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KL~コタバルのバスの旅(第1回)
20年ほど前にクアラルンプール~コタバル間のバスにたまに乗っていましたが、今回久しぶりに乗ってみました。2回に分けて書きます。
クアラルンプールは南部にあるバスターミナルTBSで離発着しています。KLからは午前と午後一便が多く、特に午前9~10時前後に集中しているようです。
TBSは距離に関係なく、マレー半島内はどこでもバスで行けます。シンガポールやタイ南部のハジャイまでの便もここから乗ることができます。
今回午前10時の便に乗ることにしました。運賃は保険も入れて48リンギ。飛行機より断然安いのですが、難点は片道8時間を要すること。急いでいる人にはおすすめはできませんが、夜行便もあるので、午後10時以降のバスに乗れば、早朝には向こうに着くのです。
さて、バスの予約はアプリでするのが主流になっています。「redBus」というアプリがよく使われるようですが、ここで座席の指定も支払いもできます。チケットはメールでも送られてきて便利です。
しかし、TBSのバスの発車プラットフォーム入口には係官のチェックがあり、ここではこのメールのチケットを見せても入れません。カウンターで発行した紙のチケットがないと入れず、アプリで予約してそれをカウンターに見せて紙を発行してもらうのです。電子化は何のためなのかと思います。飛行機でさえ、もはやそんな紙のチケットはなくなっているのに。。。 このカウンターはいつも長蛇の列。僕はだいぶ早めに行ったのでよかったですが、直前に行くと結構面倒。20~30分はこれのために並ばないといけないので、要注意です。その紙を発行するには目的地と時間、バス会社の予約番号を係員がコンピューターに打ち込んで発券するのですが、これは果たして必要な作業なのか。
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プラットフォームには9時45分に入れましたが、バスはまだ来ていない。10時5分前になってもバスは来ず、10時10分になってもまだ来ません。あらら、時間通りではないのね。係官に聞いたら、
「マラッカから来るからちょっと遅れている」
とのこと。TBSが始発かと思っていたけど、TBSはあくまで中継地点らしく、周辺の街から立ち寄るのが多いようです。
まあ、遅れるのはある程度は覚悟はしていたけど、結局バスが来たのは10時40分すぎ。それもひっそりと入ってきた。40分も遅れたのは先が思いやられるなあ。予定到着時間は午後6時27分とあるが、もはやこれは意味がない。27分ってどこから計算してきた数字なのか。
マレーシアの高速バスは二階建てのものが最近主流になっています。僕のバスもこの二階建てので後ろの一人席にしておきました。荷物はバス後方のタイヤの上あたりに収納置き場があって、そこに自分で入れる。日本のようにタグをつけることはしません。なので途中で誰かに持っていかれる心配もあります。
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バスは来てから5分もしないうちに出発。TBSから乗る人は3人のみで、2人は一階席に乗りました。2階にはマラッカから乗ってきたとみられるマレー人女性2人ほどが乗っていました。そもそも「到着した」という知らせがないので、乗り場にいなければ乗り過ごす可能性もありです。
TBSからは国立動物園(Zoo Negara)方面に向かい、バトゥ・ケーブ近くの停留場に到着。ここで5~6人を乗せ、そこから北上です。
クアラルンプールからマレー半島を北に行く場合は2ルートあります。
まず、ペナン方面に行く場合はバトゥ・ケーブ西側国道1号線にずっと沿っていけばつきます。クランタン州コタバルは東海岸にあるので、このルートではなく、グンティン・ハイランド近くのベントンという街に抜けてそこから国道8号線(高速道路)をひらすら北に向かうだけ。いずれのルートも道1本伝っていけばつきます。コタバル行きの道はマレー半島を東西にわけるような形でほぼ一直線。わかりやすいといえばわかりやすいですが、ほとんどジャングルの中を走ります。
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ベントンあたりには12時ごろに到着。その後も北上してラウブというと街に向かう途中は大渋滞に巻き込まれました。対向車線はまったく車がいません。のろのろ運転が30分ぐらい続いたでしょうか。
「どうせ交通事故だろう」
と思っていましたが、ところが、消防車が一台止まっていて、その前には全焼した四輪駆動車が。。。消火はすんでいましたが、ほかには車が見あたらず、車が自分で燃えたということなんでしょうか。
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バスはその後に細い一般道(?)に入っていきました。往来は激しいのですが、付近は普通に民家が建っています。Dongという地区を通ったのですが、秋のような空の下で、ここでは改めてマレーシアの民家について考えさせられました。
マレーシアの地方の民家は平屋が多い。これはDong周辺だけの話ではなく、地方全体に言えることですが、二階建ての住宅はおおかた華人の金持ちの家のようです。高床式の家もまだ健在。日本で弥生時代の高床式住宅を学校で習ったと思いますが、あれです。ジャングルが多いため、蛇やトラ、ゾウ、猿などなんでもおり、これら野生動物から身を守るためなのでしょう。木造建築が多く、なんだか100年前の風景とほとんど変わらないのでないか。クーラーはついている気配がなく、昼間はとても暑いのではないかと思います。また、平屋でも屋根はおおむねトタン。木造の家もあり、コンクリートで固めた家はまだまだそんな多くない気がします。
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バスで走っていてもマレーシアの風景はどこに行っても代わり映えがしません。日本だと四季によってピンクだの赤だのと色彩豊かですが、マレーシアでは年間を通して緑だけ。もちろんジャングルの緑ですが、特にパーム油プランテーションが国土全体を覆っているのは大きい。行けども行けどもどこも同じ風景で、昔旅行会社の人が「日本の風景はいつも変わるから楽しんだよね」と言っていたのを思い出しました。これは現代だけではなく、19世紀の旅行記などを読んでも同じような風景が描かれており、実は風景は100~200年前と変わっていないのではないか。生きている人間だけが変わって、環境風景は何も変わっていないとなると、この国にはタイムスリップというものはいらなくなる。
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この緑一色の風景は地元の人達の色彩感覚や心理的なものにも大きく影響しているのではないでしょうか。マレーシアの人たちはとにかく派手な色が好き。普段着でもピンクや赤やオレンジといった、日本人なら恥ずかしくなるような色を平気で着ている。緑の世界の中で生きていると派手な色を自然と好むようになってしまうのか。そういえば、イスラーム教のシンボルの色は緑。これは地方の普段の生活の中にあるジャングルと一体化させるために緑にしたのだろうか。
そんなことを考えながらバスは延々と進む。5時間ほど経ってからやっと休憩。水は用意して車内でちびちび飲んでいましたが、さすがにトイレに行きたくなってきた。そう、バスの中には日本と違ってトイレはありません。なので、相当緊急でない限りはトイレで止まってはくれませんので、気をつけてください。
休憩地点はクランタン州南部のグア・ムサン。KL~コタバル唯一のサービスエリアのようで、どのバスもここには必ず止まります。確かに途中でサービスエリアらしきものはまったく見なかった。ジャングルのなかに突然立てるわけにもいかないので、必然的に街らしい街のグア・ムサンが休憩地点になるのでしょう。
しかし、5時間休憩もなく、運転手は1人。これって危なくないのか。夜便はさすがに数人の運転手がいるようですが、昼間は1人で運転しているようです。マレーシアの高速バスは事故が多いので、そのこともあって後ろの席にしましたが、事故防止のためか、心なしかゆっくりめのスピードではありました。
グア・ムサンからさらに3時間かけてコタバルにいきますが、それは次回に。
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