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馬欧比較 KLもいずれ地盤沈下?

 オランダのアムステルダムの運河観光船に乗っていたとき、案内からアムステルダムは地盤沈下が激しいと言っていました。建物が傾いている例を取り上げていましたが、確かに街を歩くと不自然に前に押し出したり、窓が下に沈んでいたりする建物をよく見ました。

 オランダという国は、ご存じのとおり、海よりも低い土地にある国です。

 アムステルダムはもともと沼地や湿地帯になっており、その土地は非常に軟らかい土壌なのです。水分が多い泥炭地も多く、どの都市も地下水をくみ上げていますが、アムステルダムではこの地下水を多く利用することで、泥炭地の水分が失われて地盤沈下になるのだそうです。

 そのうえ、古い建物は、現代のような地下の基礎工事がなく、土地に圧力をかけているため、これも地盤沈下を加速させているといいます。確かに街の多くは17世紀からの建物で、地下の基礎工事はしていないでしょう。そのため、どこもかしこも変に傾いている建物が多いのです。

傾く建物
沈んだ窓?

 オランダ政府は地下水を管理することや建物の基礎補強をすることで、対策を講じているようですが、根本的な対策にはなっていないようです。そもそもオランダは土地が低いので、水が入り込みやすい土地。このため、今後も地盤沈下は免れないのかと思います。また、昨今の気候変動で地球全体の水位が上がるに伴い、オランダそのものが沈む可能性が高く、このため、環境対策にも積極的に取り組んでいるのもそのためなのです。

前にせり出した建物

 さて、転じてアジアを見ますと、やはり地盤沈下で悩んでいる都市はいくつもあります。一番有名なのは、インドネシアのジャカルタでしょう。奇しくもオランダの植民地の中心地でしたが、2050年までには地盤沈下で95%が沈むそうです。特に2000年以降は沈下が激しく、結局、もうどうすることもできなくなったため、カリマンタン島のヌサンタラ(この名称もほかになかったのかと個人的には思います)という街に首都移転を始めてしまったのです。

 また、バンコクも地盤沈下が激しい。1970年代以降に徐々に沈んでいるようで、多くの建物を建てた結果なのかと思います。今は年間1~2センチは沈んでいるようで、ここももしかすると首都を移転しないといけない時代が来るのかと思います。

 ベトナムのホーチミンも、国際協力機構(JICA)によると、年に2~3センチは沈んでいるのだそうです。バンコクよりも深刻で、世界でも最速で沈んでいく街とも指摘されています。この街はベトナム南部の中心地でもあるため、これだけ速いとこれもどこかに移転していかないといけない。

 いずれの街も地下水を過剰に汲み上げた結果なのですが、これは水が必要な人口が増えているため。となると人口問題が環境を悪化させているということなのかもしれません。

 一方で、マレーシアでは地盤沈下についてはほとんど聞きません。しかし、近年、多くの高層ビルを建て続けており、これは地盤沈下を引き起こす要因になるのではないでしょうか。もちろん基礎工事はしっかりとしているのでしょうが、10年前と比べても圧倒的に高層ビルが増え、あれだけ重い建物が街の中心部に乱立すれば、素人考えですが、自ずと土地は沈んでいくのではないか。

 その兆しがもしかすると、道路に穴がよく開くことと無関係ではないのではないかともふと思います。クアラルンプール中心部では今年8月に道路に突然陥没して穴があき、そこをたまたま歩いていたインド人女性が落ちてしまいました。いまだに見つかっていませんが、地下は6メートルもの穴が開いていたといいます。そもそも排水溝の整備がままならないのも原因かと思いますが、どこか地盤沈下ともつながっているような気がするのです。その後も各地で陥没穴が見つかっており、クアラルンプールの道を歩くのは危険なのです。

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伊藤充臣
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