マレーシアのEPF 外国人も積立義務へ
10月にマレーシア政府は2025年度予算案を発表しました。この中でマレーシアの年金である従業員積立基金(EPF)への積立義務が外国人就業者にも適用されることを明らかにしています。
マレーシアには退職金という概念がありません。日本とは違って長年勤めていた会社を途中退職、または定年退職でやめたとしても退職金はないのです。このため、EPFという年金も含めた積立をすることで、退職金の代わりとするということなのです。
EPF自体の制度は1957年の独立以前からありますが、主にマレーシア人が対象でした。外国人の加入は任意なのですが、まあ、取れるところからもっと取りましょうということで、外国人就業者も対象としたのでしょう。
現在のEPFは、月額5000リンギ以上であれば雇用主は12%、その従業員は11%がそれぞれ積立をしないといけません(ローカルも加入した外国人も同等の比率)。例えば、月給5000リンギであれば、雇用主は600リンギを従業員へのために積み立て(従業員の月給からは引かれず、別途積み立てます)、従業員は550リンギを自分の給与から収めることになります。つまり、この場合のその従業員分には月額1150リンギが積み立てられるのです。
EPFはこの集めたお金を運用していきますが、毎年「配当」という形で各積立者に配布します。これまでで年率が最も高かったのは8.8 %で、1983年から4年にわたってこの年率が支給されていました。最新の2023年の配当率も5.5%で、それまでの平均年率は5%ほど。つまり、貯めれば貯めるほど複利で積立金が増え続けるのです。
ただ、EPFは原則として定年退職の55歳までは引き出すことができません。新型コロナのパンデミック時に多くの人が失業してお金がなくなったことから、政府は特別措置としてEPFを引き出せるようにしました。しかし、あまりに多くの人が引き出してしまったことから、定年退職後には年金がほとんどないという人が続出。そのため、今年からは「アカウント3」という口座もでき、こちらは病気や失業時に引き出せるように、引き出し上限を決められています。
現在、外国人が加入できるのは任意です。僕は2008年から加入していますが、マレーシアのほとんどの日系企業はあまり日本人従業員に対してEPFに積極的ではありません。企業側が負担になるためですが、かといってこちらの日系企業は現地採用の日本人に対しても退職金を払うわけではありません。なので、まったくEPFを負担したもらえばいというのは、どうなのかと思います。
これが来年からは義務になるとみられるので、企業側は負担が増すでしょう。マレーシア雇用者連盟(MEF)は「2年は延期してほしい」と陳情をすでに出しているようですが、さて、どうなるか。来年の義務化は難しい気もします。
少し人材会社からこのことについて話を聞いたのですが、最近のマレーシアでの現地採用の日本人はEPFに加入しないのだそう。企業側が対応するとしても入らないそうです。もともとそれほど給与額が多いわけではないので、EPFに月給の11%分をもっていかれると生活ができないのだとか。それも理解はできなくはないのですが、外国人の場合はマレーシアを離れる場合は精算ができるので、次のための資金にすることは可能なのですが。。。
いずれにしても、義務化されてしまった場合はそうもいってられなくなります。このために企業側がさらに給与を引き上げるというのはちょっとありえないので、もしかするとマレーシアで日本人も含む外国人を多く抱える企業は従業員数を減らしていくか、撤退もしていくかもしれません。
ただでさえ、物価が高騰し、さらに最低賃金を来年2月から現在の1500リンギから1700リンギに引き上げるとも発表しているため、企業側の負担はかなり大きくなるでしょう。大企業といえども、何千人も抱えていたら、かなりの負担になります。
もし来年以降にマレーシアでこちらに進出したり、就職を希望されていることをお考えであれば、上記のことも念頭に入れておきましょう。
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