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国立国会図書館デジタルコレクションで読める怪奇幻想文学(2023年9月時点)

国立国会図書館デジタルコレクション(以下、「デジコレ」)は、国立国会図書館がデジタル化した所蔵資料や収集・保存した電子書籍・電子雑誌等を検索・閲覧できるサービスのことです。その歴史は2000年提供開始の「貴重書画像データベース」まで遡り、以降リニューアルを経ながら現在までサービスの提供が続いています。特に、2022年12月21日に行われたリニューアルでは、全文検索可能なデジタル化資料が約5万点から約247万点へ大幅に拡充、閲覧画面の改修、画像検索機能の追加など大規模な改善が行われました。この後も2023年2月から5月にかけて図書等約30万点を追加公開したほか、 2月には図書や雑誌など約30万点が図書館向け・個人向け送信対象資料に加わるなど、デジコレの進化は続いています。
(↓参考記事)

この記事ではそんなデジコレのうち、個人でも閲覧可能な小説、とりわけ私が愛するところの怪奇幻想文学を紹介していきます。
入念に探索できていませんが、何か見つけ次第更新していく予定です。

デジコレの閲覧サービスは大きく分けて「ログインなしで閲覧可能」、「送信サービスで閲覧可能」の2種類があります。(正確にはもう一つ「国立国会図書館内限定」というのもありますが、一旦無視します。)ここで紹介する資料には、どちらに属するのかを記載しておきます。
「ログインなしで閲覧可能」は誰でも閲覧可能で、全文をPDFでダウンロードできるのが特長です。
「送信サービスで閲覧可能」は、個人IDを発行することで利用可能になるサービスです。手続きは少々面倒ですが、まずはこのIDを取らないことには始まりません。「ログインなしで閲覧可能」とは比較にならないほどの資料に接することができます。機能はやや制限されており、一度の作業で最大50コマまでしかPDFをダウンロードできません。ダウンロードに至る手順も一手間で、「印刷」ボタンを押す→「すべてのコマ」or「範囲を指定」(最初からであれば「1-49」と入力)を押下→「印刷用ファイルを開く」というステップが必要です。また、不正利用防止のため個人IDと個人名の「透かし」が下部に大きく表示されます。

前置きが長くなりました。早速紹介します。

個人編訳のアンソロジーと海外文学全集、叢書

岡本綺堂


『世界怪談名作集』
(ログインなしで閲覧可能)
(『世界大衆文学全集 第35巻』info:ndljp/pid/1180958)
岡本綺堂編訳の怪奇幻想文学アンソロジー。河出文庫で新装版を購入できますし、青空文庫やKindleでも無料で読むことができますが、旧字旧仮名で読むのもまた味わい深いものです。

岡本綺堂の近影はこの本に載ってたんですね
ブルワー・リットン「貸家」の口絵

堀口大学


『詩人のなぷきん : 仏蘭西短篇集』(堀口大学編訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1233608)
フランス文学者堀口大学編訳のアンソロジーです。幻想と銘打ってはいませんが、アポリネールの「オノレ・シュブラックの消滅」やアンリ・ド・レニエ、マルセル・シュオッブなど幻想文学好きには馴染み深い作家を集めています。1992年のちくま文庫が一番新しい版ですが、現在絶版です。

『毛虫の舞踏会』(堀口大学編訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1136723)
堀口大学編訳の第二アンソロジー。シュペルヴィエルなど、幻想文学やその境界の作品を収めています。1979年の講談社版が最後?いずれも絶版。

森鴎外


『諸国物語』(森鴎外編訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1874967)
森鴎外による翻訳アンソロジーです。英米独仏露の作品が読めます。幻想文学としての興味では、ドイツ文学からエーヴェルス、シュトローブル、シュニッツラーなど。エドガー・アラン・ポーの作品もあります。岡本綺堂もそうですが、何カ国もの翻訳を手掛ける当時の文人は、辞書も参考書も十分に整備されていないなかでどうやって勉強していたのだろうと思います。岩波書店の鴎外選集やちくま文庫から上下巻で出ていますが、絶版。

海外文学全集


『世界短篇傑作全集』(河出書房、全6巻)
(送信サービスで閲覧可能)
第1巻(info:ndljp/pid/1230660)
全6巻を全て無料で読めます。第2巻のフランス文学編がおすすめです。

『世界短篇文学全集』(集英社、全17巻)
(送信サービスで閲覧可能)
第1巻(info:ndljp/pid/1336561)

全17巻全部読めます。この全集でもおすすめなのがフランス文学を扱った巻で、第6巻「フランス文学19世紀」にはゴーティエ「死霊の恋」やシュオッブ「黄金仮面の王」のほか、メリメ「シャルル十一世の幻想」、リラダン「断頭台の秘密」など、半分近くは幻想文学を扱っています。

『明治・大正・昭和翻訳文学目録』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1345281)

海外文学の作家、作品を網羅したリストです。この一冊でデジコレの渉猟がさらに捗りそうですね。

テオフィル・ゴーティエの項。こんな感じで作品ごとに収録元を探すことができます。

別冊幻想文学


『別冊幻想文学【全号まとめ】』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/4438924)

なんと『別冊幻想文学』が全号読めます。本誌の方は残念ながら対象外ですが、これだけでもかなり嬉しい発見でした。

世界大ロマン全集(怪奇小説傑作集Ⅰ・Ⅱ)

1957年の『世界大ロマン全集(怪奇小説傑作集Ⅰ・Ⅱ)』、1958~1959年の『世界恐怖小説全集(全12巻)』、そして創元推理文庫の『怪奇小説傑作集』それぞれの異同については藤原編集室のこちらの記事がもっとも参考になります。

評論家、翻訳家の小田光雄氏によるこちらのコラムも必見。

世界恐怖小説全集


『世界恐怖小説全集』(全12巻のうち、84巻分が閲覧可能)
※2023年9月時点では8巻分が閲覧可能だったが、2024年9月時点では4巻、6巻、7巻、10巻が閲覧可能。
(送信サービスで閲覧可能)


04 『消えた心臓』 M・R・ジェイムズ(M. R. James)/他

06 『黒魔団』 Devil Rides Out デニス・ホイートリ(Dennis Wheatley)

07 『こびとの呪』 エドワード・L・ホワイト(Edward Lucas White)/他

10 『呪いの家』 ベズィメーノフ/他

幻想と怪奇 : 英米怪談集①②(世界探偵小説全集)

『世界怪談叢書 第2 怪談 英米篇』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1216460)
全3巻のうち第2巻のみ閲覧可能となっています。半分以上はビアースの短篇ですが、どうもその他は珍しい作家を収録しているようです。第1巻のドイツ編、第3巻のフランス文学編もぜひ追加してほしいところです。

味わい深いイラストですね

岩波文庫


『かくれんぼ・白い母 : 他二篇 (岩波文庫 ; 1519)』(ソログープ)
(ログインなしで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1181619)
岩波文庫では長く絶版でしたが、2013年に『かくれんぼ・毒の園』として改題増補版が出ました。2016年には盛林堂ミステリアス文庫から『いいかおりのする名前』が、2021年には白水uブックスから『小悪魔』が出版されています。

文庫クセジュ(白水社)

「文庫クセジュ」でタイトル検索すると602件ヒットしますが、このうち幻想文学や民俗、書誌に関わるものを厳選しました。

『幻想の美学』(ルイ・ヴァックス著、窪田般弥訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2495050)

『妖術』(ジャン・パルー著、久野昭訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2983679)

『仮面の民俗学』(ジャンールイ・ベドゥアン著、斎藤正二訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/9544351)

『愛書趣味』(ミシェル・ヴォケール著、大高順雄訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12234740)

『白水社50年のあゆみ』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2932096)
白水社の出版物を1916年から1966年までの刊行年ごとに追うことができます。


怪奇幻想文学の編訳者

澁澤龍彦

『共同墓地 : ふらんす怪談』(アンリ・トロワイヤ著 澁澤龍彦訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1695082)
河出文庫からも『ふらんす怪談』のタイトルで出ていますが、絶版。

『夢の宇宙誌 : コスモグラフィア ファンタスティカ (美術選書)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1672053)

『マルキ・ド・サド選集』
(送信サービスで閲覧可能)
全3巻の河出書房版、全6巻の桃源社版がどちらも閲覧可能です。

種村季弘

『十三の無気味な物語 (新しい世界の短編)』(ハンス・ヘニー・ヤーン著、種村季弘訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1698673)

『小遊星物語 (世界異端の文学 ; 2)』(シェーアバルト著、種村季弘訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1698271)

『迷宮としての世界 : マニエリスム美術』(グスタフ・ルネ・ホッケ 著,、種村季弘, 矢川澄子訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2508848)

『迷宮と神話』(グスタフ・ルネ・ホッケ 著,、カール・ケレーニイ 著,、種村季弘、藤川芳朗訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12265900)

『悪魔礼拝』(種村季弘著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12218256)

『迷信博覧会』(種村季弘著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12183871)

『ぺてん師列伝 : あるいは制服の研究』(種村季弘著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12258637)

『パラケルススの世界』(種村季弘著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12291481)

『謎のカスパール・ハウザー』(種村季弘著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12284827)

荒俣宏

『世界神秘学事典』(荒俣宏編)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12224990)

『神秘学カタログ』(荒俣宏、鎌田東二編)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12224773)

『神秘学オデッセイ : 精神史の解読』(高橋巌、荒俣宏著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12285353)

前川道介

『ドイツ怪奇文学入門』(前川道介著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1698229)

矢野浩三郎

『ドラキュラ伝説 : 吸血鬼のふるさとをたずねて (角川選書 ; 26)』(レイモンド・T.マクナリー、ラドゥ・フロレスク共著、矢野浩三郎訳)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12224149)


悪魔学

『悪魔学入門』J.チャールズ・ウォール著 松本晴子訳
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12291469)


吉田八岑

『西洋暗黒史外伝』(吉田八岑著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12184047)

『悪魔考 : 神に叛かれた者たち』(吉田八岑著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12215262)

『悪魔の画廊』(吉田八岑著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/12215223)

アンソロジー

『第四次元の小説 』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1669506)
(出版社内容紹介より)

地震を機に四次元空間にスリップした家をめぐる『歪んだ家』、メビウスの輪となった地下鉄網、クラインの壷の中に姿を消す魔術師の悲劇など、数学をモチーフとして読者を奇妙な空間の世界へ誘うSF傑作集。
 数学のできない学生が数学教授の娘に恋をした。結婚が許されるための条件は、無限の速度を手に入れる方法を考えること。そこで彼のためを思う友人が考え出した妙案とは…。恋の成就のために究極のマシンの開発を目指す『タキポンプ』。「一部屋分の敷地に八部屋分の広さがある。たったいま、ぼくはその家に関する革命的なアイディアを思いついた」?ありきたりな家の設計にあきあきした一人の建築家が、友人をそそのかして、四次元から着想を得た斬新な家を建てさせた。ところが、できあがったはずの家は建築家の予想とは似ても似つかぬものだった…。四次元空間にスリップした家をめぐる悲喜劇を描く『歪んだ家』。そのほかメビウスの輪と化した地下鉄網から突如電車が乗客ごと消失する『メビウスという名の地下鉄』、世紀の難問「フェルマーの定理」にいどむ羽目になった悪魔の哀れな苦闘を描く『悪魔とサイモン・フラッグ』など、数学をモチーフとした短編七編をおさめ、あなたを奇妙な空想の世界にいざなう、ちょっと変わった小説集。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784092510067

『宇宙の妖怪たち (ハヤカワ・ファンタジイ)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1696206)

『宇宙恐怖物語 (ハヤカワ・SF・シリーズ)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1671311)


個人作家

香山滋

『異彩の作家香山滋 : 古代・浪漫・奇譚 』
(中野区立中央図書館企画中野区ゆかりの著作者紹介展示)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/11515680)

モーパッサン

『モーパッサン傑作短篇集 (第3巻)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1181622)
モーパッサンの短編小説のうち、怪奇小説を集めた巻です。

テネシー・ウィリアムズ

『呪い 新しい世界の文学 58』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1349599)

ナボコフ

『四重奏・目 (新しい世界の短編)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1698770)

マンディアルグ

『黒い美術館 (新しい世界の短編)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1698721)


雑誌特集

『新評 臨時増刊 妖怪の本』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1808003)

『新評 臨時増刊 泥棒の本』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1807999)

『新日本文学 46(7)(517)』(特集もう一つの幻想文学)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/6079336)

怪奇映画

『妖怪の世界 : 怪奇映画への招待』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2517591)

『映画評論 23(10)』(特集Ⅱ怪奇と幻想映画展)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2255941)


『映画評論 25(8)』(特集 続怪奇と幻想映画展)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2255963)


『映画評論 31(10)』(特集 怪奇映画の早すぎた埋葬)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2255902)


幻想芸術

『幻想芸術』マルセル・ブリヨン著 坂崎乙郎訳
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2517428)


研究論文

『フランス幻想文学研究史概説』(田中義広著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/4420135)
マルセル・ベアリュや神秘学、心霊学関連書籍の翻訳を手掛けたフランス文学者による幻想文学研究のリスト。

『フランス世紀末文学における「驚異」』(中島廣子著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/3137889)
フランス世紀末文学の系譜を読み解く研究書『「驚異」の楽園 フランス世紀末文学の一断面』(国書刊行会)の元となった博士論文。

『ディーノ・ブッツァーティの作品における<幻想>の主題と構造』(長野徹著)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/3127140)

『幻想文学序論』(森本平著)(国学院大学大学院紀要.)
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/4422023)
国立国会図書館デジタルコレクションでキーワード検索しているとよくヒットする。読むとすぐに気づくが、既存の文献からの引き写しに過ぎず、参考となる記載が何もない期待外れなレポート。

研究社新訳註叢書

このシリーズでは海外文芸を対訳と語釈、注釈入りで読むことができます。古書に書き込みをするのは躊躇しますが、デジコレなら印刷して勉強に活用することも可能ですね。同叢書名でキーワード検索すると160件ほどヒットしますが、その中から怪奇幻想文学に関わりの本をピックアップしています。


『黒猫 : 他三篇 (研究社新訳註叢書 ; 第13)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2437411)

『マークハイム : 他二編 (研究社新訳註叢書 ; 第27)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/1374042)

『ビアス短篇集』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2436845)

『怪談 (研究社新英文訳註叢書 ; 第11)』
(送信サービスで閲覧可能)
(info:ndljp/pid/2437334)


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