【感想】世界一長い5分間
諸悪の根源とされる「魔王」を目の前にし、勇者・バックはこれまでの「思い出」を失くしてしまった。
ストーリーは上記公式のあらすじそのまま。これまでの冒険はおろか過去のこと(冒険に出てきた理由含めて)の記憶を喪失してしまって戦えなくなってしまった主人公が「思い出し」ながら、これまでの冒険を振り返るというストーリー。
ADVパート(現在)とRPGパート(冒険の思い出)を繰り返しながら忘れてしまったこれまでのことを「思い出し」ながら辿っていくというアイデア勝負の作品と思いました。初回インパクトもあるし。
日本一ソフトなのか?と悩みましたがセールになっていたので購入。
総評として「40点」くらいになってしまうのは色々”惜しい”ため。。
【!】感想には重大なネタバレも含むため未プレイ注意【!】
■ADVパート
絶賛「魔王と対峙中」の現在です。「あれ!?何も覚えてないぞこいつ誰だ!?※魔王です」という出オチ感は嫌いじゃない。最初からずーっとクライマックス。
こちらがあくまでメインかなと思うのは、当たり前ですがADVパートにてストーリーが進むため。またここでたま~に「選択肢」が出てくるのですが、選択肢がRPGパートに影響が出たりチャプターの表記が変わります。
チャプター選択で戻れるので選び直して会話を埋めるのも有りです。
ただ明らかにRPGパートで「空き」があり恐らくこの選択肢の影響で選ばれなかったのかとちょっと戻っても埋まらない場合があって何処まで戻れば良いか等がちょっとわからなかった。攻略サイトらしいサイトも見つからないので空欄のままにしてしまっている。
直前ではなく少し前の選択肢が影響している可能性はある…最初からやるとなると若干折れそうですが会話は「AUTO」で飛ばせるので何とかなると思いたい。
しょうもないんですが「そうだ思い出した!」のカットインや思い出した時の効果音等が既視感があるなと思ったんですがこれは…逆転裁……
■RPGパート
「思い出し」の過程は街やダンジョンを歩き回るよくあるRPGベースです。
ドット&RPG&勇者というとドラクエと言う人も多い気がするんですがドット感や彩度といい『RPGツクール』っぽいなと思いました。RPGツクール2000辺りの初期に入っていたRPGを思い出す。それはそれでいい感じと思う、全体的に懐古向けと思うので。こういうドット系でドラクエ系の懐古に振り切るには大体彩度や解像度が高すぎる気がしている。与太話。
『RPG』というからにはボスを含む戦闘もあるんですが「思い出す過程」という設定上LVや装備品等はその時点の「適正(強い)」になっています。
そしてプレイヤー側で買ったり入手した道具・装備は次の章では消えているので購入が無意味にはなっています。
あと既に所持した装備をダンジョンで拾ったりする(誰も要らない)のはちょっとよく解らなくて面白かった。持て余す装備品。
RPGのやり込みやLV上げに命を賭けるタイプにとってはほぼほぼ退屈かもと思うんですが、数時間ボタンを固定させておくようなLV上げが必須のゲームって正直面倒臭…なわたしみたいなタイプには助かる。RPGが苦手なひとにも親切かもしれない。
また主人公が「ノーエンカウント」というエンカウント無効にするという酷いチートスキル持ちなので移動については本当にストレスフリーです。
上記の通り「適正」……というかノーエンカウント連発して雑魚戦全部飛ばしてもボス戦で適当に戦っても負ける事はないくらい強いのでRPGは「オマケ」と思っておいた方が良さそうです。
このノーエンカウント、RPGパートで「持ち越し」が起こるみたいで前パートでダンジョン攻略後、次パートに移って少し歩いていると「効果が切れた!」とナレーションが発生してました。最初何かと思った。
■RPGパート(ダンジョンとやりこみ)
気になった点は、ダンジョン探索にありがちですが後半になるにつれ「ただ長いだけ」「階段が多いだけ」「同じ景色なので何処まで歩いたかわからない」となります。これはRPG自体の課題という感じはする。
正直飽きてましたがノーエンカウントのおかげで歩き切った気はします。ノーエンカウント必須。気付いてからは常に連発していました。長い~
やり込み要素もありトロフィー獲得は結構小まめに街の中の全員に話しかけ隅々まで走り回る必要があり、最近のゲームだとこの手のやり込みやよくある気もする。好きな人は好き、面倒な人は面倒な要素なのでクリアに必須ではないことだけが救い。
トロフィーについては大体は簡単(基本はお使いで話しかければ終わるし進行・特殊イベントのキャラクターの頭に【!】が付いているので解り易い)です。ADVパート中にチャプターを選べるので何らか取り逃したらちょっと面倒ですがやり直しは出来ます。
何箇所かシューティングやアクション等をやらされる上にクリア数値が高いとか難易度が高いとか見かけました。やり込み要素は基本スルーのわたしはスロットとゲームを1回ずつ試して「いつ終わるかわからない」を感じてやめてしまいました。お金を使い込んだ場合も次パートで復活すると思うけど。
これはうちのswitchとの相性が悪いせいと思うんですが(他のゲームだと起こらない)Aボタン・Bボタンがたまに暴走する。
最速で会話がすっ飛ばされてしまい、RPGパートだと「ログ」がないので今何の話した!?がちょっと発生していた。スーパー早口。
■キャラクターと世界観
主人公は武器と魔法を両方使える勇者の少年、勝気な武道家少女、お調子者男の魔法使い、心優しい回復役の少女と、バランス重視の主要メンバー。基本的にこのメンバーで旅をします。
RPGパートで言及していますがRPGパートごとに勝手に「適正レベル」になっているし全員が強すぎる豊富な魔法を持っています。どう無駄に動いても絶対負けないくらい強いです。
加えて旅の途中でストーリーに関わる『故郷の幼馴染たち』に出会います。時々「連れていって」、元の仲間の方が「残りたい」と言うので代わりに仲間になってくれます。この人たちも適正レベル以下略なので全然見劣りしません。
わたしがうっかり選択したせいで初期からいる仲間のひとりが「実は交代しており今この場にいなかった」となってしまったのは不覚にも笑ってしまった。なかったことになった…!?安易な選択で”消される”ってコト…!?
しかし世界の脅威であるモンスターと渡り合いその親玉である魔王を倒す程度の力が全員にある。辺鄙な村は勇者育成村なのかなと思うと先に潰そうとする世間の魔王たちは正しい気がする。そんなにコンスタントに育つならいずれ脅威になるよね。わたしもそうする。
キャラクターが全員よく喋りよく動き個性豊か、カットイン画像も可愛らしい絵柄。平成やPS辺りのファンタジーよろしく全員がやたら強くてポジティブなので好き嫌いはあると思いますが嫌味なキャラは居ないので懐かしくもとっつきやすいRPG感があります。
とはいえ個人的にはちょっと全員が喋り過ぎで会話が多い、ストーリー含めてスクエア辺りでありがち(ごめん)御涙頂戴ポジティブが強い、加えて唐突なラスボス&ヒロインの登場等なので思い入れしにくい要素が重なっているのは感じました。常に会話が多いので緊張感はなくうわあああ!と叫びピンチに陥るような描写も何度も起こるので盛り上がりが逆にない。
ストーリーもラストの土壇場で急にひっくり返してくるので意外性というより作者の最強のストーリー感が出てしまった気も。ありがちといえばありがちだけど特に王道でもないので評価が難しいところ。
名前といい世界観自体が和洋折衷なので気になるひとは気になるかも……西洋風の世界観に見えるけど和風も同時に存在し(和風の程度やマップ自体がドラクエっぽい街もあるんですが、あちらは世界観含めて理由があるので見た目を真似だけするとごちゃごちゃになってしまうのはたまに思う)
英語←→日本語に直して認識する台詞もあるので良くも悪くもごちゃまぜ。世界観に没頭する感じではないので有りかな……
リーゼントという名前だけどリーゼントじゃないんだよなあいつ…とずっと思っていた。何故リーゼントなんだろう。
一番残念と感じた点は、ラストまで全員が「最初から知り合い、仲良し」感がすごい。勇者=忘れているのと同じくらいプレイヤー=知らないし急に挟まれる思い出を語り盛り上がる様子には「仲良いんだね~」となる謎の疎外感。悪い意味で内輪感の強いゲームとは思ってしまった。
キャラクターの壮絶な過去とケツイと深い闇をストーリ―の大部分をかけて語られてもなあ~ではあるので難しいと思うんですけど。
そんな感じで総評「40点」。面白さとネックが常に同時に存在している感。
特に言及していなかった音楽ですが、耳に不快なこともなく悪くはないけど褒めるほど良い曲もなかったなという印象。ここも惜しい点。
丁寧に作っていると思いますしアイデアは面白かったんですが、キャラクターメインになってしまうのが国産の弱点なのか…
セールをやっている事もあり、気になったらやってみるのは有りかなと思います。