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Be Place 役職定年になったら

「役職定年」がやってきた

● それこそ余計なお世話ですが
 役職定年、いわゆる「役定」は会社勤めをしている五十歳代中頃から始まります。それまで役職者として働いてきた人が「まあ、そろそろ後進の若手に席を空けてもらえませんか」と肩を叩かれるのですが、具体的に部下がいて管理監督の責務を負ってきた人と年齢や実績などを考慮して役職待遇だった人、そのどちらであっても「役定」となれば肩書の名称こそ会社ごとに違いがありますが業務の最前線からは一歩退くことになります。
 長年勤めてきた会社組織の中で同期や同世代全員が横並びでそうなるのであればまだ納得もするでしょうがそうではないので面白いはずがありません。外部からはその変化が見えにくいのですが、周りのスタッフとの関係性や会社内の風景は微妙にトーンダウンします。年収もそれまでの二~三割減でしょうか。

● そこに「居場所」はあるか?
 会社をひとつのスタジアムに見立てましょう。最初は事業種目である現場のフィールドで戦っている最前線の現役選手ですが、ほどなくして年齢とともに実績次第でコーチや監督となりやがてスタンド席への移動(異動)がはじまります。役職者は指定席エリアになりますがランクに応じてバックネット裏から貴賓席などさまざまなシートがあり会場によってはS席からC席というように細かく分かれていたりもします。ゲームごとに指定席内での移動(異動)も何度かありますが、今回は入場ゾーンから別になっている自由席へと移ることになりました。これが「役定」です。
会社というスタジアムの中へは入れますし、考えようによっては「自由」な側面もあって、またチームを応援するもっとも熱気に満ちた団体もいたりしますが・・・。

● 「割り切り」、「居直り」、「間仕切り」
 最初からずっと自由席だった人たちとは違い途中入場はやはり雰囲気が違うので戸惑いますが、入場ゲートこそ変わってもスタジアム自体は同じなので馴染んでしまえばそこが居場所にはなるでしょう。実はこの「役定」、考えようによっては会社を引退するまでのソフトランディングとして最適なチケットなのかもしれません。いずれは強制退場を命じられることになる定年退職の年齢に到達すると、もう一度「再雇用」という入場資格を選択できるチャンスが巡ってくるのですがそこで課せられた条件は圧倒的に悪くなります。このタイミングでいきなり指定席エリアから再入場という移動は精神的・金銭的に落差が大きくてしばらくはストレスを抱えることにもなりかねません。
 見方を変えれば、「役定」とはまだまだ会社という空間に居場所があるという「割り切り」、再雇用までを視野に入れた会社員生活満了へのソフトランディングという「居直り」、退職後からの後半人生の可能性を探る助走期間に見立てて、会社への期待や不満に蓋をする心の中の「間仕切り」を持てれば、それはそれなりに自分にとって有益なモラトリアム、シンキングプレイスとなり得ます。
● 情報収集と種まき
 「役定」は自分なりのポジティブなシンキングプレイス、どう活用するのか? 就業時間や休日などの環境は再雇用と違ってまだまだ自由にはなりませんが、部下や業務の管理という責任がなくなることによって精神的にも物理的にも余裕が生まれます。また、以前は会社という空間そのものがあまり居心地の良い場所ではなくなるというケースも多かったのですが、IT環境の成熟とコロナ禍が追い風になりました。リモートワークが増えることによって微妙な人間関係やリアルな場所に身を置く機会がずいぶんと減り、在宅勤務であればある程度の個人的な情報収集もやりやすいですし、また何より今後の家庭内での過ごし方の予行演習にもなります。
 「役定」の居場所は具体的に目に見える場所ではなく会社員として後ろ指を刺されない程度にソフトランディングの立場をキープしながら、自分にとって馴染めそうなシニア生活のヒントを見つける心の置き所ということですね。

● トライアルアンドエラー
 何が自分に馴染むのか、見つけた人はよく偶然を口にします。そう、大上段に振り構えず適当が最適です。では、いくつかヒントを。
・「たまには途中下車」
 会社勤務のメリットに交通費があります。リモートワークで定期券支給が  減りましたが、それでも出社時の交通費は会社負担になりますね。これを生かさない手はありません、ぶらり途中下車して散歩三昧。意外と知らないことが発見できるかも。
・「あの日の先輩こんにちは」
 仕事で脂ぎった時代にはあまりお付き合いはなかったけれど、早々と出世街道からリタイアした同僚や地味だった先輩諸氏。実はこれからの道筋には有益なネタを持つプロかもしれません。特に会社員人生のソフトランディングにはね。
・「夢の中へ」
 探し物は何ですか? 趣味は見つけようとすると本末転倒で見つけにくいものですが、好きなものは何だったのだろうかと忘れ物を探すくらいの気持ちで。たとえば音楽ひとつをとってもバンド活動もあれば、ただ聴くだけでも十分な趣味です。それもジャンル別に追及すると奥が広いですし、またオーディオに特化する人もいますね。
・「SNS」
 やっている人も多いと思いますが、やってない人はどこかのタイミングでトライすることをお勧めします。さまざまなアプリがありますが流行を追うのは若い人たちに任せてFacebookあたりで十分ですね、広げる必要はありません。近しい人の意外な一面が発見できますので情報収集には最適です。また上手く使えば適度な交友関係構築にも役立ちますし、好きなものが見つかってSNSでつながるというクロスネットの可能性も。

● こんなこともあり・・・です
自分が住んでいる街を中心とした「沿線飲み会」を立ち上げるというのはどうでしょうか。中高年の居場所探しでよく指摘されることのひとつにローカル(地域)に馴染むというのがありますが、実際に飛び込んでいくにはなかなかハードルが高いのではないかと思います。
ここでは、会社に勤めているうちに同じ沿線に住む先輩、同僚、後輩に声をかけて定期的に地元で飲みましょうと企画します。やがて徐々に仕事で知り合った人たちにも拡げていきますが大切なのは最低限のルールを「仕事の話をしない」とするのがポイントです。
 家の近くで飲む気楽さもあり、それまで気が付かなかった近隣情報が得られたり仕事抜きだと雑談も四方八方に飛び交ってそれぞれ参加者の意外な一面が見えたりします。五十歳代以降の人たちであれば住居もそのままでしょうし、会社を退職しても付き合いが続いていくネットワークの場所になるかもしれません。頻繁に集まる必要はありませんが定期的に継続することが理想です。
 ここを発信基地にして、ゴルフやら何やらと分科会もありですね。「これって街のスナック?」、そう、飛び込みでお店に入る勇気がない、ちょっとカラオケは苦手、そんな人には自分なりのこんな居場所造りもあり・・・です。

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