(8) ビジネスマンの英語勉強法
先日亡くなられた三輪裕範さんの著書。亡くなられたことがX上で流れて、急いで買って読みました。
三輪さんは英語に関する書籍を複数出版されていました。『日本人が必ず間違える英単語100』や『今度こそすらすら読めるようになる「ニュース英語」の読み方』などがあります。前者の「英単語100」は盲点となる単語が並べられて非常に勉強になった。このほか、さまざまな英語の本を読んでいらっしゃったためか『自己啓発の名著30』というのも出されています。
さて、『ビジネスマンの英語勉強法』ですが、タイトルどおりの本です。
昨今は英会話の重点を置いた教育が盛んですが、その成果は上がっていないと喝破。それだけでなく、英会話を中心にした教育で、英文読解力や文法力まで下げてしまったと嘆いています。
そこで、ビジネスマンにとって英語の中でも重要なのがリーディング。読んで理解できないことが聞いて理解できるわけがないとも話し、どうしたらいいのかを開示されています。
英語の総合力はリーディング力によって規定されるとし、これをしっかりと勉強すれば、ライティング、リスニング、スピーキングすべての能力向上につながると説明しています。良質のアウトプットをするにはそのアウトプットを上回る何倍ものインプットが必要で、素材のいい英文を読んでいく必要があるとしています。
著者は特に『ニューヨーク・タイムズ』や『タイム』といった高度な英文を読んでいく必要性を解いていますが、そのためには文法力を身につけるよう説明。「文法の勉強を逃げる人に英語ペラペラの未来はない」と述べています。
英文法のツボは4つあり、これを最低限クリアにすることで、英文法の力は飛躍的に上がると解説されています。
① 「何が・どうする・何を」を押さえる。
② 動詞を押さえる。
③ 関係詞を押さえる。
④ 分詞を押さえる。
この4つを細かく説明され、一読の価値はあります。
そして第3章では語彙力を強化する方法。本当にレベルを上げるには1万語の単語を覚える必要がありますとし、多読をまず推奨。自然に単語を覚えていくためにも英文を多読・乱読することが大切と松本道弘さんの言葉を引用されて説いています。
語彙力を上げるにはこのほか、辞書を読むこと。これは確かに僕も経験があって、辞書を読めば読むほど実力は上がっていくことを実感しています。語学力は辞書を引く回数に比例して伸びるものとこちらは斎藤兆史さんの言葉を挙げられ、精読・速読で出てきた単語をどんどん調べていく必要がある。
また、自分で作る単語ノートやコロケーションで覚えることも勧め、さらに中級者や上級者向けの勉強法も解説されていて興味深い。こういった方法はオーソドックスであるかもしれませんが、結局本当に実力を得ようと思ったら、こういった方法が妥当なのかもしれないなあと思いました。
さらに、英語のリーディングを向上させるには、英語の3つの「クセ」を知っておく必要もあると強調。それは
① 英語は名詞や名詞構文を偏愛する。
② 英語は同じ単語や表現の繰り返しを嫌う。
ー言い換えを好む
ー同義語、類義語の発達
③ 英語の文章はあとから欠けた情報を追加していく。
この3つも豊富な文例を挙げながら説明され、読解に必要な知識を教授されています。
最後の第5章はアメリカ歴史文化の常識を取り上げ、文法力と語彙力だけではまだ不十分で、アメリカでの常識も押さえておく必要があると説明。これは確かに日本語を勉強するのに日本の常識がわかっていなければ、言葉の意味もわからなくなるわけで、確かにこれは的を得た議論なのですが、アジアで英語で生活する場合はやはり現地の常識に精通する必要があるでしょう。僕は毎日、マレーシアの新聞を読みますが、この常識がなければ、なかなか読み進めることができないのと同じです。
この本は2018年に出版されたもので、AIがこれだけ進化する前に書かれた本。AIを使って勉強するとさらに効果的だと僕は思いますが、そのあたりを三輪さんはどう感じられていたのか。そこは知りたかったところですが、いずれにしても、巷でさまざまな勉強法がある中でかなりオーソドックスな方法がやはり正攻法なのかもしれません。
読解をしっかりやっていけば、リスニングもスピーキングもライティングもうまくいく。基礎部分を読解で固めるというイメージだと思います。この基礎は確かに大事であることは否定できませんが、それでもリスニングやスピーキングもそれぞれ練習はある程度はしないとなかなか伸びないのも事実。そのあたりをもう少し詳しく話していただきたかったのですが。。。
さまざまな書籍を発行していただき、ありがとうございました。御冥福をお祈りいたします。