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オープンソースをさらに使いやすく。多文化が育むデザイン UI/UXデザイナーNova | Eukarya観察日記

オープンソースをさらに使いやすく。多文化が育むデザイン


次世代データベースの研究開発を行うスタートアップ『Eukarya』の連続インタビューシリーズ。2本目では、創業メンバーの一人であるCTOの井上洋希さんに同社のプロダクトである『APLLO』と『Re:Earth』の特色のほか、同社の組織文化についても語ってもらいました。

3本目となる本稿では、Eukaryaが提供するオープンソースのWebGISプラットフォーム『Re:Earth』を、ユーザーにとってより使いやすい形で提供するために日々奮闘されている、デザインチームのNovaさんにお話を聞きました。

中国出身であるNovaさんが同社で働き始めた経緯や、デザイナーとしての役割や業務。使いやすいサービスを提供することについて、デザインチームや職場の雰囲気など、さまざまなことを語ってもらいました。

正直に言えば、応募当時はEukaryaの業務内容はあまりよく知りませんでした。(笑)

——本日はよろしくお願いします。

初めてのインタビューなのでちょっと緊張していますが、よろしくお願いします。

——Eukaryaでの勤務年数、また入社された経緯を教えてください。

Eukaryaでは2年ほど働いています。一年目は中国から仕事をしていましたが、昨年の夏に日本に引っ越してきました。Eukarya入社前も、中国の中小企業でデザイナーとして働いていたのですが、日本で働きたいと思い、日本企業のデザイナーポジションを探していたという経緯です。

個人的には、どちらかというと中小企業で働くのが好きで。大企業での仕事はストレスが多いイメージで、自分のパーソナリティにも合わないかなと。このため、私と同じ年代の若手が牽引するスタートアップであるEukaryaに魅力を感じ、応募しました。

ただ正直に言えば、応募当時はEukaryaの業務内容はあまりよく知りませんでした。(笑)

——日本語がお上手ですが、前々から日本で働こうと思っていたのですか?

中学生の頃から日本の漫画やアニメが好きで、それらを楽しむ中で、自然と日本語を学んできました。最初に好きになった日本のアニメは『聖闘士星矢』で、最近は『ダンジョン飯』にはまっています。聖闘士星矢は、海外でもとても人気です。

日本の音楽も好きで、特にアニメの主題歌を作っているミュージシャンやバンドの曲が好きですね。例えば『Sound Horizon』の曲がお気に入りです。アニメ『進撃の巨人』の主題歌がとてもヒットしたので、『Sound Horizon』の別名義である『Linked Horizon』の方が、みなさんには馴染みがあるかもしれませんね。

そういったこともあって、だいぶ前から日本で働きたいと思っていました。前の会社でデザイナーとしてある程度の経験も積めたので、2年前のタイミングで日本の会社に応募することを決めました。

ただ、中学時代から日本語を勉強しているにしては、自分の日本語はまだまだだなと思います。これからも勉強していきたいです。

——中国のどちらのご出身ですか?

山東省の出身です中国の北東にあります。北京のすぐ南ですね。

——デザイナーになった経緯は?

昔から絵を描くのが好きで、また数学などの理系科目が得意だったので、大学ではその二つが統合された分野である工業デザインを専攻しました。大学ではイスや家具などの物理的なプロダクトのデザインに加えて、UI(ユーザーインターフェイス)などのデジタルなプロダクトのデザインも勉強しました。

卒業後はデザイナーとして中国の中小企業で数年働き、その後Eukaryaで働き始めました。余談ですが、今でも趣味で絵を描き続けています。どこかで絵を発表したりということはなく、あくまで趣味の範囲で描いているだけですが……。

より本来的な目的を見据えた提案を

——Eukaryaではどの様な業務を担当されていますか?

Eukaryaには現在4人のデザイナーがおり、私はその一人です。4人の内訳は、中国人2名、日本人2名、ですね。

私は主にUIとUX(ユーザーエクスペリエンス)のデザインを担当していて、他のデザイナーやプロジェクトマネージャー、エンジニアと連携することが多いです。

——Novaさんもクライアントとのミーティングに参加することはありますか?

通常、ユーカリヤのクライアント案件では、クライアントとのミーティングは日本語で行われることが多いです。そのため、日本人のプロジェクトマネージャーが代表して参加することが多いですが、私もたまに参加します。

直接参加しなかったミーティングに関しては、プロジェクトマネージャーからデザインチームやエンジニアチームへクライアントの要望が伝達されます。それらの情報をもとに、デザインチーム内でも、デザインや技術の観点からどうやってプロジェクトを進めるのがベストかを話し合います。

ただ、クライアントが提示するサービスの目的と、クライアントが求めてくる要件・要望の間にギャップがあることも多いです。なので、デザイナーとしてはクライアントの要望を踏まえつつも、より本来的な目的を見据えた提案をする必要があります。

技術的に難しい要望もあるため、大きな目的を意識しながら、エンジニアチームともすり合わせていくイメージですね。

——すり合わせを行う際、デザイナーの視点からは特にどのような部分に配慮されていますか?

現在のEukaryaのクライアントワークにおけるクライアントは、主に日本の自治体や企業ですが、最終的な『Re:Earth』のサービスは、全世界の一般のユーザーが利用します。クライアントの要望を満たしつつ、一般の方でも使いやすいUIが求められるため、デザインには気を遣っています。

また『Re:Earth』の強みのひとつは、ノーコード(ソースコードの記述をせずにアプリケーションやWebサービスの開発が可能なこと)なサービスであることなので、デザイナーとエンジニア間の調整も重要になります。
つまり、ノーコードの強みと使いやすいデザインのバランスをとる必要があるわけですね。

Eukaryaの中にあるチームでは、エンジニアチームが一番大きく、業務委託メンバー等も含めると20人近くいるのではないかと思います。エンジニアチームが一番多国籍で、いろいろな出身のメンバーが活躍しています。

——なるほど。プロジェクトの実例なども踏まえて、デザインチームの業務についてもう少し詳しく教えていただけますか?

これは私が以前担当した、洪水時の避難ルートを提示するプロジェクトのUIです。こういったものを作り始める際には、まずデザインチームのリーダーを中心に、プロジェクトの全体像や大きな目的について話し合い、認識合わせを行います。

さらに、どういったデータがあるのか、それらをどう活用することができるのか、をさらに具体的に検討するために、自治体やデータの管理元から、地理データや過去の洪水の被害データ、避難所のデータなどをもらってきます。

それらの情報やクライアントの要望を踏まえて、デザイナーチームとしてどういったタスクに対応する必要があるのか、より具体的に、細かく洗い出します。これらの段階を経て、必要なタスクが整理できたら、デザイナー4人の間でタスクの振り分けを行います。

人工衛星観測データを用いた浸水被害把握ユースケース UI画面

このプロジェクトでは、UI上で、浸水が想定される地域や想定される浸水の度合い(床下・床上)・建物の種類(木造、鉄筋、レンガ造りなど)・避難所までのルートなどを異なるレイヤーを使って示しました

色やフォントの設定は、オープンソースのソフトウェアやEukarya独自のソフトウェアを使って行うため、それほど難しくありません。しかし、ポップアップウインドウやドロップダウンメニュー、チェックボックスなどの位置・見せ方の調整は、ユーザーのワークフローを想定しながら慎重に行う必要がありました。

——ユーザーのワークフローの検討は、どのような方法で行っていますか?

これは個人的なワークフロー検討のやり方なのですが、私は、まず紙とペンを使ってアナログで始めます。これは大学時代からの習慣で、この段階ではデジタルよりも、アナログで作業した方がアイディアが整理しやすいので気に入っているんです。

手書きの図形や矢印などを用いて、ユーザーが利用する際のステップを整理したフローチャートの案を自由に作成します。自分なりの案が出来上がったら、それを他のデザイナーにも見てもらいます。

それぞれのサービスやプラグインのデザインにかかる時間は、複雑度にもよりますが、シンプルなプラグインであれば1日、より複雑なものや機能であれば1〜2ヶ月かかることもありますね。

——つまりEukaryaのデザイナーには、コミュニケーションや論理的思考、問題解決の高い能力が求められるというわけですね。

そう思います。Eukaryaでは、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが働いており、言語や文化も異なるため、お互いに歩み寄りながらのコミュニケーションが必要です。

また時差もあるので、ミーティングを設定する場合にも、お互いの業務時間に配慮しながらセットするようにしています。

論理的思考や問題解決能力についても、クライアントの最終的な目的を意識しながらワークフローを検討し、解決手段を柔軟に考える必要があるため、とても大切だと思います。

——他に必要なスキルはありますか?Eukaryaのデザイナーに求められるスキルということですが。

自分の作ったデザインを客観的に分析できる能力も重要ですね。クライアントの要望やユーザーのワークフロー、同僚からのフィードバックをもとに、自分のデザイン案に大きく手を加えることもあります。ニーズや前提条件の変動、アドバイスなどに対応できる姿勢や勤勉さが必要です。

リモートによってひらかれる、世界と社会をつなげるデザイン

——Eukaryaで働き始めて、まもなく2年とのことでしたが、前に働いていた職場などと比べて、Eukaryaでの働き方や職場の雰囲気に特徴はありますか?

Eukaryaは基本リモートワークの会社なので、業務の時間や場所の自由度が高いです。私は自宅から仕事をすることが多いため、集中して作業することができます。前の仕事ではオフィスで働いていたので、これは大きな違いだと感じています。

リモートなのに、Eukaryaのメンバーは本当に業務に熱心な人が多い印象です。私も集中できる静かな自宅で、作業に没頭する時間がほとんどです。

——リモートワーク主体だと、同僚と話をする機会が減ってしまったりしませんか?

前の職場ではオフィスで仕事をしていたので、聞きたいことがあれば、その人のデスクまで行って質問していました。ただ、リモートワークではそうはいきません。

でもそのぶん、事前にミーティングの日時を設定し、アジェンダも決めておくことで、効率的に意見交換や意志決定ができる強みがあると思います。

また、開発チームではカジュアルミーティングが週に1回あり、30分ほどで週末の予定や最近読んでいる本、最近聴いている音楽などについて情報交換を行います。こういった機会により、物理的な距離に縛られずチームの結束を強められていると感じます。

さらに言うと、スタッフの間で上下関係があまりはっきりしていないのも、Eukaryaという会社の特徴かもしれません。

ミーティングでは、年齢や経歴に関係なく、お互いにオープンに意見を言いあっています。


——Eukaryaのデザイナーとして働く中で、どの様な部分にやりがいを感じますか?

UI/UXデザインを通じて自治体や一般のみなさんのお手伝いをするため、常に社会に対して目に見える貢献をしている実感があり、そこに強いやりがいを感じています。

自分がデザインしたサービスを通じて災害対策等が行われ、それが人々の安全や安心に繋がっていると考えると、仕事に対するモチベーションもさらに上がりますね。

——最後に、今後のお仕事に対する意気込みをお願いします。

Eukaryaは国際色豊かな職場です。私の日本語はまだまだ完璧ではありませんが、同僚たちは英語や中国語も駆使しながら、いつも熱心に私をサポートしたり、質問に答えようとしてくれます。
みんなで他愛ない会話で盛り上がることもよくありますし、リラックスした雰囲気の中で多くを学ぶことができていると感じます。
私はこれからもEukaryaで、日本語を上達させ、自由に絵を描き、日本の風景や面白いお店を探索し(笑)、デザインのスキルをさらに高めていきたいです。
そうしたことによって、ユーザーにとってもより使いやすく、より良いサービスを作っていければと、そう思っています。

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