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不動産をロンダリングすると告知事項が消える!?
漫画『正直不動産』は不動産屋の裏側を描く。
不動産取引のからくりや不動産業界の悪習を知ることができる。
今回のテーマは『告知義務』。
永瀬が担当する物件の借主を新任の藤原課長が見つけてくる。
その契約の場に永瀬も同席する。
嘘をつけない永瀬は...
この物件、以前、人が死んでいます。
売主(貸主)は買主(借主)に物件の瑕疵について告知する義務がある。
その不動産取引を仲介する不動産屋も告知する義務を負う。
告知しなければいけない瑕疵は4種類。
心理的瑕疵 前の住人が自殺したなど。
物理的瑕疵 雨漏りがあるなど。
環境的瑕疵 近隣にごみ処理場があるなど。
法的瑕疵 再建築不可の土地など。
心理的瑕疵以外の瑕疵は解消されれば告知する必要はない。
心理的瑕疵については、賃貸の場合、3年間は告知する必要がある。
一方、売買の場合、告知義務に時効はない。
ところで、以前こんなことがあった。
不動産情報サイトで安くて築浅の中古物件を見つけた。
不動産屋に電話をしようかと思ったが…
物件情報の最後に『告知事項あり』の記載がある。
通常、心理的瑕疵以外の瑕疵は具体的に記載されていることが多い。
つまり、これは心理的瑕疵なのだろう。
数か月後、この物件は売れ残っていた。
閲覧数は多いのだが誰も手を付けない。
さらに数か月後、この物件はまだ売れ残っていた。
しかし、よく見ると『告知事項あり』の記載がない。
仲介業者も地場の不動産屋から遠方の不動産屋に変わったようだ。
しばらくして不動産情報サイトでこの物件を見かけなくなった。
とうとう売れたのかもしれない。
マネーロンダリングという言葉を聞いたことがあるだろう。
不動産にもロンダリングなるものがあるらしい。
問題のある物件の転売を繰り返し、「重要事項説明書を薄くしていく」という方法は、不動産販売のテクニックの一環でもあるという。
「資料を見れば一目瞭然ですよ。関連会社内で1カ月単位の転売を繰り返したりとか。そもそも知らないことはいわなくていいわけですから、間に挟まった業者が〈知らなかった〉といえば情報は消えます」
転売を繰り返すたびに情報が消える状態を意図的に作り出す。
大事件でもない限り掘り起こされることはない。
先の物件がロンダリングされたかなんて知らない。
しかし、『告知事項あり』だったのは事実。
『告知事項あり』の記載がなくなっても訳あり物件だ。
地場の不動産屋から遠方の不動産屋に変わったことも気になる。
転売を繰り返し末端の不動産屋に行き着いたのかもしれない。
そもそも不動産情報サイトに掘り出し物なんてない。
相場より安い物件を見つけたら訳ありを疑うべきだ。