金門五三桐
松竹座に片岡愛之助が帰ってきた。しばらく大阪と歌舞伎から遠ざかりファンや贔屓を落胆させていたが、猿之助四十八撰の「金門五三桐」の通し狂言で主演。昼の部は「土屋主税」の大高源吾「河庄」太兵衛と昼夜出ずっぱりに近い奮闘振り。昨年のお正月公演の玉三郎&壱太郎の二人舞踊公演とは異なる活気だ。山城屋(坂田藤十郎)の米寿を祝う成駒家と山城屋の舞踊もみもの。山城屋が元気に舞う姿や夜の部に出演する澤瀉屋の寿猿の姿を観ると人生100年時代を感じずにはいられない。寿猿は今年初夏には確かめる89才を迎えるはず。
それはさておき「金門五三桐」歌舞伎あるあるで実は…実は…のどんでん返しが続く作品だが、今回はかなり台本に手を入れてコンパクトにしたらしい。しかしそれでも少し長く感じるのは私自身通し狂言の長さについていなくなっているのか?衣装は猿翁が猿之助時代に公演した衣装を使っているので澤瀉屋らしい華やかさに溢れ、笑也の立役と言う珍しい配役も好ましい。笑也の美男子ぶりにキュンとする方々も多いとか。そしてチーム澤瀉が全面的にサポートして猿之助四十八撰の作品を愛之助が主役として八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍。チーム澤瀉の面々の活躍ぶりは一人一人に言及しないが本当に澤瀉屋の心をしっかりとた光として客席に放つ姿はとても嬉しい。そんな「金門五三桐」でもれうけたわまる所によると死を覚悟した宋蘇卿が白鷹の羽に自らの血で遺言を書き残す舞踊がとても体力を使うのだとか。観ている方は愛之助のキレキレの舞踊と羽に遺言を書かれまいと逃げ惑う扇雀白鷹の舞踊シーンは白鷹の衣装の美しさと宋蘇卿の豪華な衣装もあいまって見応えがある。出色は吉太朗の花魁である。関西で歌舞伎を観てきたファンは子供の頃から吉太朗を知ってる。そしてその成長も。まさに大輪の花の如くのあでやかさに目を疑う程である。今回は上方本格デビューの虎ノ介が勉強を重ねている。台詞は口跡良くしっかりしているのだが身体の使い方が今ひとつ良くないせいか役の心が響いて来ない。恋人役は従兄弟の壱太郎。見目麗しいとは壱太郎の事を言うのであろうと思うほど美しい。しかし昼夜どの役も同じ様に見えるのが損。役の性根の演じ分けが出来ると立女形としての地位を確立出来るのに。従兄弟同士のプリンス達の成長と精進を待ちたい。
二度の見物で感じるのは進化する澤瀉屋面々とそれに応える愛之助の気力充実した芝居である。愛之助は歌舞伎が一番しっくり来ると確認出来た初春の松竹座。段一郎も今月は松竹座段一郎
それにしても上方所縁の役者で正月の幕開けが叶った事は大阪に住む歌舞伎ファンとしては嬉しい限り。
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