南座顔見世観劇記②
戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
浪花の次郎作実は石川五右衛門 梅玉
禿たより 梅丸改め莟玉
吾妻の与四郎実は 真柴久吉時蔵
時代情緒に溢れた見どころの多い人気舞踊。
菜の花畑に満開の桜が咲いた京の紫野に、浪花の次郎作と吾妻の与四郎が担ぐ駕籠が島原から戻って来ます。二人がひと休みするところ互いに上方と江戸のお国自慢を始めます。やがて駕籠の中から禿を呼び出し、京、大坂、江戸それぞれの廓話を語っていきます。そのうち、次郎作と与四郎の懐から連判状と香炉が落ちて…。
歌舞伎美人(2017/5)より抜粋
今回は花道の登場は無く駕籠は舞台板付き。幕が開くと2人の駕籠かき。大御所二人の舞踊も女方の時蔵さんの立役が観られるのも珍しい。
まるるの愛称でファンに親しまれている梅丸さんが禿役で登場、劇中で梅玉さんのご養子となられ莟玉を襲名のご挨拶。ほのぼのとしたお祝いに心温まる舞踊劇できっとまるるを観る度にこの日の事を思いだすのだろう。
まるるの禿の愛らしさを観ると女方も捨てがたいが梅玉さんをいつか襲名されるから立役が増えていくのだろうとこちらも楽しみである。
祇園祭礼信仰記
第三、金閣寺(きんかくじ)
松永大膳 鴈治郎
此下東吉後に真柴久吉 扇雀
雪姫 壱太郎
大膳弟鬼藤太 亀鶴
十河軍平実は佐藤正清 愛之助
狩野之介直信 芝翫
慶寿院尼 藤十郎
三姫の一つと言われる雪姫を壱太郎君。今回はこれが楽しみの一つ。ハラハラと散り舞う桜を足でかき寄せ足先でねずみの絵を描く雪姫を見事に演じて壱ちゃんはまだまだ姫が似合う。もっと赤姫を演じて欲しいと願わずにいられなかった。
特筆すべきは慶寿院尼で山城屋さんがお声は小さいもののお元気な姿を見せて下さった事。
大、大、大好きな亀鶴さんが鬼籐太。可愛い声色でえっ、と思ったのだが、鬼籐太は赤っ面ながら前髪(年若い役)ちゃんと愛らしさも醸し出す。憎いね。
松竹さん、亀鶴さんにもっとよいお役をお願いしたい。たっぷりの色悪希望。
仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
祇園一力茶屋の場
大星由良之助 仁左衛門
遊女お軽 孝太郎
富森助右衛門 隼人
矢間重太郎 橋之助
大星力弥 千之助
仲居おつる 梅花
鷺坂伴内 松之助
斧九太夫 由次郎
赤垣源蔵 進之介
寺岡平右衛門 芝翫
この季節で南座ならこの場面でしょう。と言う演目。
にざさまは非の打ち所のない由良之助。
様々な感想や劇評があるだろう。私的には片岡進之介、進ちゃんがちゃんと三侍の一人赤垣源蔵としてちゃんと台詞をいっぱいしゃべった事。何十年ぶりに観ただろう。進ちゃんの「ご注進」以外の台詞をきいたのは。どうぞご精進されて松嶋屋の一角担って欲しい。台詞の言い回しもまぁ合格点。頑張って舞台に立ち続けて欲しいと願うばかり。
スーパー歌舞伎で2カ月過ごした隼人くん。超若手は古典に出ないと何やかやと世間の批判を浴びやすい。はーちゃんはそんな事を見事にくつがえしてくれた。スーパー歌舞伎で培った心情の演技力に地道な努力で全てのお役をしっかり演じていたのが印象的。