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読書弱者の日々是見えへん⑤ホックニー

デイヴィッド・ホックニーのことは、20世紀に現れた天才の一人と思っています。「天才」を感じるアーティストは他に、エゴン・シーレ、パウル・クレー、ダリ、フランシス・ベーコン&フレディ・マーキュリー(19世紀だったらオディロン・ルドンと(エッチングのほうで)ホイッスラー)。

また、たまたま彼の著書『秘密の知識』The Secret Knowledge*を読了したところで、その眼力には唸るばかりでした。すべてを理解できたとは言いませんが――絵を描いたことがないので。
この著書をかいつまんでいえば、例えばフェルメールの画風についてはカメラ・オブスキュラという光学機械を利用したらしいことがよくいわれていますが、ホックニーは、いやいや、絵描きはもっと前から光学機械(カメラ・ルシーダ等)を使っていたように見えるよ、ということをときに自ら光学機械を用いて作画して論証を積み上げていったものです。遅くてもヤン・ファン・エイクからこっちはそうであろうことを、消失点に向かう直線のちょっとしたズレなんかから見抜いたわけです。あっぱれでございます。年代順に代表的な作品を壁に貼っていって、この辺りから違う、というのが現れてくるのが圧巻です。

ウルトラの猛暑だったのでなかなか行かれず、やっとこさ10月中旬の平日に行きました。SNS等から大混雑しているのは承知の上でしたが、12時半ぐらいかな、ムチャ混みというよりは「程よい大盛況」という感じで、楽しめました(割と展覧会運がいいほうです)。

今回の展覧会は、彼の画業のマイルストーンを示しつつ、上記著書の流れでもある「複数の視点」期を集大成したものといえるでしょう。動画もあって、西洋絵画をはみ出す活動ですね。個人的には、ゲイであることを示唆した時代とカリフォルニア時代の作品がスキかな。

それと、「ボテロ展」のときも思いましたが、細部の質感(マティエール)にこだわらず全体として見ればいい大きな絵って、ええわぁ。普通の寄って・離れて見るタイプだと私の眼ではあとで負担になることが多いし、タイトルや支持体などが記載されている作品脇のプレートを読むには眼鏡を外さなきゃならないので、なんだか忙しいんですわ。

ただし、
1,Web上にも出品リストを公開していないのはどうよ?
2,金/土は20時ぐらいまで開けてほしい
3,日時指定ならぬ日付指定でしたが、それだったら入館日問わずの「当日券」でよかったのでは?(一度予約するとキャンセルは当日の9時までだったので、体調その他を慎重に考えると予約行為に二の足を踏んだときも/当日券売り場の混雑はそのせいもあったのでは)

収蔵品展の「横尾忠則 水のように」も彼の画業がわかりやすくまとめられて、ああこういう作風のときもあったと思い出し―Y字路シリーズに惹かれます。サム・フランシスの大きな絵を展示するまでのプロセス(手順の多さに驚き)を動画にしたものも必見、期間限定でネットでも見られます。

*安くはない書籍なので、最寄りの図書館にあればラッキー(それは私)、ぜひご覧あれ。美術観が変わります。しかも邦訳は原書よりも一回り大きいので(会場で発見)、よりわかりやすいのでは。

#読書弱者


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