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トイレの使い方を考える

 今回は時折見つけるこのトイレの表示を考えます。

 この表示について別に解説するまでもないのですが、少し説明します。

 洋式便器がマレーシアではかなり普及していますが、実は洋式トイレの使い方がわからない人がいるのです。モールなどでトイレに行くと、すべてのトイレが洋式であることはほとんどなく、トイレの個室のうち1つか2つしかないのが実情です。これは推測ですが、マレーシアではイスラーム教徒が祈りの前に水で足や手を清めないといけなく、トイレ近くに礼拝室があることから和式トイレの個室ですることが多いことが関連しているのかもしれません。洋式トイレだと洗うのがなかなか難しい。

 日本人であれば、洋式は便座の上に腰掛けて座ってするものですが、わからない人は左のように便器の上にまたがって、あの幅の狭い便器の縁のうえに足を置いてするのです。プラスチックの便座の上にまたがるのかはわかりませんが、そうでないとするとかなり不安定で曲芸をしているような感じなのですが。。。

 要は洋式トイレを和式型というか、ぼっとん便所というか床に便器がはめ込まれている(?)便器の立体版と考えている人がいるようなのです。

 僕が2006年ごろにマレーシアに来た当時はあまりこの表示は見たことがありません。この表示はどうもここ5年ぐらいあちこちで見られ始めた気がします。統計がないのでなんとも言えませんが。
 
 僕はこういった洋式トイレにまたがってする人というのはインド人かミャンマー人が多いのだろうと思っていました。彼らは出稼ぎでマレーシアに来ることが多く、その数はおそらくここ10年でだいぶ増えている感じがするからです。

 インドのトイレの話を少しします。佐藤大介『13億人のトイレ』(角川新書)に詳しいのですが、インドでトイレは基本的に各家庭にはありません。トイレがない家というのは何だか日本人から見ると不思議なのですが、インド人の多くはトイレは外でするものであって、朝起きるとまずは外に行って排泄をします。インドに行った方だとわかると思うのですが、どこもかしこも不衛生。そこで政府はトイレ設置プロジェクトを始めたのですが、今もってどうもうまくいっていない気がする。そのインド人がマレーシアに出稼ぎに来るのです。

 10年ぐらい前にペラ州イポーの5つ星ホテルに行ったときのこと。庭のあたりが何やら臭かった記憶が今でもあるのですが、どうも詳細を聞いていくとインド人労働者がいて排泄をトイレではなくて外でしてしまう人がいるので困るという話を聞いたことがあります。そのため、トイレで排泄をすることから「教育」をしていくのだとか。それでもどうもトイレでするのが難しいようなのです。はて。。。

 ミャンマーではトイレは普及していますが、やはり和式洋式の両方があります。多くが仏教徒である彼らはそのあたりはきっちりと子供の時からしつけがあったのか、用はトイレでする人が多い。歴史的にインドの中に組み込まれていましたが、そのあたりはインドとは異なるようです。ただ、貧しいい田舎から来たミャンマー人はもしかすると和式トイレしか知らない人もいるのかもしれません。

 さて、マレーシアの話。実はマレーシアでも1950年代までトイレはあまり普及していませんでした。19世紀の記録を見ると、たいがい川沿いで用を足していたのです。アメリカのキリスト教団体が1930年代にマラッカなどに入ってトイレの普及プロジェクトをしたのですが、これは鉤虫が体内に生息して体力を落としていることが判明して開始されました。その後にトイレが徐々に普及し、独立後にはおそらくだいぶ広まって現在に至っているのですが、それでもそのトイレというのは和式だったと思います。洋式便器は日本では明治時代に導入されたようですが、マレーシアではおそらく戦後もだいぶ経ってからかと思われます。

 さて、本題に戻りますが、この写真の表示は実は今働いている会社内にもあります。外国人向けかと思っていたこの表示はどうもマレー人向けらしい。

 いつだったか会社のトイレに行き、洋式トイレに入ろうと思ったら、個室入口の床に大量の便がありました。すでに乾燥していたので数時間は経ったものとみられますが、これを見たときにはじめて「洋式でできなかったからこうなったのだろう」と思ったのです。便器が目の前にあるのに床でする。和式トイレではないと、うちの会社の人でもできない人が多くいるのがわかりました。

 確かに従業員のほとんどは和式トイレに入る傾向が多い。トイレの個室のうち洋式便器は1つだけなのですが、僕だったらすかさず洋式トイレに入ります。しかし、多くは和式トイレにすっと入っていくのです。僕がトイレを利用する場合、和式トイレでするのは少し面倒だと思うのですが、おそらく洋式トイレに対するマレー人も同じ感覚なのかなと思います。

 しかし、今回写真の表示は実は華人のレストランで撮ったのですが、そこには多くのミャンマー人が働いています。従業員なので表示が必要なのかどうかわかりませんが、客向けの表示な気がする。ということは華人も同じようなことをするのかとの疑問も今ふと思ったのですが、そこはインド人も来るのでインド人向けの表示か。

 写真上記の文字はマレー語、英語、中国語で「終わったあとは流してください」という説明で、この図の表示の説明ではありません。言葉にしなくてもわかる表示ですが、民族に関係なく表示をしているということなのでしょうか。いずれにしても、こういった人たちがまだまだマレーシアには多いということなのです。ちなみに、表示左の方法で便器を使っていると便器が完全に割れてしまうそうです。

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伊藤充臣
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