ファンタジイ・オブ・ザ・デッド
ミリーは泣きながらゾンビの目をやじりで貫いた。元妹は動かなくなり、ミリーは遺体を里の処理所に運んだ。処理所を出るとノーム――ギドと目が合った。山から逃げてきた彼は酒瓶を抱えていた。
「なあ、一杯やらないか」
「やらない。あたしは旅立つ」ミリーはハンカチで顔を拭った。涙が止まらない。
「どうして」
「奴らを滅ぼす。そのためには禁術魔書が必要。王都に行く」
「正気か? 大陸ごと沈めるのか。ここも消えるぞ」
「あたしには父も母もいない。妹も、死んだ。もう全て消えた。だから関係ない」口にするとまた涙が溢れてきて、ミリーはやじりで頬に傷をつけた。自分へのけじめだ。涙は止まった。
ギドは立ち止まった。ミリーは歩き続ける。立てこもった森の中もゾンビで溢れていて、毎日エルフたちに死者が出る。木々が腐っていく。時間がない。
ギドが追いつく。酒瓶を置いた。
「俺も行く。ここじゃジリ貧だ。山までなら案内できる」
【続く】
いいなと思ったら応援しよう!
頂いたサポートは本の購入・取材・他記事サポートに使用します。