7月某日
今日は珍しく武蔵野線に乗った。親戚のおばさんのお見舞いに行ってきた。
帰りの電車で、目の前に白い紙でくるんだ花束を抱えたおばあさんが立った。
もうすぐ夕方なのに、これからお墓参りにでも行くのかな?「どうぞ^^」と、席を譲った。
笑顔で何度もお礼を言われたので、そっと会釈して少し場所を移動した。
するとその時、ちょうど乗ってきた体育会系男子が私の肩をポンと叩いた。
「え~?大島君?? 久しぶり!」
「おう!中学卒業ぶり? てか斎藤!この電車に乗るって珍しくね?」
二人は並んで吊皮につかまった。
武蔵野線は都下から埼玉を通って千葉まで行くローカル線。
「うん・・・今行ってる高校は違う路線なんだけど、今日はちょっとね・・・」
ガタッッ!
急な電車の揺れで、吊皮を持ちながら体が大きく揺れる。
「大丈夫か?こっちにいとけよ」
と、大島君が出入口わきのバーのほうに移動してくれた。
あれ・・・大島君ってこんなに背が高かったっけ?
向かい合って見上げた大島君の顔は日に焼けて、もう少年というよりもキリっと結んだ唇が「オレはもういっぱしなんだぜ」
と言わんばかりの強い意志を感じさせた。
なんだかちょっと見上げただけで私の心臓は急にドキドキしだした。
中学時代の彼はいつも仲良し数人と放課後サッカーボールを追いかけていた。
女子と気楽に話すというよりは、男同士で無邪気に走り回ってる印象の少年だった。
誰にも話していなかったが、私はそんな大島君の姿を誰もいない教室から遠く目で追うことが何よりも好きだった。
お互い進んだ高校の話や、部活の話などをしながら降りる駅が近づいてくる。
こんなに大島君と笑いあえるなんて。もうちょっとこのままいたいな。。。
そんな私の気持ちにまるでお構いなし。大島君は流れる景色を見ながらポケットから無造作に携帯を取り出した。
「俺さ、最近アイフォンにしたんだけど、これって赤外線使えないのな~」
「あ!私も!ん・・・でも、いちいちメアド交換しなくても、電話番号さえあればショートメールにしちゃうから不便は特にないかも」
「だなw そうそう、斎藤何番?」
あまりにあっけなく聞かれたのですらすらと答えてしまう。
慣れた手つきで大島君はその番号を押す。
ポケットの中で私のマナーにしていた携帯が震えた。
「それ俺の番号!地元の集まりとかある時連絡してよ。」
「あ・・うん。みんなでまた会いたいね」
(ウソ!私のウソつき!私がもう一度会いたいのはこの大島君だ)
「来年はお互い受験だしな~・・・今のうちに馬鹿騒ぎとかしたいな。南商店街のお好み焼き屋っておまえ行ったことある?」
(え?いまおまえって呼んだ??)
「・・・え・・・ないけど、美味しいの?」
「俺もないんだよw 今度、クラス会の下調べで二人で行ってみっか?」
ってことがないかな~っと、高校時代に脳内トリップした一日でした♪
① 雪町子さん☆『うそ日記』
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