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【読書】人生=80年=4000週。大事な事に注力せよ/「限りある時間の使い方」から
仕事、子育て、家族などに振り回され、毎日が目まぐるしい速度で過ぎていく。時間を効率的に使うという効率性/生産性に走るのは間違いだという。限られた人生/時間をどうしたら有効に使えるかを教えてくれる一冊。
記事要約
忙しさ=人間の社会的価値とされる昨今、限られた時間をいかに効率よく使いアウトプットを増やすかにフォーカスしがち。
そんな効率性の罠(efficiency trap)に陥り、生産性の鬼(productivity geek)と化さないよう警告。人生4000週という時間の有限性をしっかりと受け止め、自分にとって大事な事に注力、それ以外は積極的に先延ばししろとのこと。
仕事を含む人生のあらゆる場面に応用できる普遍的な教えが詰まった一冊。死ぬときに笑って死にたいのなら手にすべき。
1.本の紹介
イギリス人作家でガーディアン紙の人気コラム「This Column Will Change Your Life」の執筆を長年勤めたコラムニストのオリバー・バルクマン(Olivier Burkeman、ケンブリッジ大卒)。 会社に人事研修の先生に勧められた本。書籍タイトルは「Four Thousand Weeks - time management for mortals」(2021年刊行、Penguin Random House UK)。邦訳あり(「限りある時間の使い方」、2022年刊行、かんき出版)
TEDx Talksでも登壇し、4000週という限りある時間にどう向き合えばいいのか講義をしている。10分弱なのでお勧め。
2.本の概要
誰もが世話しなく日々を過ごす昨今。時間が足らない問題は誰もが抱える問題。忙しければ忙しいほど、社会に必要とされている(社会的価値が高い)という感覚に陥りがち。
結果、 時間を制すれば人生を制する、タイムイズマネー、などといい、いかに効率よく時間を使うか、効率性や生産性を上げることでアウトプットを増やす、質を高めるか、といったハウツー本が世に多く出回っている。
そんなハウツー本から一線を画すのが本書。表紙の裏には、読者に対し一つの質問を投げかける。
What if you stopped trying to do everything?
時間が有限なことは確か。だが、だからといって、効率性を求めることに違和感があるという。生産性の鬼/Productivity geek(p.26)という言葉はまさに、生産性/効率性を上げ、無駄な時間をなくし、いかに早くto do listに書かれたとタスクを終わらすか、ということに命をかける人々。
しかし結局、どこかで限界が来る。効率性や生産性を上げ続けることはできず、一方でやるべき事/タスクは増え続ける。例えば家事の例。洗濯機という便利な機械が普及し、主婦への負荷が軽減されたかというと全く異なる。社会的に求められる清潔性のレベルが上がってしまったからだ。emailsも同様。返答をすればするほど受信するメールが増える。この現象を効率性の罠/efficience trap(p. 48)という。

Productivity geekは実は、時間が有限であり、どこかである時点で取捨選択をせねばならないという事実から逃げているという。何かを見逃してしまう/FOMO (fear of missing something, p33)という恐怖心にとらわれ、全てをこなそうとする。そんなことは不可能だという。
筆者の提案はそんなProductivity geekはやめ、人生や時間には限りがあるということを真に受け止める姿勢/the limit embracing life attitudeを持つ事が重要という。
全てをこなそうとすることをやめ、効率性という強迫観念から自由となる事が大事。そうすることで、人生4000週(80年)というリミットに中で、自分にとって大事なものが見えてくる。その大事なことに時間を注ぎ込むべきとのことだ。
そして、さほど重要ではないタスクを意図的に先延ばし/procrastinationすることが重要という。しっかりとプライオリティをつけた上で、順位に低いものはあえて手をつけないという勇気ある決断も重要であるという。
最後に、そもそも6000年程度の人類の歴史は長い地球や宇宙の歴史から見れば刹那に過ぎず、人の人生はそれにすら満たない一瞬の出来事。モーツァルトやアインシュタインなどの人類的な偉業を達成した人は数えるほどしかおらず、大多数はなんのLegacyも残さず世を去る。この真実を受け止めることで、本当に何が大事なのか見えてくるという。以下引用
And this realisation isn't merely calming but liberating, because once you're no longer burdened by such an unrealistic definition of a 'life well spent', you're freed to consider the possibility that a far wider variety of things might qualify as meaningful ways to use your finite time.
3.感想
仕事や日々の生活のあらゆる場面で役に立つ知識がつまっている。
30代後半まで効率化/最適化の鬼だった。仕事では全てのタスクを80点ほどの効率で素早く終わらせて仕事が出来る振りをし、著者と同様メールボックスも未読0を達成していた。そして仕事量が増加の一途を辿っていったのも同じ。それでも当時は気合いで乗り切ってた。
40代に入り、仕事人生の終わり/定年の影がちらついてくると、何をそんなに躍起になって仕事をしていたのか疑問に思うようになる。メール回答含め各タスクの質を、70点位まで落とし適当に行うようにした。しかしそれで怒られたことはない。同じことをずっとやっていれば、仕事を適当にこなしても、それなりに評価されるもの。
一番心に響いたのは、productivity geekは、時間を有効活用しているのではなく、物事を取捨選択する勇気がない人だ、という著者の言葉。物によっては先延ばしする決断をすることが重要ということ。質を落とす勇気はあっても(バレにくいし)、タスクにあえて手をつけないということは考えたことなかったので、新たな発見だった。
今では、本当に下らない質問や作業は、まずは無視してみることにしている。無論、催促されればやるが、意外と催促のないことも多々あり。この先延ばし戦法、使いどころを間違えなければ、仕事の負荷やストレス軽減につながる有効なツールになる。
あとは、著者がTedx talksでもいっていたが、死ぬ際に笑って死ねるよう、自分の時間を費やすべき大事な事をしっかり見極めること。月並みではあるが、私の場合、金でも仕事もでなく、家族としっかりと向き合う事、子供の成長をみること、趣味/読書に没頭することかと。
キャリアを追い求めるとか、ノーベル賞とるとか総理大臣になるとかして歴史に名を残す的なことも、人によっては大事な選択肢の一つ。それはそういうことが好きなギラギラした人でかつ、そういうことを目指せる環境に生まれ育った人に任せるのがベスト。
最後の一言
誰もが読んだ方がいい名著。もうその一言に尽きる。
本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いです。
あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。