新型コロナ治療の有望薬「シクレソニド(オルベスコ)」とは
神奈川県立足柄上病院は3月2日に,吸入ステロイドの「シクレソニド」を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に投与したところ,症状の改善が見られたとして,3例の症例報告を行いました。
今回はCOVID-19の治療薬として注目を集めるシクレソニド(商品名:オルベスコ)について見ていきたいと思います。
なお,症状が改善した3例に関する症例報告については,日本感染症学会のHPに詳細が公開されています。
シクレソニドとは
シクレソニドとは元々,喘息の治療薬として使われていたものです。トップ画像を錠剤にしているので紛らわしいかもしれませんが,錠剤ではなく吸入薬です。主成分はステロイドの一種で,強い抗炎症作用があります。喘息においては,気道の炎症をしずめることが発作の予防という意味で非常に重要です。
発疹・不快感・嗄声などの副作用もあるようですが,それほど危険性は高くない上に,現在使われている薬よりも副作用が少ないため,投与に踏み切ったのかもしれません。
改善例3例
ここからは症例報告を元に,3例をそれぞれ簡単に見ていきたいと思います。いずれもダイヤモンドプリンセス号の乗客であり,67~78歳と比較的ご高齢の方であることに注目しておく必要があるでしょう。
症例1
症例1として紹介されているのは,73歳の女性です。2月10日にPCR検査で陽性が確認され,病院に搬送されました。当初は別の薬を投与していましたが,症状の改善が見られなかったため,2月20日からシクレソニド吸入(200µg,1 日2回)を開始したそうです。開始後,2日程度で症状は改善し,2月25日・26日にPCR検査で陰性を確認,2月28日に退院とのことでした。
症例2
症例2として紹介されているのは,78歳の男性です。2月16日にPCR検査で陽性が確認され,同日夜に病院に搬送されました。2月19日に情報を得た結果,2月20日から症例1の女性同様,シクレソニド吸入(200µg,1 日2回)を開始,翌日から症状が改善,22日にはスクワットができるまでに回復したそうです。PCR検査を25日・27日に実施したところ,結果が陽性であったため,現在シクレソニドの投与量を増やし,治療を継続中とのことでした。
症例3
症例3として紹介されているのは,67歳の女性です。2月16日にPCR検査で陽性が確認され,同日病院に搬送されました。そこまで症状は重くなかったようですが,症状悪化防止のため2月20日よりシクレソニド吸入を開始した結果,食欲や倦怠感は急速に改善したそうです。症例2の男性同様,PCR検査を25日・27日に実施したところ,結果が陽性であったため,現在シクレソニドの投与量を増やし,治療を継続中とのことでした。
まとめ
症例報告ではまとめとして,「この3例のみで効果を論ずることはできない」としながらも以下のように書かれています。
安全性が確立されており簡便かつ安価(2,169 円/キット。LPV/r 1,289.6 円/日)なシクレソニドの早期投与は、効果が確立されるならば大きなメリットがあるものと考えられる。今後の使用症例の蓄積と検討が望まれる。
これが治療薬としてどれほど有効なのかは現段階ではまだわかりませんが,こうした多くの研究が行われていることは,感染拡大が続く中で,人々にとって1つの安心材料になることは間違いありません。
関連記事
中国政府が公式発表した感染経路,「エアロゾル感染(エーロゾル感染)とは何か」についてはこちらの記事をご覧ください。
「エアロゾル感染(エーロゾル感染)と飛沫感染・空気感染との違い」についてはこちらの記事をご覧ください。
感染患者への投与が開始された抗インフルエンザウイルス薬「アビガン(ファビピラビル)」についてはこちらの記事をご覧ください。
新型コロナ治療の有望薬「レムデシビル」についてはこちらの記事をご覧ください。