残業時間
今月、私の残業時間が伸びてきている。最長記録を更新する勢いだ。
最長と言っても社会人8ヶ月目での話なので、先輩や先輩の先輩方と比べればそんなにはないかもしれない。
しかしながら今月だけで見てしまうと、所属グループでは1位を争うレベル。経費削減と言われている経営戦略に、逆行しているのは間違いない。また残業時間が長い若手は、仕事が出来ないと思われるという噂も、どこかしらで聞いたような気がする。
仕事にあっぷあっぷ溺れながら、今日は上司との面談の日。
お昼ご飯は10分ですませ、面談の前に優先順位の高いメールをまとめて返信し、バタバタと会議室へ向かったので、心持ちは当然できていないし、怒られるのだろうなという優越感が席に着くや否や襲ってくる。
「最近は残業伸びてきてるね」
上司が一言目から痛いところを突いてくる。
そうなんですよね、短くしなきゃとは分かってるんですけど、なかなか上手くいかなくて〜と愛想笑いをしてみる。
「頑張ってるもんね、上の人から違う意見言われて右往左往もしちゃうしね新人の頃は」
あれ、怒らないのかと不思議に思った。そして上司が言う「残業時間が伸びている」は事実を述べただけで、良い意味で 労働時間という尺度で自分が見られていないのだと知った。
今日の業務も終盤になり、チューターは私よりも早くご帰宅された。私は重要書類の確認と、検証結果の報告書作成と、取引先への書類の修正依頼と……まだまだ終わりそうにない。
パソコンをカタカタ言わせていると、仲のいい先輩たちが声をかけてくれる。
「今日も遅いね、早く帰りな〜」
あんまり仕事が進まなくて〜上手く出来ないんですよHAHAHAと笑ってみせる。残業はやはり良くないよなと、チクッと胸が痛む。
「お前がやってる仕事、1年目で出来るもんじゃないからな。よくやってるよな、俺が1年目の時は無理だったよ絶対。」
急に褒められて、キョトンとしてしまった。
ああ、そうなのか、私は頑張っているし進んでいるのか。周りよりも優れていると自惚れはしないが、1年目の力量よりは大きい何かを動かしているのか。
やはり彼らが言う残業が長いは事実であり、私への評価とは離れたものだった。
つまりは何が言いたいのか。
仕事において事実である「本質」を見抜けるか否か、それで大きく仕事のモチベーションが変わることを体感したということが言いたい。
彼らが「残業」という言葉で表現してくれた本質は、「力量より大きな仕事をやってのけている」という評価なのだ。
そのことに残業を指摘されて数ヶ月目でやっと気づくとは、私はまだまだひよっこなのだなと温かく反省した。