症状の原因を正しく見極め、処方カスケードを防ぐ
製薬企業様向けマーケティング支援を行う株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。
病院薬剤師T様のコラム第4話は、「処方カスケード」がテーマです。
病院薬剤師のTです。
今回は、ポリファーマシーの原因の一つと言える処方カスケードについて書かせていただきます。
カスケードという言葉の元々の意味は、連なった小さな滝のことを指す言葉です。それが派生して連続したもの、数珠つなぎになったものを意味する言葉として用いられるようになりました。
つまり処方カスケードは処方が数珠つなぎになっている、という意味になります。
処方カスケードが発生するパターンは、大きく2つあります。
服用している薬剤の副作用を新たな病状と捉えて処方を行ってしまう
薬剤起因性老年症候群を通常の疾患と混同して処方を行ってしまう
それぞれについて、説明します。
服用している薬剤の副作用を新たな病状と捉えてしまうパターン
服用している薬によって、ある有害な副作用が発現したとします。
この時に、副作用と気が付いて原因となっている薬を中止すれば良いのですが、これを新たな病状と考えて、それに対して新たな薬が処方されることで数珠つなぎに薬がふえてしまうことがあります。
例えば、降圧薬のカルシウム拮抗薬(例:ニフェジピン・商品名アダラート®など)は副作用としてむくみが発現しやすいことは良く知られています。
しかし、カルシウム拮抗薬を服用したことで起こるむくみを副作用と判断せずに、疾患と考えて利尿薬を新たに処方してしまう・・・といったことが起こります。
他にも、胃腸障害に対して処方されたファモチジン(商品名ガスター®など:ヒスタミンH2受容体拮抗薬)によって、副作用であるせん妄が発現する例があります。
このせん妄に対してリスペリドン(商品名リスパダール®など:抗精神病剤)が処方され、服用すると副作用の便秘が発現します。
そして、今度は便秘に対してセンノシド(商品名プルゼニド®など:緩下剤)が処方される・・・といった形で、数珠つなぎに薬が増えていくのです。
上の2つの例のうち、後者はそもそも胃痛などの自覚症状でクスリを飲んでおり、せん妄や便秘といった、患者さん自身でも自覚しやすい副作用です。
一般的に患者さんは、自覚症状に効果のある薬を飲み続けたいと思う傾向がありますので、中止するためには患者さんとの信頼関係が構築出来ていることが重要です。
これらの発見のためには、医師が薬を処方した意図を把握して副作用の対策になっていないか確認しておくことも重要です。
薬剤起因性老年症候群を通常の疾患と混同してしまうパターン
処方カスケードが発生するもう一つの要因に、薬剤起因性老年症候群があります。
人間は加齢によって、老化が進行していきます。
老化というと普通は顔などの見た目が老けてくることや、腰が曲がってしまうことを想像すると思います。
もちろんこれらも老化で身体機能の低下に伴う症状ですね。
この時に筋力の低下なども伴うことが多いので、ふらつきや転倒などのリスクが上昇します。
もしこれらが発生した場合、加齢によって骨密度も低下している場合も多いので、骨折につながり、ベッド上での生活しかできない状態になってしまうことも良く見られます。
このほか、食欲低下によるやせ、便秘、排尿障害・尿失禁のような症状も老化によって引き起こされます。
実は加齢によって影響するのは体だけではなく心の症状も発現します。
抑うつや認知機能障害、せん妄などがこれに当たります。これらの症状を総称して老年症候群といいます。
上記の症状は、実は薬の添付文書にもよく出てくるものです。
薬を服用することによって老年症候群と同じような副作用が発現している状態のことを、薬剤起因性老年症候群と呼びます。
薬剤起因性老年症候群の代表的な症状と、その原因となる薬剤は、以下のように実に多いです。
特に高齢者は肝臓や腎臓の機能も低下しているので、副作用が出やすい傾向があります。
薬の副作用で出ている症状を誤って捉え、「高齢者によくある症状なんです。お薬を出しておきますね!」と対応してしまうと、また余計な薬が出てしまいます。これも処方カスケードの主要な発生原因の一つです。
これらの発見のためには、新しく薬が追加された際に、原因が老化なのか、薬なのかを、カルテチェックや患者様からのヒアリングで見極めなければいけません。
次回は、リハビリテーション薬剤についてお話します。
今回もありがとうございました。
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