「学び直し」、「イベント参加」、「ボランティア」といった「シニアの地域デビュー」エントリーのきっかけづくりは正攻法で王道中の王道です。自分の置かれた経済状態や住環境にあわせてあまり考え込まずに気軽に身を投じてみても損はないでしょう。
ただ、どの入り口を選択しても上手くいかないひとに共通したことがあるそうで、せっかくの機会に失敗しない心得とは。
・必要のない肩書は言わない聞かない
・過去の自慢はしない
・隣近所の噂話はしない
・卑屈にならない
だそうです。まあ、これにかぎらずリタイアシニアにとっては生きている限り日常生活で気を付けるべき不滅の心得みたいなものです。
「孤独」は甘んじて受け入れようともせめて「孤立」化は避けようと気合を入れて「地域デビュー」へ重い腰をあげる。そんな心持でオーディションを受けてみたところ、はたして上手くいくのかどうか。
すべて自分次第とはいえ ほどよい関係って無理ですかねぇ。