囁揺的音楽集団AsMRの音楽。いろんな醜い感情が渦巻いているからこそ、綺麗な気持ちが余計に際立つような音楽とは...
囁揺的音楽集団AsMR(ショウヨウテキオンガクシュウダン アズマー)
ピアノ、ヴァイオリン、ベース、ギターという稀有なバンド編成 。ボーカルと声優による囁き、轟音、ノイズ、歪み、そしてあらゆる音により新たな旋律を導き出し、狂っているのか、満ち足りているのか、陶酔しているのか新たな音楽受容体を覚醒させる。
メンバーたちも、なかなかユニークだ。
Ayaka
Bass & Whisper & Lylic。声優であり作詞家でもある。彼女のWhisperが楽曲をASMRにしていく。声優として数々の作品に出演しながら、アニソン、ゲーソンなどの作詞家としても活動。2019年より文学的青春パンクバンド「太田家」Bass&Vocalとなる。ベースは、6年前に仲間とバンドを始める時にかっこいいからと始めた。テレビ東京アニメ「闇芝居」第九期に、第七期に続き出演。他に、アニメ「ピーター・グリルと賢者の時間」ミッチー・ペリグリム役、アニメ「忍者コレクション」などにも出演。
Milli
Vocal & Piano & Lylic。2歳からエレクトーン、ピアノを始め、以後音楽高校、音楽大学とクラシック一筋で音楽を学ぶ。卒業後はモデルの活動をしながら、弾き語りの対バンライブや音楽番組でのサポート出演。
Eschika
Violin & Scratching noise。2019年に、姫とモンスターからなるバンドAmiliyahに加入したエルフの戦士。エルフの村ではバイオリンによく似た楽器があり、幼少の頃より親しんでいた。人間界ではMUSE、Sigur Ros、バッハを愛聴。クラシックはもちろんのこと、ロックバイオリン、フィドルなど、固定概念に縛られず、他ジャンルに対応できるマルチプレイヤー。
GINA
Guitar & Roaring sound。小学生の時に雑誌の広告で興味を持ち、買ってもらったのがきっかけでギターを始める。現在はガールズロックバンド。「BabBubble」でも活動中。
囁揺的音楽集団AsMRの音楽は、超絶技巧派な演奏陣によるテクニカルなプレイの応酬が繰り広げられる"ノイズ・ラウドメタル/シンフォニック/プログレッシブ/メロディアス"な要素が1曲の中で混在。次々と転調しながらドラマを描きだすアバンギャルドな音楽。今、音楽マニアの中で熱い注目を集めだしている、囁揺的音楽集団AsMR。その魅力を、4人のインタビューを通してお伝えしたい。
このバンドは、普段の生活の中で感情を揺さぶる音を楽器を用いたノイズ音として投影するのみならず、人が心に抱く優しさや怒りなど、いろんな感情もノイズ化して表現しています。
――囁揺的音楽集団AsMRがスタートして…。
Ayaka 初ライブは2021年9月でしたけど。メンバーが集まったのが5月だったから、1年が経ちました。
――囁揺的音楽集団AsMRは、ノイジックでラウドでオルタナティブでシンフォニックでプログレッシブで…とにかく複雑怪奇でドラマティックな世界観を描きだすバンドですよね。
Ayaka そうなんです。囁揺的音楽集団AsMRはドラムレスで、変わりにヴァイオリンを加えた特徴のある編成。音源をヘッドフォンで聴いていただくとよくわかりますが、細かい音数がとにかく多いです。歌詞はわたしが書いていますけど。わたしなりに「新しい宗教」を作ろうと思って書いています。どの歌詞も非日常的であり、「死は救済なり」のような、闇に引き込む内容が中心になっています。一緒にズーンと気持ちを闇に落としたい方には、とても寄り得える音楽だと思います。
Milli 囁揺的音楽集団AsMRは、Ayakaさんのウィスパーな語りも入っていれば、わたしもASMR感を意識するように、耳元で聴いたときに、囁きかけるような表情から吐息のような歌声など、細かい息の使い方まで心がけて歌っています。それは、楽器の音も然り。ギターやヴァイオリンも、本来の楽器の鳴り音ではないような不思議なノイズ音もいろいろ弾きながら表現しているから、ASMR感覚でも音を楽しめると思います。
Ayaka だからこそ、音源に関してはヘッドフォンで聞くことを推奨します。
――囁揺的音楽集団AsMRの場合、「ノイズ音」が大きな魅力になっていません??
Eschika 楽器音が作り出すノイズを、魅力的な音楽に昇華してゆくのが囁揺的音楽集団AsMRのスタイル。このバンドは、普段の生活の中で感情を揺さぶる音を、楽器を用いたノイズ音として投影するのみならず、人が心に抱く優しさや怒りなど、いろんな感情もノイズ化して表現してるんだ。たとえば、「自分の思念を邪魔するノイズ」ってあるじゃない?
――えっ、どういうことですか??
Eschika 「こう行動をしたいのに、何か余計な思念が邪魔をして、自分の中で100%その気持ちになれない」。自分の感情を邪魔する思念こそが、アタシたちはノイズだと捉えてる。だから囁揺的音楽集団AsMRでは、あえて綺麗な楽曲を美しいままに表現するのではなく、そこへノイズ音を交え、いろんな感情を巡らせていけるようにしてゆく。誰だって経験していると思うけど、「上手くいくだけが人生じゃない」。むしろ、ノイズが邪魔をし、その逆の心理で生きていくことが多いと思う。そんな"闇の思念"を、"ノイズに落ちてゆく人生"を音楽として表現しているのが囁揺的音楽集団AsMRなんだ。ただし、アタシに関してはエルフ星の戦士で、人間じゃないから。その変な思念は関係ないんだけど。
Ayaka Eschika様は、すでに超越した存在ですからね(笑)。
――GINAさんは、ノイズをどのように受け止めているのでしょうか。
GINA わたし、囁揺的音楽集団AsMRのメンバーとして活動を始める前まで、ギターは綺麗に弾くものだと思っていました。その思念が、このバンドに入ったことでガラッと変わりました。さきほど「死は救済なり」という言葉が出てきましたけど。わたしが、囁揺的音楽集団AsMRを通して表現しているのが「闇に憧れてしまう」という思念。綺麗に弾くべきところは綺麗に演奏しつつ。同時に、綺麗な音をめちゃくちゃ破壊し、汚い音としても塗り重ねてゆく。その対極な表情を塗り重ねることを心がけています。
Milli 囁揺的音楽集団AsMRの場合、メロディーラインを汚すノイズがあるからこそ、むしろ、闇の隙間から響いてくるメロディーの美しさが、より際立つなとも感じています。それこそヴァイオリンの持つ美しいクラシカルな旋律は、その上へいろんな音がノイズのようにガチャガチャと重なり合っているからこそ余計に魅力的に感じますからね。
Eschika そう。そのぶん、レコーディングはめちゃくちゃ大変。
Ayaka それぞれ、すごい数の音を録ってるよね。わたし、ベースのみならずウィスパーや語りも担当していますけど。ウィスパーな声一つを取っても、いろんな息づかいで入れてます。語りを表現してゆくうえでも、然り。笑い声から叫び声、スーハーする息づかいでさえ、いくつものパターンを録るなど、全部の声を収録し終える頃には頭がクラッとするくらい。わたしを含め、みんなかなりのトラック数を使って、1曲1曲仕上げています。
Eschika おかげで、ライブ時に表現するときも、いろんな奏法をしてかなきゃいけないから、大忙し(笑)。
GINA 私たちも、1曲演奏する中でいろんな表現をしなきゃいけないから大変ですけど。聞く人たちも、音源はもちろん、ライブでさえいろんな音が耳に飛び込んでくるあまり頭が混沌としていくから、きっと大変だと思う。
――大変と言うよりは、目まぐるしい音の洪水に巻き込まれ頭が混沌とし、気がついたら現実の世界へ戻っていたという感覚です。
Eschika それって、まさに人の人生じゃない?いろんな醜い感情が渦巻いているからこそ、綺麗な気持ちが余計に際立つような。日々混沌としているからこそ、その本質となる良さを知ると、心が動かされる。囁揺的音楽集団AsMRの音楽が、まさにそれなんだ。
Milli ちなみに、みなさんキャラクターも混沌としすぎてて、しゃべると、見ている人たちが余計に混乱するから、ライブでは一切しゃべらず、楽曲や演奏にすべての感情を詰め込んでお届けしています。
囁揺的音楽集団AsMRの扉(ゲート)を開いて、混沌とした世界へ足を踏み入れていただけたらなと思います。
――囁揺的音楽集団AsMRは、8月1日に新宿ReNYで行われるカールズ系のイベント「MUSIC SHUFFLE & MASHUP LIVE」へ出演します。このイベントへ出演するうえでの意気込みもお願いできますか。
Ayaka この日は、初めて囁揺的音楽集団AsMRのライブを観る人たちも多そうかなと思っています。まずは、「囁揺的音楽集団AsMRの世界観へようこそ」と、みんなを引きずり込みたい気持ちですね。
GINA 囁揺的音楽集団AsMRの描きだす混沌とした世界へ引き込みたいです。
Eschika 我々は完全異世界な音楽性やライブを表現しているから、みなさんの目にどう映るのか。我々は、いつもの通り、我々の世界観を映し出すだけ。ただ、初めて囁揺的音楽集団AsMRのライブを観る人たちが戸惑うだろうなというのは、予測できちゃうよね。
Milli とつぜん、目の前でいろんな現象が起きちゃうからね。
Eschika そう。歌うだけではなく、突然ささやきだしたり、朗読が始まったり。楽器陣に関しても、確かにヴァイオリンやギターの人が演奏しているはずなんだけど。でも、「なんか不思議な音が響いてくる」感覚を覚えると思う。一つ一つの点だけを見てしまうと、理解し、把握するのが難しいかも知れないけど、観ていくうちに、一つ一つの点が線として繋がり、そこに面白さを感じて深くはまってしまう。
GINA いわゆる、「観れば観るほど、噛めば噛むほど」というやつです(笑)。
Ayaka だって、同じメンバーなのに、なんか不思議な音が聞こえると思って横を観たら、Eschikaさんがヴァイオリンを手で弾きながらヴァイオリンらしからぬ音を出してたりしますからね。
Eschika 各メンバーともそうだけど、毎回同じ演奏をしているわけではない。ライブのたびにちょっとずつノイズ面での奏法を変えたり、曲の間に間にアドリブ演奏を交ぜていくように、一つとして同じ演奏は存在しないんだ。そこも、ライブを観ていくうえでの楽しさになっているなとメンバーでありながら感じているよ。
Ayaka 語りだって、ライブごと、その曲にあった詩を朗読したり、その詩もオリジナルで作ったりといろいろしているからね。
Eschika 一つとして同じライブがないのは、もちろん。一つとてして同じ演奏をすることのないライブを囁揺的音楽集団AsMRはお届けしている。ぜひ、囁揺的音楽集団AsMRの扉(ゲート)を開いて、混沌とした世界へ足を踏み入れていただけたらなと思うよ。
Milli 囁揺的音楽集団AsMRは、その場で生まれる即興音楽の面白さを毎回追求し続けています。そこが、わたしにとって新鮮な刺激にもなっていますからね。本当に、そのときにしか観れないライブを囁揺的音楽集団AsMRは表現しているから、ぜひライブを見てほしいんです。
温かく闇に寄り添いながらも、どんどん沼に引き込んでいきますから。
――これからも囁揺的音楽集団AsMRは、負の感情や、闇の中でうごめく感情へ寄り添う音楽を表現し続けていくわけですよね。
Eschika 温かく闇に寄り添いながらも、どんどん沼に引き込んでいくから。
GINA 心地好い闇の世界へね。
Eschika 人って、落ち込んでいるときに、無理矢理明るく元気な応援歌を聴いても、そんな簡単には這い上がれないじゃない?むしろ、落ち込んでいるときに、落ち込んだ気持ちへ寄り添う音楽を聴いたほうが、かえって救われる。毒に対して優しい言葉の薬を塗るくらいなら、そこへ同じ毒を持った言葉を塗ってあげたほうが優しさを覚えられる。それを、音楽を通して差し伸べているのが囁揺的音楽集団AsMRだからね。
GINA 確かに曲調は、闇に寄り添う面がありますけど。ライブを見ていただけたらわかりますが、そこからは強さも伝わってくる。ただ、落ちた感情へ寄り添うのではなく、そこから強さをもらえるからこそ、囁揺的音楽集団AsMRのライブにそういう人たちが集まってくるんだと思います。
Ayaka ライブはコンスタントにやっていますから、気持ちが落ちたときは、ぜひ囁揺的音楽集団AsMRのライブへ寄り添いにきてください。
文:長澤智典
インフォメーション
■ 8月1日(月)「MUSIC SHUFFLE & MASHUP LIVE」
開場16:30/開演17:00
【会場】
新宿ReNY
〒160-0023 新宿区西新宿6-5-1 アイランドホール 2F
TEL:03-5990-5561
【出演】
ANARCHY STONE/囁揺的音楽AsMR/太田家/CANDY GO!GO!
ナデシコドール/Oracle Futaba/月照ラス
【主催】
株式会社マッシュアップエンターテイメント
SNS
囁揺的音楽集団AsMR