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〜ゴール前のバスをいかに突破するか。どこを、どんな形を目指すのか〜 22/1/1 《プレミアリーグ21-22 第21節》 ワトフォード vs トッテナム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ21-22第21節、ワトフォード対トッテナムの試合をレビュー。
1. スタメン
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69290569/picture_pc_38d98ce4498f5a9531515033b8773a4f.png?width=1200)
・ワトフォード
バッハマン
キャスカート-トロースト=エコング-シエラルタ-マシナ
クツカ-ルーザ-シソコ-セマ
キング-デニス
46’ デニス⇄ジョアン・ペドロ
90’+1’ ルーザ⇄クレヴァリー
90’+10’ セマ⇄クチョ・エルナンデス
ワトフォードは、直近のウェストハム戦からフェメニア、クチョ・エルナンデス、トゥファンに代えてトロースト=エコング、ルーザ、セマを起用した〔4-4-2〕。
・スパーズ
ロリス
サンチェス-ダイアー-デイビス
エメルソン-スキップ-ホイビュア-レギロン
モウラ-ソン
ケイン
70’ スキップ⇄ウィンクス
83’ レギロン⇄ロ・チェルソ
90’+1’ モウラ⇄ヒル
スパーズは、直近のサウサンプトン戦からデレ・アリ、ウィンクスに代えてスキップ、モウラを起用した〔3-4-2-1〕。
長期離脱中のロメロはまだ戻ってこず、セセニョンとベルフワインも怪我で欠場。ロ・チェルソがベンチに復帰。
2. 振り返り
試合の構図としては、〔4-4-2〕でリトリートしてガッチリとゴール前の守備を固めるワトフォードに対し、スパーズが押し込んでそのブロックをなんとか崩そうというものに。
ワトフォードはSHが下がってスパーズのWBに対応し、5バックのような形になることも多く、頻繁にあった左サイドからエメルソンまで一気に飛ばすサイドチェンジのボールに対しては、左SBのマシナがエメルソンまで出て、CBのシエラルタとSBのマシナの間の空いたスペースを左SHのセマが降りて埋めていました。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69402095/picture_pc_b01a370d9c2c24c6c0e865e8d6da5232.png?width=1200)
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69402229/picture_pc_d5af53366be0f1bdca6219f6d3ed1940.png?width=1200)
ワトフォードのこの守備に対して、2トップと3CBで数的優位を作れているスパーズは、CBがボールを運んで前進していきたいところ。
しかし、2トップの一角のデニスがまずはボランチを使わせないポジショニングから、サンチェスにボールが出ると運びを防ぐために素早くスライドして妨害し、運ばれても自陣深くまでプレスバックするシーンもあったりと、献身的な走りを見せます。
そして前節のセインツ戦同様、スパーズのビルドアップにも問題がありました。
右はサンチェスがドリブルで運べる場面でも運ばずにエメルソンにボールを出し、セマのプレスバックが間に合ってしまうことが多く、ワトフォードのDFラインをずらすことができていませんでした。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69407306/picture_pc_9608f11f89da406afd0aa1e75022b460.png?width=1200)
選択肢として素早くエメルソンまで持っていってセマのプレスバックが間に合わない内にクロスを上げてしまうというのはありますが、エメルソンにボールが渡ったときに逆サイドのソンやレギロンは飛び込む準備ができておらず、クロスに合わせられる位置にいるのはケインとモウラの2枚のみ。
左サイドに関しては、デイビスはサンチェスとは違いある程度運ぶドリブルもできるのですが、彼が運んでもホイビュアのポジショニングが低く、菱形を作ってルーザを内側に引きつけることができていないためソンへのパスコースが開きません。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69408247/picture_pc_23b53b6ad05d68be221fcb7f013637ee.png?width=1200)
さらにこれまでの試合でも見せてきたホイビュアが列落ちしてデイビスの位置に入る形もうまくいきませんでした。
これまでこの形でビルドアップをしていたときには、ホイビュアが落ちてレギロンが大外の高い位置で相手のSBやWBをピン留めし、デイビスが同じく大外レーンの少し低い位置でフリーでボールを受けられるという構造になっていました。
しかし、この試合ではワトフォードの陣形が非常にコンパクトで、スペースもない中レギロンとデイビスの2人が大外に張る形にはできず、デイビスが大外でクツカより浅い位置、レギロンが内側でクツカとルーザの間に顔を出し、ソンがさらにその内側にいるような配置に。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69453606/picture_pc_cc2ca7a6c9b284a15bebe908dd3e4817.png?width=1200)
デイビスのポジショニングが低いことによってクツカが開かず、レギロンが使うライン間のスペースが狭くなっています。レギロン自身ライン間の狭いスペースでのプレーは得意ではないため、キャスカートに潰される場面もしばしば。
レギロンにSBのキャスカートが食いついたのならソンが内側からのランニングでその裏を狙ったりしたいところでしたが、そういったランニングは見られず。
ワトフォードの硬い守備をなかなかこじ開けられないスパーズ、83分にはレギロンに代えてロ・チェルソを入れ、〔4-2-3-1〕に変更。その後、詳しいことはわかりませんが、観客席にメディカルスタッフが走って行き、試合が少し中断となった後、90+1分にモウラに代えてヒルを投入して〔4-2-3-1〕にしてからの数分間ソンとデイビスのどちらも左の幅を取れていなかったことを修正し、ソンが左の大外を取る形に。
そして左でアイソレーションを作ったところからソンが仕掛け、FK獲得。自らそのFKを蹴り、そのすばらしいボールにサンチェスが合わせ、90+5分43秒にスパーズが先制します。
ギリギリでなんとか1点もぎ取ったスパーズが0-1で辛勝し、勝ち点3を獲得しました。
3. 総括、感想
スパーズからすると、最終的になんとか勝ち点3を取ることはできたものの、セインツ戦同様にゴール前に停められたバスをいかに突破していくか、という点で課題が見えた一戦となりました。
・サンチェスがドリブルで運べないことによって、相手のSHを引きつけ、エメルソンにボールが出たときに相手のSBを釣り出して"DFラインをずらす"ことができていない
・左右のCBがボールを持ったときのボランチ(特にホイビュア)のポジショニングが低く、菱形が作れずに相手のボランチを引きつけられていないため、SH-CH間のパスコースが開かない
・ホイビュアがデイビスの位置に降りてレギロンがライン間を取る形にしていたものの、レギロンにはそのタスクが合っているように思えなかった
・大外に張ったスパーズのWBや上述のレギロンが内に入る形で相手のSBがそこに食いついたときに、シャドーがチャンネルランして裏をつく動きが少ない
・チーム全体として、狙うスペースや形の共有が甘い
問題点としては上記のような部分があると感じました。
特に今回のように相手がブロックを組み中央を固めてきた場合は、ロングキックでサイドチェンジをしたときにシャドーは空いてくる相手のCB-SB間を狙う、そこをSHが埋めてくるのであればボランチが素早くサポートをしてそこからクロスをあげる、それに合わせられるよう逆サイドのシャドーやWBは飛び込める準備をしておく、など目指す形の共有ができているともっとうまく連動はできるかなと。
あそこまで重心低く守られるとどうしても崩すのは難しいものですが、試合を通してあまりにも外からの攻撃しかさせてもらえていなかったので、ボランチのポジショニングの改善(ボールサイドの相手のボランチの斜め前辺りに入る)によってSH-CH間を開かせてもう少し中からの攻撃も見せられたり、WBで幅を取った後にシャドーがもっとはっきりとニアゾーンを狙う意識を持って動き出しをスムーズにしたりできると変わってくると思いました。
5. おわりに
ゴール前のバスをいかに突破するか。今後同じような展開の試合は出てきそうです。今後のスパーズの成長に期待しましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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