ETSグループ 2024年9月期 決算報告 加藤社長インタビュー
100年以上に渡り日本の電力インフラを支えてきたETSグループは、2024年10月に完全持株会社へ移行し東証スタンダード市場に再上場を果たしました。2024年9月期決算では、4期連続の増益を達成するなど業績も好調です。代表取締役社長の加藤慎章(のりあき)社長に、2024年9月期の業績報告などについて伺いました。
1. 2024年9月期の業績報告と過去4年間の成長
Q: 2024年9月期の業績が営業利益、当期純利益ともに大幅増益となりました。また加藤社長が就任された2020年以降の4年間で4期連続の増益を達成するなど飛躍的な業績回復を実現されました。その要因について教えて頂けますか?
加藤社長:おかげさまで2024年9月期は非常に良い結果を出すことができました。売上高は81億47百万円と前年比0.9%増でしたが、営業利益が5億34百万円で前年比89.9%増、当期純利益は3億25百万円で前年比327.8%増と、非常に大きな伸びを見せました。
私が就任した2020年時点の数字と比較すると、4年間での成長はさらに顕著です。
売上高:57.0億円(2020年) → 81.5億円(2024年) +42.9%
営業利益:1.48億円(2020年) → 5.34億円(2024年) 3.6倍
当期純利益:1.51億円(2020年) → 3.25億円(2024年) 2.2倍
EBITDA:1.90億円(2020年) → 7.50億円(2024年) 4.0倍
これだけの大きな成果を達成できたのは、全社的な組織人材改革と戦略的な投資が功を奏した結果です。
Q: 素晴らしい4年間成果のうち、特に注目すべき改善ポイントは何でしょうか?
加藤社長:数字だけを見ると、利益率の向上が特に際立っています。2020年の営業利益率は約1.9%でしたが2024年には6.5%にまで改善しました。
同時にROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)が大幅に向上しています。2020年から2024年までの間で5.0%から11.4%(ROE)、4.5%から7.5%(ROIC)とそれぞれ向上しています。
Q:営業利益率やROE、ROICが大幅に向上した理由について教えてください。
加藤社長:主に戦略的な投資と高付加価値プロジェクトへの選択と集中、それから業務生産性の向上の改善努力の成果です。既存の事業ポートフォリオを見直し、不採算部門の整理や新たな成長分野への投資を行い、資本効率を高めるための徹底したコスト管理と、収益性の高い事業へのリソース配分を重視しました。さらに、社員一人ひとりに意識改革を根付かせ、全社的に価値創出に焦点を当てた組織文化を根付かせたことも大きな要因です。
戦略的投資(M&Aによる収益基盤の強化)
2021年から2023年にかけて4件のM&Aを実施しました。具体的には、同業他社4社をグループに加え、グループ全体の収益基盤を強化し高付加価値プロジェクトへの選択と集中
低収益の案件を見直し、高付加価値のプロジェクトに注力しました。東北地区での鉄塔新設工事や再生可能エネルギー関連など、需要が高く利益率の良い分野にリソースを再配分しました。業務生産性の向上(コスト管理・DX化による効率化)
工事進捗の管理やコスト削減を徹底し業務の効率化を図りました。DXを推進し、脱ハンコ・ペーパーレスを徹底的に進め、社員が本来の業務に注力できる環境を整えました。
Q: 電力事業や建物管理事業の成長も目覚ましいですね。それぞれの事業がどのように成長したのか教えてください。
加藤社長:特に電力事業と建物管理事業の成長が、全体の業績改善を支えています。
電力事業は、売上高が38億円(2020年)から 50.5億円(2024年)と32.9%成長しています。広域連系送電網の整備や老朽化設備更新需要が寄与しています。2024年には宮城丸森幹線新設工事など大型案件の進捗が大きな成果です。更に特記すべきは、2024年9月末時点で受注残が104億円超あることです。これは当社の年間売上の1.2倍に相当する数量になります。
建物管理事業は、売上高が8億円(2020年)から16.2億円(2024年)と102.5%成長しています。要因は、建物管理の新規顧客の獲得と付帯工事、付加価値サービスの提供により顧客満足度を高めたことが要因です。
2. 2025年9月期の業績と配当予想について
Q:2025年度9月期の業績予想を教えて下さい。
加藤社長:2025年度9月期の当社グループの目標は、以下の通りです。
まず、売上高は 10,879百万円 を予想しており、前年と比較して約33.5%の増加を見込んでいます。この成長は主に 電力事業 によるもので、広域連系送電網の整備や風力発電関連の需要増加が牽引役となる見込みです。再エネ分野は脱炭素化社会に貢献する重要事業として引き続き強化します。営業利益は 464百万円、当期純利益は 295百万円 を見込んでおります。2024年度には一部の高利益率工事が完了した影響がありましたが、今後は安定的な利益体質の構築に努め、長期的な利益成長を目指します。
Q: 事業セグメントごとのプロジェクトをを教えてください。
加藤社長:それぞれの事業で以下のような施策を行いました。電力事業は、国家的プロジェクトである宮城丸森幹線50万ボルト送電線の設置を確実に遂行します。老朽化鉄塔の更新工事も受注する予定です。設備事業は加速するデータセンター需要にも対応するための準備を進めています。建物管理事業は、安定した収益源を確保するため、不動産開発事業への参入拡大を推進します。
Q:2025年度9月期の配当を教えて下さい。
加藤社長:2025年度9月期も順調に業績の成長が見込めることから、2024年9月期の8円から2円の増配の10円を予想しております。2023年9月期で5円であったことから2期連続の増配となります。
加えて、2024年10月1日に開示した株主優待も復活しております。1年以上当社の株式を保有してくれた株主の皆様(初年度は2025年3月末時点の保有者)を対象に500株以上の保有者に5,000円のアマゾンカード、1,000株以上の保有株主に10,000円のアマゾンカードを贈呈するものです。更に2年以上で1.2倍、3年以上の保有で1.5倍を贈呈します。
3. 純粋持株会社化と新たなスタート
Q: 純粋持株会社化への移行が業績改善にどのような影響を与えたのでしょうか?
加藤社長:2024年10月に純粋持株会社としてETSグループを設立しました。これにより次のような変化が期待されます。
意思決定の迅速化
各事業部門が独立性を持ちながらも、グループ全体の方針に沿って柔軟にかつ迅速に意思決定を行えるようになりました。グループ間シナジーの強化
電力事業、設備事業、建物管理事業の間で情報共有やリソース配分が効率化され、シナジーを発揮しやくすなりました。新規事業投資への柔軟性
再生可能エネルギー分野や蓄電池関連の新規事業への投資をスピーディーに行える体制が整いました。人材育成プログラムの強化
若手社員向けのリーダーシップ研修をグループ横断的に実施し、次世代リーダーの育成を行いやすくなりました。
4. 人材育成と社員エンゲージメントの向上
Q: 業績改善には社員の活躍が不可欠だと思いますが、社員の幸福やエンゲージメント向上に向けてどのような取り組みをされていますか?
加藤社長:我々の成長戦略の中核にあるのが 人的資本への投資 です。社員一人ひとりが自らの可能性を最大限に発揮できる環境を整えることを最優先に考えています。具体的には、資格取得支援やリーダーシップ研修、働き方改革の推進など、社員の幸福度向上に向けた取り組みを強化していきます。
また、テレワークを含む柔軟な働き方を拡充し、子育てや介護を支援する環境を整えました。女性管理職比率を2024年には10%に引き上げることも目指しています。
5. 読者へのメッセージ
Q: 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
加藤社長:ETSグループ/ETSホールディングスは、「この街に明かりを灯すのは私たち」という企業存在価値・理念を胸に、地域社会やお客様そして従業員と共に未来を築いていきます。変革と挑戦を続け、持続可能な社会の実現に向けて、これからも信頼されるパートナーであり続けたいと考えています。これからもご支援とご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
加藤慎章(かとうのりあき)/国内電力会社、外資系企業を数社経て、外資系エネルギー会社の日本法人CEOに就任。2020年、株式会社ETSホールディングスの代表取締役社長に就任。その後、2024年10月株式会社ETSグループ代表取締役社長に就任。同時期に東証スタンダード市場へ上場を果たす。日本政府国費留学としてバージニア工科大学、上海交通大学にて就学。横浜国立大学大学院修了(工学修士)。筑波大学大学院修了(経営学修士)。一級建築士、技術士(衛生工学)の資格を保有。公益社団法人経済同友会の幹事も務める。