〜内容の伴う勝利で2連勝〜 21/12/2 《プレミアリーグ2021-22 第14節》 トッテナム vs ブレントフォード レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ2021-22 第14節、トッテナム対ブレントフォードの試合をレビュー。
前節のバーンリー戦が雪の影響で延期となり、思わぬ形でトレーニングの機会が増えたスパーズ。
今季強豪相手にも見応えのある戦いを繰り広げ、毎シーズン恒例となりつつある昇格組の奮闘を見せてくれているブレントフォードとの一戦はどのような試合となったのか。。
1. スタメン
・スパーズ
ロリス
サンチェス-ダイアー-デイビス
エメルソン-スキップ-ホイビュア-レギロン
モウラ-ソン
ケイン
77’ モウラ⇄ウィンクス
83’ エメルソン⇄タンガンガ
87’ ソン⇄ベルフワイン
スパーズは、前節リーズ戦からはタンガンガ、ウィンクスに代えてサンチェス、スキップを起用した〔3-4-2-1〕。
直近のムラ戦からはロリス、タンガンガ、ロドン、ドハーティ、エンドンベレ、セセニョン、ヒル、デレ・アリに代えてゴッリーニ、ダイアー、デイビス、エメルソン、ホイビュア、レギロン、モウラ、ソンを起用。
ここまでの試合と比べると、2ボランチを組むスキップとホイビュアの位置が逆になりました。
スキップは出場停止からスタメン復帰。
・ブレントフォード
フェルナンデス
グード-ヤンソン-ピノック
カノス-オニェカ-ノアゴーア-ヤネルト-ヘンリー
トニー-エンベウモ
56’ オニェカ⇄バプティスト
70’ カノス⇄ウィッサ、ヤネルト⇄イェンセン
ブレントフォードは、エヴァートン戦からスタメンの変更はなしの〔3-5-2〕。
2. 1st half
2-1. スパーズ、〔3-4-3〕でのプレスに挑戦
この試合、スパーズはコンテ体制ではリーグ戦で初めて〔5-4-1〕のブロックを敷くのではなく、〔3-4-3〕でのプレッシングで前からボールを奪いに行くプランで試合に臨みました。
ブレントフォードがゴールキック時やGKへのバックパスからの組み立てで行っていた、右CBのグードを大外レーンに張らせて左IHのヤネルトがノアゴーアの横に降りて2ボランチのようになるGK+4-2のビルドアップの形には、WBの押し上げやソン、モウラの外切りからGKまで寄せるプレスで対応。
上のアニメーションのようにソンが外切りでヤンソン、フェルナンデスと寄せた後はフェルナンデスからピノックへのパスの移動中にモウラがピノックに寄せていき、ピノックが急いでヘンリーに出せばそこにはエメルソンが縦スラで抑えに来ていて、ブレントフォードからするとヘンリーが再びピノックに戻してロングボール、くらいしか選択肢がないというわけです。
1つ目の図のレギロンがグードまで出ていくやり方だと後方で数的同数となり、その状態で空中戦に強いブレントフォードの前線にロングボールを放り込まれるのは怖かったですが、エンベウモのプレースタイルもあってか、グードからデイビスの背後のスペースへのフィードにエンベウモが流れて受けるような形ではなく、シンプルにダイアーとの空中戦勝負を挑んでくれたのはありがたかったところ。
ブレントフォードがGKを含めず、バックラインの3枚とノアゴーア、ヤネルトの2枚でビルドアップする際には3トップで3CB、2ボランチで2ボランチ、WBにはWBを出して嵌めていったスパーズ。
このやり方の際、スキップは、左WBのヘンリーにボールが入ったときなどにハーフスペースに顔を出すトニーを気にしてヤネルトを捕まえにいくべき場面でやや迷っているように見えることも多く、プレスのスイッチが入ったときにヤネルトを自由にさせてしまいそこを使われてしまっているシーンもありました。
しかし、ブレントフォードのバックラインの選手がプレッシャーを受けた時のパスの精度が低く、受け手の想定とは逆の足にボールが届いたりすることも多く、前半スパーズはプレッシングでゲームの主導権を握ることに成功します。
2-2. うまくいったビルドアップ、うまくいかなかったビルドアップ
次はスパーズのボール保持についてです。
ブレントフォードは2トップ+ボールサイドのIHの3枚でスパーズのビルドアップを妨害することを試みます。
これに対しスパーズは、ホイビュアがデイビスの位置に降り、レギロンでカノスをピン留めしてデイビスがフリーで前を向ける形を作ります。
試合開始から2分辺り、この形からデイビス→出てきたカノスの背後に抜けたレギロンという風にタッチライン沿いに流し込むスルーパスでサイドを攻略してレギロンのクロスまで繋げることに成功。
さらにケインは上手く収められなかったものの、4分38秒のダイアーからケインへの縦パスも、デイビスが開いたことでオニェカがそれを気にして少し外気味のポジショニングになり、ノアゴーアがソンをケアするためにヤネルトとの間を空けて寄ってきたのでパスコースが開きました。
このように左サイドで数的優位を作ることによってブレントフォードのプレスを回避していたスパーズでしたが、このような可変をせずにフラットな〔3-2〕でのビルドアップを行なった場合には、ブレントフォードのプレスをうまく掻い潜るには至らず。
上記の理由からうまくいっていなかったと僕は考えました。
しかし、繋げないなりに相手の中盤が出てきた後ろのスペースでケインにロングボールを収めさせようとするなど、ある程度効果的な手を打てていたのは良かったところ。
前半、11分52秒という早い段階で先制点を決めたスパーズ。
4本目のコーナーキック、ショートコーナーでソン→レギロン、再びソンにリターンして、ソンがエンベウモを剥がして左足クロスからオウンゴールを誘っての得点でした。
得点の前からソンからモウラに出す形でショートコーナーは見せていましたが、この得点シーンで初めてレギロンを使い、見事ソンのすばらしい剥がし、すばらしい逆足でのクロスで先制。
この得点シーンでのソンの突破、以前DAZNの内田篤人の番組で松井大輔が言っていた三笘がドリブルで抜ける理由にモロ当てはまってると感じたので、気になる方はぜひ見てみてください。
3. 2nd half
後半プレスの勢いを強めるブレントフォードに対してロングボールで逃げることが多くなったスパーズ。かなり寄せられて圧を感じながらのキックになるので精度も落ち、なかなか前線でボールを収めるには至りません。
2-2.でも言及した通り、スパーズの左右のCBはオープンにトラップすることが多かったです。プレスが速くなると、もちろんプレスから逃げるようにその傾向も強まっていきます。
それならば、ボランチはどうせ出てこない左右CBからのパスを受けに行くのではなく、元からWBからパスを受けることを想定したポジショニングを取ればまた違ってくるのですが、それができず。
前半よりもさらにボランチのサポートは遅れ、ロングボールでボールを明け渡すことになりブレントフォードの保持の時間が増えていきます。
しかし64分台、スパーズのカウンター。
スローインの流れからサンチェス→ソンと入ったボールをケインに落とし、ケインのすばらしいスルーパスからレギロンが裏へのランニング。さすがの瞬足でクロスを入れるスペースを生み出しクロス。ヤンソンに一度近づいてから離れるオフザボールでどフリーのソンが合わせ、スパーズが2点目を叩き込みました。
その後ブレントフォードは70分にカノスに代えてウィッサ、ヤネルトに代えてイェンセンを投入し、56分のオニェカからバプティストへの交代も合わせて3枚の交代カードを消費。
前半からプレッシングにおいても貢献していたIHの2人を代え、精力的に動き直してボールを受ける動きやプレスに出たエメルソンの背後への斜めのランニングで、疲れが見えるスパーズのプレス隊を掻き回します。
3トップの間でボランチにボールを受けられても彼らはもうそこに寄せる体力はありませんし、ここまで走り回ってきたスキップが交代直後で元気に動き回るイェンセンを捕まえるのも難しいことを受け、スパーズは77分にモウラに代えてウィンクスを投入。システムを〔3-5-2〕に変更し、ブレントフォードが行なっているIHが相手の左右のCBまで出ていくプレスの形で対応します。
前半から空いてくるブレントフォードの中盤を抑えに縦スラを繰り返していたスキップが体力的にキツいのは変わりませんが、動き回る相手についていくのではなく、ボールホルダーのCBに寄せていくというわかりやすいタスクに変わったことは大きかったと思います。
83分にはエメルソンに代えてタンガンガを入れて手堅く勝利を掴みにいったスパーズ。
87分には、ソンとの交代でベルフワインがコンテ体制初の出場も果たし、2-0でうれしいリーグ戦2連勝を飾りました。
4. 総括、感想
リーグ戦では初となる前からのプレッシングや、ホイビュアが列落ちして左サイドでズレを作る形でのビルドアップ、ネガトラ時の速い切り替え、両利きで相手を一瞬剥がす能力がピカイチのソンを活かしたショートコーナーなど、ポジティブな要素が多く見られた試合でした。
ムラ戦に引き続き守備時に〔5-4-1〕ではなく〔3-4-3〕という形を採用し、前からのプレッシングで挑んだので、これからもリーグ戦でこのプレスは続けるつもりなのかなと勝手に考えています。
選手個々に注目すると、個人的には、着実にボールフィーリングと体力が戻りつつあるケインや途中出場のウィンクスのプレーは印象に残りました。
体力的にもキツい終盤にウィンクスがボールを受けてすぐ捌くのではなく、寄せられていなければ相手の1stDFラインと2ndDFラインの間でもある程度ボールを持って、時間を作ってくれていたのはすごく助かるだろうなと思いました。
そのように受けてから時間を作るだけでなく、自ら運ぶこともできるスキップとホイビュアとはまた違う良さを持った選手なので、ぜひ心と身体のコンディションを整えてもらって復活を期待したいです。
課題として気になるのはビルドアップの際のボランチの動きです。
CBやWBのボランチを見る意識やトラップなどの技術にも向上の余地は多分にあるものの、2ボランチの2人が動き回ってるのにCBやWBが顔を上げたときには若干サポートが間に合っていない問題はどうにかしたいところ。
どこにもかしこにも受けに行くのではなく、CBからWBに出せと指示を出して、並行のサポートでボールを受けて前進するなどメリハリのある動きがあるといいなと。
ロリスが全くと言っていい程ビルドアップに関われないのも考えものです。
今季のスパーズ対チェルシーの試合でケパが見せていた、3CBに対して3トップで嵌めにこられたときにバックパスを受けて逆サイドのWBにロブパスで逃げるプレーを思い出すと、そこまでやれとはもちろん言いませんが、今のスパーズのサッカーをするのであれば、せめて詰まったときにバックパスを受けてあげて前線に競りやすいロングボールを供給するくらいのことはしたいです。
しかし、課題はあるにせよ内容の伴う勝利で着実に順位を上げられたのはナイスな試合でした。
5. おわりに
監督交代からリーグ戦は3試合を経て、未消化分と15節のノリッジ戦を勝利すると楽観的な計算をすると4位に浮上することになるスパーズ。
正直すでにトップ3の牙城を崩すのはかなり厳しそうな雰囲気が漂っている中、その後に続くであろうライバルたちがやや苦戦気味のここ数戦。日程に恵まれたスパーズは、なんとしてもこの12月の過密日程で勝ち点3を取り続けたい!
おもしろくなってきたこの冬の順位争いを、ぜひえつしの"football analysis "と共に楽しんでください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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