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Finally Free - 英検1級合格体験記 第2部 一次試験分野別対策法(リーディング)
第2部 一次試験分野別対策法(2.リーディング)
2-2-1.はじめに
英検1級のリーディング問題は当初はとっつきにくい印象があった。
特に科学分野は日本語訳を見ても、何が言いたいのか理解しにくいほどである。(CRISPR Gene Editing / 2019年度第3回、はそう感じた)
しかしながら、対策をすれば正答率が上がった。
ある時点までは勘で解いていたが、徐々に確信を持って解答できるようになった。
では、どうするか?
極めてシンプルに沢山読んで、沢山問題を解くことに尽きる。
この稿終わり。
と、したいぐらいであるが、何をどうやったかを記していく。
2-2-2.基本方針/ステップ
基本方針:とにかく問題を沢山解く
Ⅰ.問題を解く
Ⅱ.答え合わせをする
Ⅲ.間違った箇所の原因を探る
Ⅳ.不明な語彙をチェックする
Ⅴ.時間を空けて再び解く→Ⅱへ戻る
基本方針:とにかく問題を沢山解く
これが一番手っ取り早く、確実な方法だと思う。
確かにTIMEやNational Geographic、その他英字新聞を読むことが推奨されており、これも非常に良い学習であるが、どれを読むか迷うくらいなら過去問や対策本を解いてしまおう。
筆者は長くリスニングを重視した勉強を続けてきており、読解に関しては後回しであった。どこかの時点で英文を読み込む時期が必要だと感じており、まさに一次試験にあたってはこれを実践するに至った。
使用した教材は以下になる。
・英検1級集中ゼミ
・過去問
・リーディング問題完全制覇
各々を2周した頃には以前はぼやけて見えた英文が比較的クッキリ明瞭に見える感触を持った。
さながらAmazing Graceの歌詞が頭に浮かぶ感じである↓
I once was lost, but now am I found
Was blind, but now I see
上記の各ステップについては特段説明は不要だと思うが、特に重要なのは以下2点である。
Ⅲ.間違った箇所の原因を探る
Ⅳ.不明な語彙をチェックする
つまり、復習が大事だよ、ということである。
2-2-3.リーディング力を高めるには
間違った箇所の原因を探る
間違った問題の原因を探るのは基本中の基本だと思う。
加えて、4択問題なので勘で正解してしまうこともあるため、確信を持って解いた問題以外もキッチリと復習しておきたい。
間違ってしまうのは単純に英文を正しく読めていないからの場合が多い。
さらに突き詰めて何故英文を正しく読めないか、を考えた場合、
・文法的に不明瞭な部分があるため
・長文を読むスタミナに欠けるため
・語彙が分からないため
という要因が挙がると思う。
少なくとも筆者はそうであった。
あやふやな文法は再点検する
文法があやふやだと適当に単語を繋いで理解するアクロバティックな読み方をしかねない。これは適切ではない。
数学的に、とまでは言い過ぎかもしれないが、ルールに基づいて書かれているのでルールに沿って読む必要がある。
個人的に厄介に感じたのが分詞(現在分詞・過去分詞)だった。
特に過去分詞は動詞の過去形と同じ形のものが多く、文章を先まで読んで初めて判別可能になる。
後置修飾は全般的に鬼門であると感じる。
再度「真・英文法大全」を読んで理解を深めた。
今さら文法?と思うかもしれないが、文法は本当に侮れない。
長文を読むスタミナをつける
日本語でもそうだが、長文を読むのにはある種の「読書体力」のようなものが存在する気がする。
英語もまたスタミナがないと勢いを持って読めない。
加えて4択の選択肢の文も長いので気持ちが萎えかねない。
しかしながら、読む量を増やしていけば段々とスタミナは増える。
ある時期からはスピードも加わり、先に述べたように「クッキリ見える」感触が出てくる。
また、英文独特の挿入表現(howeverやfor exampleが文頭でなく、文の途中に出てくる現象)にも戸惑わなくなる。
リーディング問題に於ける習熟度はおよそ以下のような変化があった。
レベル1:長文の大海原に呆然とする
レベル2:なんとか長文に食らいついていくもヘロヘロになる
レベル3:選択肢と本文を行き来する回数が徐々に減る
レベル4:スピードを持って正確に解答できる
2-2-4.読むための語彙
不明な語彙をチェックする
キーとなる単語が分からないとチンプンカンプンになりかねない。
実際に2021年度第2回の過去問を解いた際、空所補充問題「Jewel Wasps and Cockroaches」のwaspをアングロサクソン系の人たちだと思い込み、3問とも不正解になってしまった。
(wasp=スズメバチ、jewel wasp=宝石バチ、WASP=White Anglo-Saxon Protestant)
大問1のために必死になって覚えたのに、さらに語彙を覚えないといけなの?と思うかもしれないが、半分その通りで半分はその通りでない。
その通りな点は上記のごとくキーとなる単語が分からないと途端に文章の理解が苦しくなるから。
その通りでない点としては全ての単語が分からなくても前後の内容から察することができるから。
語彙力があった方が良いには越したことはないが、一方で単語の海に溺れてもいけないと思う。
多読で語彙力を上げる
また、語彙学習において「宗教戦争」とも形容した、文脈重視・多読派の学習法がここで力を発揮する。
つまり、実際の文章の中で単語が使われる様子を何度も目にすることで、記憶が定着すると考える学習一派である。
実際、長文問題にも単語帳に載っているような単語や熟語が頻繁に登場するため、多読派の意見も一理あると感じる。
とにかく「試験勉強は語彙のレベルを上げる絶好のチャンス」と語彙のページで書いたが、長文問題でもvocabulary hunterになったつもりで、未知の単語やあやふやな単語をチェックして、まとめておこう。
筆者も復習の際に分からない単語をピックアップして、自作の単語帳を作成した。
言うまでもなく、折を見て何度も見ることによって定着を目指した。
準1級レベルの単語を再度押さえる
なお、準1級レベルの単語を再度復習しておくと、地味に効果的であった。
しばしば登場する割に分からない単語を確認すると準1級の単語帳に載っているではないか。
・contend(~であると主張する)*
・utilize(~を利用する)
・assert(~を主張する)
・hold(~と考える)
・allege(~を主張する)*
などなどである。
(注:実際に載ってるのは*印のみ)
逆に言うと、準1級レベルの単語が抜け落ちると、やや苦しい面もあるので動詞だけでも再度復習するのがいいかもしれない。
最終目標と副次効果
大問2・3の最終目標は「なるべく早く解き、かつ、得点源にする」こと。
早く解く、というのはライティングのために時間を確実に割り当てるためである。
筆者の場合はライティングにどうしても30分はかかることが分かっており、語彙問題は考えても仕方がないので12~13分、リスニングの先読みに2~3分、そこから差し引いた55分で大問2と3の計5題を解くのが理想的なプランだった。
長文問題は語彙やライティングに隠れてやや地味な印象であるが、多くの問題を解いて読むスタミナをつけると、意外と得点源になってくれる点で対策しがいがある気がする。
加えて、リスニング問題の選択肢や二次試験のトピックを早く読めるとアドバンテージが生まれる副次効果もあるため、試験勉強を良い機会としてどんどん読んでいきたい。
広い観点で考えると、日常的にも非日常的にも効果がある。
筆者は年に1回ペースで海外へ旅行に行くのだが、2024年10月にロンドンへ行った際、大英博物館の解説がそれなりにスラスラと読めた。
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これは以前にはなかった現象であり、全ての英文を自国語の如く読めるレベルには達してないものの、少なくとも言葉の壁は数年前に比べて低くなった。
2-2-5.問題形式毎のポイント
リーディング問題は2種類で構成されるので、簡単に傾向と対策を記しておく。
空所補充
空所補充は内容一致問題に比べて文章の量が多くないので、ややガードが下げるかもしれない。しかし、意外に厄介であった。
基本的に空所の前後の文脈を読み解くことが解答に繋がるのだが、空所の位置がパラグラフの前半・中盤・後半、とバラバラのことが多い。
接続表現があれば、それは大きなヒントになる。
but/howeverがあれば空所の前後で反対の内容のはずだし、for example/such asなどがあれば空所の前後で抽象表現を具体的に書いてるはず。
しかし、悩ましいのは接続表現がない場合である。
文章の流れを頭に入れつつ、逆接になったり順接になったり、言い換え表現になったりを見極める必要がある。
この見極めは問題を解いて解説を読み、どのパターンなのかを掴んでいくしかない。
そう、どんどん問題を解こう。
内容一致
内容一致問題は文章の量が多く、選択肢の文章も長い点で困難さを伴う。
しかしながら、先に示したようにある程度の語彙力と長文を読むスタミナをつければ意外と解けてしまう。
1つのパラグラフに対応して1つの設問なので(例外は無論ある)、最後まで読んで話がひっくり返るようなトリッキーさはない。
文章が読めれば、するりと解ける。
ただ、文章は長い。これは紛れもない事実である。
よって、長さに負けないスタミナをつけることが重要だと思う。
2-2-6.成績推移
成績の推移については以下の通りである。
実施日:正解数 - 空所補充(6)/内容一致(10)(対象テスト)
2019年10月6日:2 問/ 6問(2019年度第2回)*
2023年4月25日:3問 / 3問(2019年度第3回)
2023年4月28日:3問 / 5問(2020年度第1回)
2023年5月21日:3問 / 6問(2020年度第2回)
2023年5月30日:4問 / 7問(集中ゼミDay30)
2023年6月1日:6問 / 9問(2020年度第3回)
2023年6月4日:5問 / 6問(2023年度第1回)*
2023年8月25日:5問 / 9問(2021年度第1回)
2023年8月30日:2問 / 9問(2021年度第2回)
2023年10月1日:5問 / 10問(2022年度第2回)
2023年10月5日:4問 / 9問(2022年度第3回)
2023年10月8日:4問 / 8問(2023年度第2回)*
*受験本番、その他は過去問
読む量を増やした7月以降に後に正解数が上がっている。
対策がハマった。
2-2-7.印象に残った問題と背景知識
英検1級に登場する長文は比較的興味深いものが多かった気がする。
少なくともTOEICのつまらん広告だったり、メールのやり取りを読むよりは断然面白い。
スターウォーズ・ファンの熱狂具合と既存宗教との共通点を書いた「Jediism」(2021年第1回)や世界各国で交付されている化石燃料の補助金に関する考察の「Fossil-Fuel Subsidies」(同)など、読んでいて楽しかった。
そんな中でも自分の趣味と繋がった以下2つは特に思い出深い。
Chile under Pinochest / 2019年度第3回
チリ・ピノチェト政権の独裁に関する内容であるが、2回目に解いた後に「あ!これはThey Dance Aloneではないか!」と気付く。
同曲はStingの「...Nothing Like The Sun」(1987年)に収録されているプロテスト・ソングであり、正式タイトルは「They Dance Alone (Cueca Solo)」である。
同国の政権が何千万人もの国民を殺害したため、寡婦がダンスを1人で踊る(元々はペアで踊るもの)ことで抗議を表す、という内容。
英検とStingが繋がるとは思いもしなかった。
The Trail of Tears / 2021年度第2回
Dream Theaterの4thアルバム「Falling Into Infinity」(1997年)のラストを飾るのは13分に及ぶ「Trail of Teas」という曲である。
問題の題名を見た瞬間、「あ!あの曲と一緒だ」と心が浮き立ったものの、内容としてはアメリカ原住民が受けた理不尽な話であった。
同曲の歌詞を読む限り、原住民の移動を描いた内容ではなかったが、作詞者はアメリカ人なので、何かしらリンクするものがあるのかもしれない。そんな雑感を持つに至った。
余談ながら、Eric Johnsonというギタリストの1stアルバムでも同タイトルの曲がある。
専門知識は必要か
筆者は高校時代に世界史を選択しておらず、英検の問題で歴史に絡む内容については多分に気が引ける思いがあった。
アメリカの南北戦争もどっちが最終的に勝ったかぼやけているほど。
ただ、長文問題という形で色々知れたのは楽しかった。
歴史にせよ、科学・生物の問題にせよ、長文問題を解くにあたって専門知識が必要なのか?という疑問があるかもしれない。
何故なら、専門的な内容がしばしば登場するためである。
しかし結論としては、あるに越したことはないものの、なくても十分解けるのは間違いない。
文章さえ読めれば解けるようになっているので、この点は気にしなくていいと思う。
なお脱線してしまうが、世界史の知識については、海外へ行くたびにその必要性を感じることがある。
歴史を知っていれば、街中の銅像や美術館の作品をより深く楽しめるのではないかと思う。ただ、本を読んで勉強しようとしても、膨大な人物名や事実を覚えるのが大変で、なかなか進まないのが悩みどころだ。
リーディング素材について
基本的に過去問を解くことが近道ながら、自発的に英文を読むことは英語学習の醍醐味でもある。
語彙学習でも書いたが、個人的にはウィキペディアの英語版を好んで読んでいた。
主に趣味に関する内容なので、読解向上にどれぐらい寄与したかは正直よく分からない。
ただ、ウィキペディアの英語版はリーディング問題完全制覇では問題になっていた。(Endangered Languagesが部分的に使用されている。設問化のために一部修正・加筆あり)
ウィキペディアが問題になるならば、それを読むのも悪くなかろう、という発想である。
なお、このリーディング問題完全制覇は英検本番の問題より難易度が高い。
よって、このレベルに悪戦苦闘した後に過去問を解くと、以前感じた難解さは感じない。
さながらマラソンに於ける高地トレーニングのようなものである。
ついでながら使用したテキスト難易度をまとめておくと、
英検1級集中ゼミ < 過去問 < リーディング問題完全制覇
となり、段階的に取り組むのも1つではないかと思う。
2-2-8.まとめ
基本方針:とにかく問題を沢山解く
Ⅰ.問題を解く
Ⅱ.答え合わせをする
Ⅲ.間違った箇所の原因を探る
Ⅳ.不明な語彙をチェックする
Ⅴ.時間を空けて再び解く→Ⅱへ続く
習熟の推移
レベル1:長文の大海原に呆然とする
レベル2:なんとか長文に食らいついていくもヘロヘロになる
レベル3:選択肢とパッセージを行き来する回数が徐々に減る
レベル4:スピードを持って正確に解答できる
最終目標:なるべく早く解き、かつ、得点源にする
使用教材:
リーディング問題完全制覇(ジャパンタイムズ出版)
2022年度版 英検1級過去6回全問題集(旺文社)
英検1級集中ゼミ(旺文社)
(第2部 2.リーディング 完)