見出し画像

臨床現場における医師のコミュニケーション|がん患者さんとの信頼関係構築 PART2

製薬企業向けマーケティング支援を行う株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

5回シリーズでお伝えする乳がんの実症例を用いた医師のインタビューセミナー、第2回の今回は「家族背景・キーパーソン」についてご紹介します。

ウェビナーの概要

実施日:2024年2月27日(火)
演題:臨床現場における医師と患者さんの コミュニケーションをひも解く     ~がん患者さんとの信頼関係構築~
演者:坂井 威彦 先生
    (公益財団法人がん研究会有明病院乳腺センター副部長)

  • Part1 乳がん患者さんの自覚症状と受診のきっかけ

  • Part2 家族背景とキーパーソン

  • Part3 ステージ別の告知における臨床の実際

  • Part4 遺伝子検査と化学療法

  • Part5 メンタルケア・他科連携・製薬企業への期待

前回のPart1も、ぜひ合わせてお読みください。

本記事では、ペイシェントセントリシティにおいて重要な情報である家族背景・キーパーソンに関する医師の観点を紹介します。

家族背景は患者の個別性を明らかにするため欠かせないものであり、また、キーパーソンは文字通り治療方針の決定にかかわります。こうした点について、医師は臨床でどのような情報に着目し、思考し、個々の対応を実施しているのかをお話しいただきました。

医師の思考に沿った臨床理解を深めることが、MR研修や製品開発などのヒントに少しでもなれば幸いです。


乳がんの実症例を用いたインタビュー

インタビューにお答えいただいたのは、引き続き坂井威彦先生(公益財団法人がん研究会有明病院乳腺センター副部長)です。

症例データは弊社が独自運営している電子カルテデータシステム「ユカリアデータレイク」からピックアップし、企業様のMR研修などに活用いただいているもので、仮想症例と比べてより明確に医師の思考の実際をお話しいただくことができます。

家族背景|電子カルテデータから分かる患者情報と活用

電子カルテデータは、患者さんの状況を把握し一人ひとりに最適な医療を実施していくための記録です。
そのため、疾患の情報だけでなく、特にテキスト記載された部分には患者さん個人の家族背景やキーパーソン、社会環境・介護支援状況など、薬剤選択や治療方針を左右する重要な情報も記録されています。

それらの情報の中で、医師がどのポイントに注目し、どのように考えているかを把握することは、なぜその治療方針なのか、なぜその薬剤選択なのかといった臨床の理解につながります。

坂井先生による解説

それでは以下に、坂井先生へのインタビューより「家族背景・キーパーソン」の着目点、考え方についてのコメントをご紹介します。

家族背景について

■ 家族歴の確認
家族歴があるかどうか、つまり遺伝性乳がん卵巣がんの背景があるかどうかは重要です。

また、患者さんが家庭や職場でどういう立場なのかも治療選択の判断に関係してきます。若い人の場合、お子さんやパートナーがいるかどうかが、温存療法の選択肢にも影響します。

■ 妊娠への影響
乳がんの初期治療を始める際、手術が先か抗がん剤が先かを判断する必要があり、抗がん剤が先の場合は卵子凍結なども検討しなければなりません。

そのため、最初の段階でお子さんの有無などを積極的に確認しています。温存療法をするかどうかで、月経が止まって閉経し、次のお子さんができなくなる可能性があります。そういった家族計画が終わっているかどうかは重要な情報です。
ただし、最後の子どもが産まれてからかなり経っている方には、あえて詳しく聞かないこともあります。

■ 高齢者のスペシャルニーズ
高齢の方の場合は通院できるかどうか、付き添いができる人がいるかどうかも重要です。特にインテンシブな治療をする上ではそのサポートの有無を確認する必要があります。

現在の患者さん(※ユカリア注:先生の担当患者さんは施設入居されている)はそこまでサポートが必要な方は多くはありません。
施設から少し離れていますが、高齢で一人では通えない方は、家族が付き添ってくれる方が多いようです。

化学療法や放射線治療など、毎日通う必要がある場合でも、付き添いがある程度できる環境にあります。

高齢者のスペシャルニーズ

キーパーソンについて

■キーパーソン(主な支援者)
治療の選択肢を一緒に考え、何かあった時のサポートになってくれる人がいるかどうか、つまりキーパーソンは把握する必要があります。

独身の方だと親がキーパーソンになることもあります。診療にパートナーや友人が同行する場合があり、そうした方がたとの関係性の深さなども確認しています。

乳がんの場合は初期治療の段階では、まだ深刻ではないことが多いため、キーパーソンを連れてこない方もいます。
患者さん次第ですが、判断が一人ででき、一人で受診されるかたも多い一方、再発のリスクが高くなってくるときなどには、キーパーソンともお話しする必要性が出てきます。

キーパーソンについて

まとめ

インタビューの第2回として、家族背景・キーパーソンの着目点や考え方についてご紹介しました。

次回Part3では、ステージ別の告知についてお知らせいたします。


ユカリアでは、
独自の電子カルテデータベースと専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした、製薬企業様のマーケティング・営業活動をご支援する調査・コンサルティングを行っています。
詳細や事例にご関心のある方は、以下までお気軽にお問合せください。

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部
お問合せ窓口メールアドレス:pharma.biz@eucalia.jp


【製薬企業の方へお知らせ】

■ MR研修に活用できる実際症例データのご提供
今回使用した症例のもととなる当社の電子カルテデータベース「ユカリアデータレイク」は、個人情報はじめ諸課題をクリアする加工を行い、このように臨床の実際を把握するニーズがあるパートナー企業に提供することで臨床研究やMR研修にお役立ていただけます。

他社データと異なる点として臨床を深く理解できる背景情報が含まれるテキスト情報(定性データ)の解析が可能な点があります。データから医師の思考インサイトを仮設し、MR活動の向上を検討する教育研修者さまにご活用いただいています。

■製薬企業向け 営業活動支援サービス

弊社のご提供しているコンサルティングサービスの概要をまとめております。独自のアセットを活用し、製薬企業さまの営業活動のPDCAをトータルでサポートいたします。

https://eucalia.jp/service/pharma/