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新型コロナウィルス蔓延で考えたこと ~措置に対する日本とマレーシアの違い~

 新型コロナウィルスが世界中で猛威を奮っています。世界の感染者数は26日現在でもうすぐ1億人に達する勢いで、死亡者はすでに200万人を超えています。強力なウィルスはまだまだ弱まる気配はなく、終息の兆しすらも見えない状況に世界は疲弊し始めています。
 日本も例外ではなく、先進国(すでに物理的には後退国なのですが)のなかでは感染者数は少なかったのですが、みるみるうちに感染者は増加。これはいったいどうしてなのでしょうか。マレーシア政府の措置との違いを見てみます。


■日本の場合
 今年に入って新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、日本では1都7府県に2月7日を期限に緊急事態宣言を出しました。飲食店での感染が多いとのことで、政府は主に飲食業を中心に「自粛」を求めています。

 日本での緊急事態措置内容は下記のとおりです。

・飲食店は営業時間を午後8時まで
・酒類の提供は午前11時から午後7時まで
・宅配やテイクアウトは除外
・不要不急の外出を自粛(特に午後8時以降)
・テレワークを推進し、職場への出勤者数の7割削減を目指す
・イベントは最大5000人までまたは収容人数の50%以下に制限
・イベントの開催時間も午後8時まで
・感染リスクの高い部活動を制限
・学校の休校は求めない

 といった内容ですが、ここでいくつか不思議に思うことがあります。
 まず、これは「宣言」であって、強制力がある法律ではないことです。あくまで政府による自粛の「お願い」なのです。例えば、飲食店は午後8時以降に営業したとしても現行では罰則がありません。政府による補償もない状況で、これでは店主は店を開けるでしょう。法律を定めていれば強制力も働かせられるのですが、何せその準備も政府も議会もこれまでしてこなかった。それではこういった状況になったときに文字通り「手をこまねいてみている」だけになります。

 また、営業時間が午後8時までというのはよくわかりません。ウィルスは午後8時以降に活発になるのでしょうか。飲食店で午後8時前までなら5人以下で集まっても大丈夫なのでしょうか。その説明がほとんどないので、これでは誰も言うことはきかないのでは?

 そもそも日本人は「性善説」に立っていることが多く、上記内容も政府は「言えばやってくれるでしょう」といった態度があるようです。非常に日本的で、人々の好意にすがるようなお願いなのです。法的措置はなく、好意に頼って、果たして感染は防げるのでしょうか。おまけに首相の説明不足も決定的(というか説明がまったくなくスカスカ)で、政府に対する信頼もなくなっているところが現在の日本の悲劇です。

■マレーシアの場合
 マレーシアの場合を紹介します。
 マレーシアでは昨年3月18日に活動制限令(MCO)という経済活動を一時停止する措置を出しました。当初は2カ月ほどの措置でその後は感染者が減ったため、「条件付き活動制限令(CMCO)」と「回復のための活動制限令(RMCO)」が導入され、段階的に緩和されました。しかし、年が明けてから感染者が再び増加。このため、1月13日から首都圏などでMCOを再導入し、1月22日からは全国に拡大しました。

 この法的な措置内容はかなり多いですが、一部を取り上げると下記の通りとなります。

・マスクの着用、手の消毒、人との間隔を1メートル以上確保することは必須。
・レストランや屋台など飲食店は午前6時~午後10時までの営業で、店内での飲食は禁止
・パブやバー、カラオケ、映画館、ゲームセンター、衣料品店、メガネ店、理髪店などの営業禁止
・イベントや結婚式など社会行事の開催の禁止
・式典や対面による会議の禁止
・会社の管理職の出勤人数は30%以下にする。
・州間及び地区間の移動を禁止し、外出は自宅から最大半径10キロまで。不要不急以外は認めない。
・1世帯あたり2人まで外出可能だが、必需品の買い物のみ認める。
・自動車の乗車人数は2人まで。
 などなど事細かに規定しています。

 また、日本にはないのは「モスクを含む宗教施設での礼拝人数と時間の制限」といったものもあります。モスク内では最大5人まで礼拝が可能としています。これは昨年3月にモスクで3000人以上のクラスター感染が発生したため、制限をかけるようにしています。

 さて、マレーシアの場合は上記に違反すると反則金が最大1000リンギ(約2万5000円)が科されます。悪質な場合は逮捕となり、強制力があるのです。マスクを着用しない人がいまだに多く、毎日数百人が反則金を科されています。一方で、大半は順守しており、それは政府によるリーダーシップを発揮している証左なのだと思います。

 しかし、昨年前半は感染者の抑え込みにほぼ成功したにもかかわらず、残念ながらここまで厳しくしても感染者数は減っているどころか、増えてしまっています。外国人労働者が劣悪な住居環境にいることが主な原因で、職場でのクラスター感染も約100件にも達しているためなのです。大規模な検査も実施していることも感染者数が増えている原因の一つかと思いますが、少なくともこのあたりを何とかすれば、減っていく可能性があります。

■その違いは?
 上記でみたように、日本の場合は政府による「お願い」であって強制力がありません。マレーシアの場合は政府による命令で法的措置があり、警察や軍隊による取り締まりが行われています。

 ちなみに、マレーシアの場合はある地区で感染者が増えた場合、そこを封鎖するために「強化された活動制限令(EMCO)」を発令もします。これは、日本では考えられないですが、軍隊が出動して感染地区周辺を有刺鉄線で取り囲み、出入りを固く禁じ、食べ物は政府からの支給にするという措置を取ります。これは効果的のようですが、やはり解除までには最低2週間から数か月を要するところもあります。

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 世界各地で感染を抑えるのに苦労しています。感染防止対策は世界で試行錯誤の状態なのです。しかし、日本のような「お願い」程度で感染を抑え込むことができるのかは非常に疑問です。マレーシアの強制力のもった方法でも抑えられていないからです。

 いくら日本人は清潔で、規律正しいといっても人は一様ではなく、徹底的な政府主導による感染防止策を講じなければ、ウィルスは拡散していくのではないでしょうか。そのためにはどういった対策が本当に必要なのか。スカスカ政権は思考停止に陥っており、もはや最新のAIに首相・閣僚をやらせたほうが実はうまくいくのではないでしょうか。

 日本の医療はすでに崩壊しており、東京では感染の入院で3000人待ちだそうです。マレーシアでも医療崩壊は徐々に始まっていますが、これは近く解決できそうです。マレーシア政府は常に事態を注視しており、リーダーシップをどんどん発揮しています。保健省や安全保障担当の大臣がほぼ毎日記者会見をして、誠実な対応をみせており、そのリーダーシップに国民が信頼を寄せているのです。保健省の大臣も含めた主要幹部が現役の医師でもあるというのも大きいのではないでしょうか。

 夏にオリンピックをやると日本政府は意気込んでいますが、このままでは難しいでしょう。実現させるため、「オリンピック実現のために感染を抑えよう」と首相が叫んでリーダーシップを取れば、かなり変わってくる気もしますが、官僚が書いた文章をロボットのように読んでいるだけではそれは高嶺の花。個人個人の行動に慎重さを持たせるためには感染防止で得られるメリットも政府は提示しないといけません。

 こう考えると、感染防止対策も重要なのですが、やはり政治指導者のリーダーシップが感染防止に最も役立つのかもしれません。

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