われ絵画講師なり その3

今回は生徒の話ということで、今まで私の講座に在籍した生徒の中で印象に残っている生徒をタイプ別にご紹介します。これを現在在籍中の方が見てどう思うか、やや心配でもありますが張り切って行ってみましょう。

大きく分けると、男性と各々の性格で分かれてきます。

男性編

その1         言うことを聞かない、もしくは聞く気がない。

男性、特に年配になる程、こちらが指導しても言うことは聞かないスタイルというのが一定数おられます。埒が開かなくなることもままあります。悪い時は接待しろと言わんばかりの態度を見せる生徒もいますが、そう言うときの私は、高度な課題をぶつけてみよう作戦で相手が折れるまで粘ることにしてます。大抵そう言う方々は自信過剰ですから、できるだけ態度や口調は柔和にしつつ、あくまでも挑発的に初心者ではおぼつかないようなハードな課題をしていただくようにしてます。そうすると、ある程度認めてくださるようになり、結果的に長く続けられた方も多々おられました。

その2        自分の意思を曲げない

その1と似て非なる厄介なタイプです。指導する内容に一応の理解は示しますが、それ以前に自分の信じた道があり、それにそぐわなければ指導した内容を跳ね除けてきます。このタイプの方は初心者ではなく少し齧った程度の知識や経験がある方に多い傾向です。対処はその方の信じる道をできるだけ踏襲しつつも、気が付かれないように軌道修正していくようにします。上手くいくと、その方の作家性が爆発しますが、ほとんどの場合は堂々巡りを繰り返してしまう結果となります。突破口がわかっていたとしても、自身の手法を曲げるのが嫌ですから突破できずに右往左往してしまいます。あまりにも頑なな場合はこちらの要望などは置いておいて好きに描かせるようになっていきます。

男性編は以上。男性生徒の傾向はほぼこのふたつだと言っても過言ではありません。そうでない方もたくさんおられましたが。そんな生徒さんに出会った時は自分がブッダのような気持ちになって孫悟空にいくつも課題をやらせてみるようにしています。

次は男性も女性もいる性格的に何かあるタイプの方々のご紹介です。

Aタイプ    どうにかして講師に描かせようしてくるタイプ

女性に多いですが、男性でもいるタイプです。このタイプには度合いがあります。レベルが低いほど問題はない事案です。

レベル1        本当にわからないから描いてもらって参考にしたいと言う方

レベル1のタイプの方々は、主にかなり熱心な方々です。自分のレベルアップのために貪欲にお願いしてきます。なので、できるだけ応えるようにしています。

レベル3      手入れ希望の後、終了したいと思うタイプ。

レベル3の方は最後に完成度を上げるための一手を講師に任せてきます。このレベルの方々が一番多いかもしれません。ですが、講師が手を入れるだけで終わりにならないように釘を刺しまくるようにしています。うっかりただ手を入れてしまい終わりにしてしまうこともありますが、その生徒が最後にちゃんとオチをつけるまで監督し、手を入れたことが無駄にならないよう努力はしています。その場合の攻防戦で疲れ果てることも良くありますが。

これくらいの要望であれば全く問題ありません。少なくとも、絵を描きたい方々が絵画教室に通うという理由に含まれていると言ってもいいくらいの内容だと思っています。それに、手を入れた方が理解しやすい場合ももちろんあります。


ここからが問題でかなりハードレベルです。どちらかと言えば、人間性に問題があるのでは?と疑ってしまうパターンとなります。

レベル50      講師に描かせたものを他人に自分の作品として譲渡

レベル3の方のような雰囲気でお願いしてこられるのですが、その実、その作品を額装して人にあげたりするのです。これをやられてしまうと、本当に困った話になるのですが、そう言う生徒のほとんどは純粋に「先生のおかげで喜んでもらえた」とか屈託なく言ってきます。できればやめて欲しいのですが、意識が違いすぎて、本人はなぜダメなのかが全く分かっておらず、結局、咎められないことも幾度となくありました。そういうこともあって、手を入れる際にはその生徒のパーソナリティを良く理解した上で入れるよう心がけています。

レベル測定不能  講師に描かせて公募展で入選を狙う

レベル50の方のようなやり口ですが、最悪なのは確信犯的に、講師の一手で入選、入賞を狙うと言うタイプです。もちろんレベル3の方々と同じく、手を入れた部分に加筆、または修正をちゃんと入れてから出品しなさいと指導したとしても、それを無視してそのまま出品し、入選してしまいます。しかも、入選できたんだから先生も良かったでしょう、みたいに言われてショックを受け、最終的には、入選したのは私の実力だ、とまで言われてさらにショックを受けた記憶があります。

その後その生徒には手を入れることが怖くなりました。指導をすることもできないと告げその生徒は辞めていくことになります。いわゆる破門ですね。


ここまでの内容で思うことは、前回のその2で、講師の方針について簡単に書きましたが、その方針1「生徒の希望をとことん聞く」をやると少なからず、その生徒の希望や目論見が出てくることがあります。それが、純粋に上達のためであれば問題ないのですが、あからさまに講師を利用するといった目論見があらわになってきたときに、どう対処するかが最難関となります。希望を聞けば聞くほど私の倫理観から外れていってしまうこともあるので、慎重に指導しなければなりません。そして場合によってはお辞めいただくこともあります。


方針2の「生徒の作品には極力手出しはしない」と言うのも講師をしていて難しい点となります。上の方にも書きましたが、講師の手入れが教わる理由になっておられる方も少なくない、いや、むしろほとんどの方がそう思っておられます。そんな状況で、手入れをしないのは、前回の記事のように、生徒の作品を無断で加筆修正してしまう講師に対してのアンチテーゼというだけではないのです。


ちょっと長くなってきたので、今回はこの辺で終わりにします。

次回も続きます。

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