肉親のDNA鑑定までを語ろう(1)
「うちの子供撮りたいから、使ってない一眼貸して。」
「おけ」
「まぁ、お礼としては、いつでも遊びに来てや。飯と宿はある。」
そんな連絡をしていたのに、孤独死しているかもしれない。
家族として全うに愛したつもりだった実弟の死の判断を待つ私の話。
某日、K市のUR管理事務所から電話があったようだったが、忙しかったし、借り主の弟に「何かあった?」とメールだけして子供の世話や晩御飯の準備をしていた。
1品目が終わり2品目の途中でふとスマホに目をやると、また電話のあった通知。
今度の語尾は110だった。URからの着信履歴の数時間後に語尾が110の電話なら、こちらもコンロの火を止めて折り返しをする。
K市の警察署につながり
「弟さんが亡くなっているかも知れません。電話を繋がるようにしておいてください。」
他にも色々話したが、端的に言うと。その時の私に出来るのは、配偶者を職場から呼び戻し、警察の指示に従い待つことだけだった。
配偶者が戻ってなお警察からの連絡はなく。嫌な時間がすぎる。出来上がっていたご飯と、途中のご飯の残りを配偶者に任せ電話を見つめていた。子供は先に別のメニューを食べていたのが幸いだった。
「弟さん、1年前に仕事辞めてますが。お金に困ってたみたいですが、無心されていませんでしたか?」
警察の連絡時の言葉が脳を駆け巡り支配する。なぜそんなことに、何も分からない。
二度目の電話では
「腐敗が激しく、生前のお写真とでは比べられないので、お姉さんの細胞を採取してDNA鑑定させてくださいだった。」
これは、現在進行形の話なので、ここまでしか書けない。辛い。怖い。それでも、抗うしかない。生きるしかない。どのルートになるにしても、泥沼にならないようにする備忘録。