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マレーシアにも貸金庫はあります

 日本の三菱UFJ銀行で行員が顧客が借りていた貸金庫から現金や貴金属など高価なものを盗んで逮捕される事件がありました。行員がこういった犯罪を犯すとは信じられないですが、まあ、もう世も末なのでしょう。大手銀行でこのお粗末さなので、日本も貸金庫サービスはあまり信頼できないのかもしれません。

 さて、マレーシアにもあまり知られてませんが、銀行に貸金庫があります。貸金庫は英語でsafe-deposit boxといいます。

 最大手銀行のメイバンクは全国で10店舗のみで貸金庫業務を行っています。どの支店も大きさによって賃貸料が異なります。本店では年間300~700リンギ。他の支店では最小の600立法インチ(単位はそのままサイトからのを表記します)までだと年間250リンギと安い。鍵のデポジット料は最初に350リンギが加算されるのみ。

 次にCIMBですが、こちらもすべての支店ではなく、全国の31支店のみで貸金庫業務をしています。金額はやはり大きさによって異なり、最も安いのが年間300リンギ、2000立法インチ以上だと同480リンギ。

 ホンリョンバンクも42支店のみでサービスを提供。3タイプの貸金庫の大きさを提供しており、年間400~600リンギです。

 ほかの銀行でもサービスは行っていますが、どこも支店は制限されています。貸金庫専門の店もあったりしますが、年間使用料などはほぼ似たり寄ったりです。

 銀行の中で最先端の貸金庫を提供しているのは、アフィン・バンク。国内銀行で唯一全自動化された貸金庫で、ロボットシステムを導入。2023年にはマレーシア・ナショナル・ビジネス賞の金融サービス賞を受賞しています。

 同行ではRFIDカード、生体指紋認証、PINパスワード、ロッカーキーという4つの多層セキュリティを使って管理。ロボットによって監視され、顧客の身元が確認できた時点でロボットがボックスを取り出すのだそうです。極力人が介在させないようにしてセキュリティーを厳重にしているとのこと。こちらも全支店ではなく、一部支店にのみ導入され、自動化サービスは広げていくようてす。

 ただ、貸金庫も問題がないわけではありません。だいぶ昔になりますが、2012年にユナイテッド・オーバーシーズ銀行のクアラルンプール中心部にある支店で貸金庫の部屋に泥棒が押し入る事件がありました。このときは総額150万リンギ相当の現金や貴金属などがもっていかれたそうです。

 うち華人とみられる夫婦が借りていた貸金庫からは85万リンギ相当のダイアモンドや純金、瑪瑙など総額100万リンギ近くが盗まれてしまいました。その後に夫婦は銀行を訴えましたが、銀行側は

貸金庫の提供は有料サービスの一環であり、貸金庫の内容物の紛失や損害について、原告らに対していかなる責任も負わない。

と冷たくあしらい、損害金2500リンギを支払っただけでした。その後、このケースはどうなったか報道はありませんが、夫婦は泣き寝入りしてしまったのかもしれません。

 貸金庫は、日本の事件でもみるように、本当に安全なのかどうかは疑問です。マレーシアでの銀行の多くは人が介在するため、どうしてもマニュアル的な手続きが必要になってきます。いくら物理的な鍵で管理するといっても、今回の三菱UFJ銀行のように合鍵をそれも管理職クラスによって無断で使用されてはどうしようもありません。
 
 また、自動化されたとはいえ、システム上いくらでも操作される可能性があるので、これとて全幅の信頼を寄せら得るのかというとそれもちょっとという感じでしょう。 

 この三菱UFJ銀行の事件もマレーシアでは大きく報道されました。この事件は日本だけでなく、マレーシアにも同様の事件が発生しないよう対策を打ち出しているに違いありません。それだけ深刻な事件だったのです。

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伊藤充臣
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