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Be Place シニアの矜持とプライド

人のふり見て我がふり直せる?

●リタイアシニア  資産たまらず無駄多し
 長年の会社員人生で身についてしまった無駄なものはたくさんあります。リタイア後に頑張って断捨離のまねごとをしたところで物は捨てられますがお腹周りの脂肪なんかはそう簡単にはいきません。これまで積み重ねてきた不摂生な毎日の置き土産みたいなものですが、うかうかしているとこれから始まる自堕落なシニアの生活習慣が拍車をかけるかもしれないので油断は禁物。健康問題のみならず医療費問題にまで直結するので今まで以上に注意が必要です。いったい自分にどれだけついているのか見たくはありませんが鏡を見れば一目瞭然で確認できるので頑張るしかありません。

●居場所探しに邪魔なもの
 さて、身についた無駄なものでその筆頭になるのは何かといえば。身に付いた贅肉は見ればわかりますが実に厄介なのは無意識にやってしまう習慣、その裏側に潜む勘違いしたプライドです。このプライドが引き起こす数々の行動は自分で客観視できないのでまったく気づかないところが面倒なところ。 
 見た目には贅肉があまりないので安心しているスリム体形のシニア軍団もこれに関しては他人ごとではありません。いや、逆にこのタイプにこそ無駄なプライドを隠し持つ困ったシニアが多いのかもしれません。世間的には太っていて尚且つプライドが高い老人などは時として嘲笑めいた笑いの対象になることがありますが、プライドが高くて痩せた老人というのはなんだか手に負えない難物イメージのステレオタイプで厄介者にしかなりません。
 プライドが為せる悪癖は自覚症状がないため、ついやってしまうのですが、少なからず「シニアの居場所探し」にとっての障壁となることがあるので要注意です。

●それって必要ですか?
 実はこの厄介なプライド、リタイア後は無駄なものかもしれませんが、これまでの長きにわたる会社員人生のなかで時々の重要な決断をしたりあらゆる経験の繰り返しで身に付いたものだったりしますから、すべて最初から悪習慣の元凶だったわけではありません。そのとき自分がおかれた仕事環境や果たすべき役割に応じて取捨取得してきた考え方の歴史がベースとなっているはずですから、個人差こそありますがそのプライドは健全な大人としてはある程度求められるべきものだったりしました。
 ところがその築き上げたプライド、美しい言葉で言えば「矜持」とやらも生きる世界が変われば通用しなくなることもあるみたいです。もっとも「矜持」というものは本来守るべき大切ものですからすべて否定するものではありませんが、問題はそれが普遍的な「矜持」なのか単なるその場面でのみ許された「プライド」だったのかどうか。会社員時代はあたりまえに振舞っていたのにリタイア後に周囲から疎んじられる所作の数々、生活環境での立ち位置が変わったのは自分なので仕方ありません。なんとなく自分でも気づいているあれもこれも含めて、まず一度立ち止まってみるのが身のためかもしれませんね。

●プライドは崩れる前に
 多少は自分にもあるだろうと謙虚に思っていたプライドもそれが現実に崩れる瞬間にはうろたえてしまい、思っていた以上に小心者だった自分に落ち込んだりします。組織内で役職定年や雇用延長など経験して自分の身の程をあらためて思い知るような助走期間を経験してきた人などはまだしも、中途半端に組織内でエリートという立場にいた人たちはちょっと大変です。
 入社後まもなくして時代が求めるのはジェネラリストだとおだてられ、その気になって研修、試験、転勤も無難にこなしながら割と早くに役職へと昇格する、または専門職採用でスペシャリストのつもりだったのに少しばかり常識的で器用なところが評価されてしまい、自分にとって想定外のマネジャー職までこなして定年を迎える。まさしくそんな人。

●避けたい「孤立」
 シニア世代、リタイア高齢者は世の中から「居場所探しの迷い人」のように言われていて、その解決方法の糸口は決まって「人のつながり」を大切にという着地をみます。間違いではないですね。ただ、よく論じられることの多い「孤独」と「孤立」はまったく別物で、見方によって「孤独」は必ずしもマイナス面ばかりではないですしリタイアシニアに限った話でもありません。問題は「孤立」です。充実した人間関係のレベルでなくても多少は社会のどこかとつながっているべきでしょう。
 「孤立」を避ける方法、きっかけとして示唆されるものにはさまざまなアドバイスがありますが、ここで重要なのは例の「勘違い」または「場面に合わない」プライドです。日常の買い物や必要最低限の生活行動で接触する相手は、その瞬間のやりとりだけに終始するので多少嫌な思いをしても適当にあしらうことで終わらせますが、目的が「孤立」しない「居場所」探しであればどこであろうと相手との関係に影響してきますね。

●自問自答は限界
 守るべき「矜持」と要らない「プライド」を自ら取捨選択するのはなかなか難しい問題。突き詰めると哲学的な思考の深みに入ってしまいそれこそ面倒なリタイアシニアになりかねません。といっても無意識にやってしまう普段の行動のどれがダメなのか客観的に分かるはずもなく。身近に忠告してくれる人がいればよいのですが、たぶんもう見放されている可能性充分。
 ここは同類憐れみるとはいきませんが、同様な匂いを持ったリタイアシニアと思しき人の行動を観察するしかありません。他人のふり見て我がふり直せ、ですか。意外に人を見て嫌だと感じることは自分もやっていたりします。そこから先、直せるか直せないかは自分次第。
 もしかしていちばん厄介で面倒なプライドはこんなことを考えている自分も含め、斜に構えて「自分はそこまでひどくない」と思う人。それがいちばん根深い「プライド」かもしれません。


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