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鼓動の遺言

連載最終回に投げ銭形式の #小説 です。
発表の場を探して、悩んで、一時は応募も考えたお話ですが…久しぶりの独学長編小説なので語彙も少なく未熟な文章だと断念。でも書きたい、遺したいので、noteにて可能性を実験します。
とんでもなく長い話で、推敲無しの時間の余裕があれば投下・キャラがどう動くか私にもわからない超長期実験ですのでご覚悟を!…途中で挫けて最後まで書けなかったらごめんなさい。
さて角川さん、拾ってくれるかな??


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10月25日

言われるまでもなく、写真とデータを見れば解る。
腹部のあちこちに黒い影。
かつての教え子、そして後輩に気を遣わせるのは私は好まない。
「末期に近い癌。転移していて余命半年と私は見た。患者として要望を出す。私は自然に任せたい。治療も入院もホスピスも検体も延命も望まない。痛み止めのモルヒネだけを希望する」
無言で唇を噛む後輩に悔しさが見れる。
その顔はもうかつての教え子の風貌ではない、立派な医師の顔だ。
今日の悔しさを、どうか忘れないでほしい。

ーー自宅での死を決意した以上、発見された時に余計な混乱を招かぬ様ここに日記を記す。

私は岡崎茂。本人である。
昭和63年、本日の時点で71歳。
明日辞表を出すが、鹿児島県立大学病院精神科部総括・精神科医。医師・博士号番号は探すのが面倒なので割愛する。

上記に書いた通り、私は間も無く病死するだろう。一人暮らし・血縁者無しの身の上故、発見された場合周囲に迷惑がなるべくかからぬ様にはしてみるが、致し方ない場合は各自関係者殿には容赦願いたい。

10月26日

辞表が受理される。次の総括は決まっていた。彼ならば大丈夫であろう。
それより驚く事に私の受け持ちの患者の引き継ぎも後輩達が既に分担していた。
いくら関係者が患者になったとはいえ、この情報漏洩は由々しき問題だ。
例え誰が患者であろうとも、だ。
置土産に医師の特秘義務化への改善要望及び徹底義務化要望書を提出してきた。
先生らしいと泣かれて困る。

夜、極少量の下血を認める。

10月27日

医局に置いて来た私物は全て処分希望と電話。
せめて送別会でも、との話を聞くが泣かれるのは昨日で充分であり、独立や異動と異なりそれは私の生前葬になる。
君達の区切りの儀に私は付き合いたくないのだ。

個の別れと言うのは区切りがそれなりに必要であり、故に儀をして自身を落ち着かせる。
君達も精神科の医師であれば、その意味は理解出来るであろうし、また、その儀が出来ずに苦しむ貴重な実習として受け止め、外来する患者の心理を解くヒントにしてくれたまえ。

私からの最期の宿題でもある。
心してかかる様に。
レポートが読めないのが残念だ。

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