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【感想】InStarsAndTime

何度も繰り返す『国を救うために挑む最後の2日間』の話。

いわゆる「ループもの」で何度も何度も何十回も2日間を繰り返していく内にだいぶ強めのどんでん返しが来るストーリー。どんでん返しが正しい表現かはわからない。

switchで出たおかげで自分はプレイが出来たんだけど、いわゆる「実績」はsteam版の伝統なので実績を集めたい場合はsteam版が良いと思います。

「ループもの」「死にながら可能性の道を見つけ生存のグッドエンドを目指す」という要素で長年自分が思うような作品が無いなと思っていたため、自分が思う好きな形で出てきたゲームではないか!?とビビっときており存在は知っていたんですが、
どう考えても「死にながら」「可能性の道を見つけ」「生存のグッドエンドを目指す」ってキャラクターはもちろんプレイヤーのメンタルが折れるのは目に見えている。見えているので迷っていたけど自分の尻を叩く機会があったので始めたらすごい勢いでプレイしてしまった。

クリアタイムは72時間、75周目でした。
実際3.5日間程でクリアまで到達したのですが、1日20時間程やっていた事になる。 そんなわけあるか。  と言いたいけど寝食を忘れてプレイしたのは久しぶりでこの3日間をどう過ごしたか正直あまり記憶にない。


■ストーリー

冒頭の通り「何度も繰り返す『国を救うために挑む最後の2日間』の話」。
開始は決戦前日の昼間から。主人公・シフランが草地で昼寝から目を覚ますところからスタート。明日はいよいよ『王』の元へ乗り込むぞということでその前の日はおのおの好きなことをしています。
村の人と話すもよし、仲間たちと時間を過ごすもよし、時計台で集合をして楽しく一晩を明かしたらいよいよウツロイの館へ――

館の中はRPGダンジョン形式。階層は多くはなく、主人公はダッシュする(オプションやボタンで切り替え可能)ので移動自体はストレス低めかな?と思います。敵もシンボルエンカウントなので避けることは可能。いやこの要素については後々言及したい。

そして「『王』を倒して国を救ってハッピーエンド!」が困難を極めるために繰り返しとなるのですが……。


■システム

最初に言うと、全般としてバランスが非常に良いと思っています。
システム、シナリオ、スキル・能力、あらゆる面でバランスがいいなとずっと言っていたと思う。バランスブレイカーとなるのは唯一主人公くらい。
主人公の性能が壊れないと逆に辛くなるので崩す箇所としては適切と思う。

非常によく出来ている、表現や感情の動きが本当に上手い。
細やかに仕込まれたネタの多さ、触れば何かしら会話があり、動けば何かしら進展はある。進展がないことこそ「この動きは間違っている」という明らかなヒントでもあるので恐らくほとんどのゲームで行われるであろう「選択肢潰し」はこのゲームにおいては結構重要な気がします。

反面コンプリートに関する全般(つまり普通のRPGでも)における「全ての可能性を潰していく」、何度も同じ部分をなぞり辿り繰り返す作業感は凄まじいと思うので苦手な人は苦手、飽きる人は飽きると思います。

自分のようなLV上げをやるくらいならプレイを辞めるとかいう人間にとってLV上げなくてもズルっこ 知恵やアイテムで突破出来るならその方が気楽なため、そういう意味でこのゲームは「何とかなるゲーム」の分類と思う。
とはいえ『王』は純粋に強いので行動メーターを見計らってタイミング良くバフを掛けないと全滅する場合はあると思います。叩くだけで何とかなる相手ではないところがボスとして君臨しているのは感じる。
失敗してもやり直せばいいんですけどね!

大切なこととしては、主人公以外の仲間のLVは村=スタート時点に戻ったとき「LV45(初期値)」に戻ります。ループの途中に戻る場合は前回セーブをした到達時点で達成していたLVやクラフト(スキル)が反映されます。

昨今のゲームはLVをカンストし仲間を強化しスペシャルなスキルを完備し最強のメンバーでボスを倒す流れにあると思うのでリセット要素自体が嫌なひとはストレスになるとは思う。ただ主人公だけはLVは継続されるのでその内ひとりでガシガシ敵を潰せるようになります。ほぼ一撃ともなる。
この言葉を素直に実行してくれることを祈る。仮に何らか失敗してもループすればいいんですよ。

忘れないよう何処かに残しておきたくてプレイ実況をタイッツーで呟いていたんですが見返すとだいぶ酷い。主人公が一体何をしたんだとずっと泣いている…いや絶対お前が原因だろう(メタ)という気持ちを同時にも抱えていたんですが。その辺は詳しい自信がある。(メタとして)

「可能性の道を見つける」段階でだいぶ行き来をすることになるので人によって百回以上ループすると思います。75回はだいぶ軽症な方と思う、わからないけど。
館の中で「詰み」になる場合があり(1つしかないアイテムを間違えた場所に使ったときなど)その場合は画面右上にでっかい「×」が出てきます。こういう部分でも親切なゲームです。助かる。
この場合は飛び込みループ等して戻れば良いのですがこの「詰み」をしなければ真相が見えてこなかったり、取り忘れや情報確認のためにもう一度見に行った方が良かったりと「必要な無駄」という感じもあるので本当にウロウロする前提のゲームなんだなと思いました。


■世界観

注意点かもしれないのは、ジェンダー観や宗教観が「当たり前」にある多様性の世界観ゆえにその手に関する話題が普通に流れてきます。日本人はこの辺りセンシティブな話と扱いますし好き・苦手が出る人がいるんじゃないかとちょっと気になる部分でした。わたしは好きな要素なので問題なしです。

あと「ループ」=「死」を意味するので生死について軽い扱いをしていると思うひとはいると思います。ゲーム的には扱いは確かに軽いと思う、失敗したら飛び込んで自分が死んで戻ればいいんだもの。正直な話。

ただその「戻れるからいいよね」という感覚そのものが主人公の精神にダメージを与えているとは思うし、プレイヤーも辛くなる要素にはなっている、と思う。戻って無かったことにはなる、ただそれは「ループしていない人にとって」というだけ。主人公は全て経験して覚えているので。

かなり忘れっぽくて簡単な名称すら忘れてしまう主人公だけど、主人公の自分の身にとっては無かったことにはなっていない。全部知っているからこそ、何より仲間のことは大切に思っているからこそ簡単には出来なかったり或いは手放せないこともあるし、自分だけがループしているから自分が何とかしなきゃと背負うものも出てくる。見えない地面を歩いているようなこの辺りが気持ちが辛くなる要素だと思う、多分作品として扱いも難しいと思う。

自分だけが覚えていること、自分だけが忘れていること。
本質的には記憶の物語だと思いました。


■音楽

村で流れる牧歌的な曲、宿で過ごす穏やかな曲、楽しいおやつタイム、館の中の不吉な曲、ノリの良い通常戦闘、緊張するボス戦…、曲数自体はそこまで多くないと思うんですがどれも8bitを含むピコピコした音が入っていて懐かしい気もして心地良い、同じメロディーラインのアレンジ曲が多くて全体的に聴きやすい音楽だと思います。

感動的だったりライブ的に盛り上がるインパクトメインの曲もありますが、何度聞いても飽きが来ない曲って本当に難しいと思うって意味で村の曲は何十回何十時間聞いても好きだしすごいと思う。ずっとぼんやり草地で寝ていたくなるような曲です。穏やかな始まりにぴったりですね……顔を覆う。
MP3で売っているので気になる方はご購入可能!steamのゲームはサントラ販売もしている場合が多いのでとても嬉しい、ありがとう!

エピローグの曲は色々思い出してぐっときます。がんばれ…!!ってあんなにも強く思いながらコントローラーを握ったのは久しぶりでした、あの優しい曲の効果もあってのあの気持ちだったと思う。


■キャラクター

◆シフラン/ノンバイナリー
本作の主人公。ループの中心にいる。
尚ループしていることを「仲間」は知らない。
ギャグが好き、昼寝も好き、よく食べる。他人に深く関わろうとしない部分もありそうだが底に寂しさがあるから無口で優しいんだろうとも思う。
ノンバイナリーとあるけど自認として明確にしていないだけなのだろうか。製作側いわく全員LGBTだそうです。一人称は「僕」。
公式に「(なんとか生きているので心配しないでね)」とあるのはどう見てもフラグである。大丈夫って言うやつは一番大丈夫じゃないんですよ

◆ミラベル/女性
ウツロイの神から祝福を授かった侍祭様。ウツロイの館(本作ラスダン)からただ一人生き延び、救うために戻って来た。設定だけ見ると主人公だ。
実際スキル的にも彼女が居なければ全滅をしてしまう程の能力を持つ。主人公だ……。一人称は「私」。
思い込みが激しく「いい子」であろうとする面がかなり強いけど、いつも良くあろうと背伸びしたりリップの事を気にしたりという面を見るに可愛らしい普通の子だと思う。ちょっとアクは強いと思うけど。恋愛小説やホラー小説が好きらしい、イザボーとは恋愛(小説)の話で盛り上がる乙女仲間。

◆イザボー/男性
元防衛隊の戦士、ミラベルの救国の旅に着いてきた。戦士の割に粗野粗暴ではなく心穏やかで優しい性格。ロマンチックなことが好き。一番乙女チックだと思う、そういう意味では男臭さがない男性ではある。パーティー唯一の男性なのに。多分そういう意味でもバランスが良い。一人称は「俺」。
とても他人に気を遣っていてそして他人をよく見ていると思う。彼を見て居ると「他人は悪い面が目に付きやすいが良い面を探すと良い」という言葉を思い出す。生きてるだけで徳を積んでいそうな善人だよ。
何とは言わないがプレイヤーは初見の印象で彼と決めていた。

◆オディール/女性
カ・ビュー国出身の女性。何か研究をしているそうだが絶対に教えてくれない。冷静で皮肉屋と描写されるけど、嬉しいことがあった時に大声でハイタッチはしてくれないけど後ろでニッと笑みを向けてくれる。悪意のある意地悪はしないし周りの人間を「子供」として見守ってくれていると感じる。
大人の女性。「マダム」と呼ばれるので既婚者なのかと思ったけど違う?明記はされなかったと思う。しかしご婦人!も変だもんね。
パーティー随一の頭脳派で頭の回転が速い賢い人。この回転の速さが脅威となる場合かなり追い詰められる…そういうタイプの人。

◆ボニー/ノンバイナリー
ちびっこ。なんだ連れてきたんだ!!とはプレイヤーも思うけど故郷の村を出て来ざるを得ない理由で出てきてシフラン達と合流した少年。一人称は「オイラ」だし少年のようだけどこの子も「ノンバイナリー」。
料理が得意なおやつリーダー。いつも美味しいおやつを用意してくれる。
この手の騒がしい子供って立ち位置としてNPC故にストーリー進行の障害となる場合が多い気がしてるんですが(国産RPGにおいてそういうキャラが多いと思っている偏見)ボニーは騒ぐだけじゃなく、自分が出来ないことを悔やんで出来ることを率先してやろうとする良い子だと思う。思った。ストーリーを進めると好きになるタイプの子と思う。


システム面でも書きましたが、このゲームはとても繊細で、主人公たちの心理や行動、お互いの気持ちと吐露についてすごく丁寧に描かれていると思う。まさしくCOMIC的なイラストですが、このイラストが上手い。表情管理がしっかり出来ていると思うイラストなので笑っているけどそうじゃない、泣いていないけどそうじゃない、そんな表情の内側が表情と台詞から見えるので余計に辛いなと感じる部分ではありました。
あと個人的に感じたのは「…」に含まれる感情の多さが驚くほど多い。表情とかけ合わせれば、飽きれていたり考えている沈黙だったり、遺憾だったり諦めだったり失望だったりと「…」の情報量がとても多くて面白いなと思いました。

「このキャラはなんでこんなことしたんだこのやろう」って感じる部分は無かったと思う。疑問があっても恐らくプレイ進行の内に明かされるはず、皆理由があって、過去や思いがあって、だからそう動いている。

だからこそそう動いたり考えたことについて、何とかならなかったんだろうかと考えてしまう瞬間は多いんですが。特に主人公。シフラン――!作中何度キャラクター達と一緒にシフランの名前を呼んでいたことか。
ゲームをするときに特に主人公に対して「笑って欲しい」「幸せになって欲しい」がいつも根本にあるためプレイ中ずーっと呻いていた。呻いてました。ウグゥ… 
大抵の場合プレイヤーに出来ることといえばキャラクターを操作し動かす以外何も出来ることはない。プレイヤーは無力である。


■その他(ネタバレ含む)

他、プレイ中に気になった箇所など。

◆雑魚戦回避アイテムは中盤頃に手に入るのでそのタイミングから雑魚戦はしなくて済むようになる。と思うんですが、
敵の動きが不安定で逃げ惑う故に直角に曲がってきての激突事故が多い。
混乱し過ぎて逃げられていない!(敵が)か、かわいそう……笑。こちらから逃げようとして逆にぶつかってくる敵。そこまで怖がらせてしまったのか、動きが酷くて笑ってしまったけど おい!!!!となるプレイヤーは結構いそうですね。
「逃げる」は確定逃走が出来るので自分で逃げた方が早いのかなあ。

◆館の中の階層自体は少ないです。何度も回る事になるので覚えるとは思うんです、が、真っ黒で似たような景色も多いですし繰り返すことで却って1F・2F・3Fが混ざらないこともなく、敵の遭遇も極力避けたいし
手書きマップをこさえてプレイしていました。
方向音痴なわけじゃなくて(小声) こんなところでTRPGよろしくマッパーが必要になるとは。星の紋章を持つ敵の属性もメモしておくと楽でした。
方眼紙とは言わないですがメモ帳程度の館MAPは作っておいたら周回が楽になると思います。そこはゲームはケアしてくれない… 秘密部屋はともかく公開ルームは館の壁に貼ってあっても良さそうなんですけどね。

◆何の法則かわからないけどたまにジャックポット×2のクラフトの溜めがスルーされてしまう気がします。他のひとは通常攻撃でもちゃんと溜まるので何かの内部処理のせいかもしれない。ラスボス戦は長引くからか何度もクラフトを使うため起こり易い気がします。多分。

◆3階フロアボスで攻撃対象を選択する際に画面全体にノイズが入るのが仕様なのかバグなのか……ホラー演出のようで普通に怖い。このノイズが出てくるのはこのボスだけ。

突然のホラー演出(多分画面バグ)

一度ゲームを落として再起動してみたが直らず、2~3度程ゲームをオフにして本体の電源も切ってから再開したら消えた気がする。多分。
switchをスリープだけさせて再開させることも多いため稼働時間が長いから発生しているのだろうか。

◆王との会話で右端が切れる台詞があるけどこれはわざとかな……会話的に「帰るところがない」とかそういう台詞な気がするので。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

クリア後とSTART AGAINを含むネタバレ満載の感想です。

ところで「まだ大団円見とらんじゃろ?」って天から声が降ってきたのですが皆悩んでいるようで「In Stars and Time 大団円」と予測変換が出てきて笑ってしまった。皆探してるんだね、真の大団円を!

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