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現地人に見られること

 海外在住歴を20年を越えましたが、もはやどこに行っても日本人とはみられず、現地語で声をかけられます。これはどうしてなんでしょうか。

 先日、クアラルンプールの早朝のバスターミナルでスーパーに入ろうとしたところ、華語で「まだ開いていないよ」と華人男性に伝えられました。こちらもいつも通り華語で返したのですが、そこでふと思ったのです。

「なぜ現地語で声をかけられるのだろう」

と。

 実はこれまでどこに行っても昔から現地語で声をかけられます。インドネシアやタイ、中国、ロシアでも道を現地語で聞かれたし、パリやロンドンでもそうでした。数年前にアンコールワットのあるカンボジアのシェムリアップの街の中央市場を歩いていたときは少し驚きました。

 道沿いに3店舗が並んでいたのですが、1軒目は中国語で「ニーハオ」と声をかけられ、2軒目では韓国語で「アンニョンハシムニカー」、そして3軒目ではタイ語で「サワディーカー」だったのです。

 結局自分は何人にみられているのでしょうか。少なくとも日本人にはまったくみられず、どこに行っても日本語や英語でも声をかけられることはありません。

 確かに海外に長く住むと日本人独特の雰囲気はなくなるのでしょう。服装や歩き方、話し方などが現地化し、環境にも流されているため、日本人の「アク」が取れるのかと思います。海外ではもはや日本人ステータスはなくなっているので、もはやふんぞり返ることはできません。いまだに勘違いしている海外に来る日本人は多いのですが、そういった人たちとは一線を画すためには日本人雰囲気が出ていないのは誠に結構なことです。

 また、雰囲気だけでなく、現地に溶け込んでしまう性格もそうさせているのかもしれません。

 ただ、どこの国の出身かということを結構聞かれるので、こちらもあえて日本人とは言わないことにしています。僕が海外に来た頃は日本人というだけで、価格を吊り上げたり、いいことはなかったので、その名残(?)で日本人とは宣言しないことにしているのです。ただ、現在は二重価格があったりするわけではないので、別段日本人と伝えてもいいのですが、昔からの習慣からか言わないようにしているのです。

 話をした後におそらく現地の人から見ると、僕の話す言語のアクセントでどこの出身かを想像するのかと思います。少なくとも日本人は「英語もできない」と強い印象があるので、外国語を話す僕が日本人だとも想像もつかないようです。

 先日はタクシーの中でマレー語で話していたら「サラワク州出身か」と聞かれました。確かにインドネシア語訛のマレー語なので、そういうふうに思われるのでしょう。サラワク州ではインドネシア語訛のマレー語をよく聞きます。シンガポールのホーカーでは北京語を話した時に「上海人ですか」とも聞かれてことがあり、大陸の人に間違えられたのは少しショックでした。

 今住んでいる東海岸でも同様です。ホーカーでは基本的に華語かタイ語なので、いずれの言語でも対応していると、この前もおばちゃんが「どこからの人?」ときかれました。このときは「クアラルンプールだ」と言ってお茶を濁しておきましたが、まあ、信じなかったでしょうね、僕の華語の発音から。友人とレストランに行った時に友人は僕が日本人であることを店員に伝えると「本当に日本人なのか」と華語できかれました。

 最近は「この人には言っても大丈夫かな」と思ったときは「日本人」と答えますが、それ以外の場合はカンボジアのバッタンバン生まれやインドネシアのカリマンタン島のバンジャルマシンの出身だいうことにしています。この2つの地域は人々にはあまり知られていないところで、どういったところかも想像ができないので、あえてそういうふうにしています。特に中国人が相手で、こちらが中国語ができると知られると早口で遠慮なくまくし立てられるので、結構面倒なのです。

 一方で、日本に帰ったときはこれまた厄介なのです。海外で日本人と見られないため、日本でも日本人としてみてもらえない。僕は東京出身ですが、いつも戻ったときに地元のスーパーに行くと「日本語お上手ですねえ」とよく言われます。日本の地方に行ったときも同じで、帰国したときは必ず1回はこの「お上手ですねえ」と言われるのは少し悲しい。銀行などでも僕の身分証はパスポートだけなので、それを見せてもあまり信用してもらえず。どこか「あんた本当に日本人なの?」と疑われている目で見られるのを感じるのです。あれは何なのでしょうか。

 まあ、これまで「東京出身のアジア人」という意識のほうが強く生きてきたので、別段上記のようなことがあってもストレスにはなりません。現地人やアジア人としてみられたほうがはるかにいいことはあります。今後も海外で生きていくつもりでいるので、まあ、日本人としてみられないほうがいいのかもしれません。

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