note版オンライン絵画講座 道具の話 雑話
しばらく気が萎えてて書く気も起きずにいましたが、少し道具の話でもして書く気分を上げてみようかと思う今日この頃です。
さて、今回のお話は、道具の買い替え時期っていつ頃だろうと言うことです。
よくそんな話になりますが、この時期が良いと言う一つの考え方をこの場で提案してみようと思います。
そもそも論ですが、今まで20年近く講師をしてきて思うことがあります。
皆様、道具を本当に大事に使われて、道具職人は泣いて喜ぶんじゃないかと言うこと。残念ながら決して誉めていません。なぜそんなにも最初に持った道具に固執してしまうのか、長年指導してきてだんだんわかってきました。
描きにくいかもしれないけど買い替えないのはなぜ?
生徒の間で技術の向上めざましく、問題になるのはやはり、描画道具。特に水彩画受講の生徒の筆の扱いや種類は少し考えさせられるところが多いものであります。
まず、私の講座を受講される方の多くが昭和生まれの方々なのですが、物を所持したら長く使い続けるという事を体に血に刷り込まれているような気がします。
もうそんなこと考えなくて良いほどお金もあって、毎日筆を使い捨てしたって良いくらいなのに、大切に大切に、いつも一緒に過ごして、ボールは友達ならぬ、お筆は友達状態の方が本当に多いです。
決して悪いことじゃないですし、絵画制作に於いて道具を大事に扱うのは全くもって間違ってないのですが、その「大事にする」というニュアンスが少し違っていて、
とにかく買い替えない。ケバケバになっても使い続けるという、描きにくいかもしれないものを大事に使っている、ということです。
ここで一つ、私たちのような絵を日常的に描く人間と趣味の域で描く生徒の認識の違いを確認できたわけです。
大事ってそういうことなのか?といつも思ってしまいます。
でも、当人に聞くと大体、好きで長く使い続けているわけでもなく、正直な所、何を買ったらいいかわからないし、結局使い慣れている方がいいなどの言い分がほとんどです。
何を買ったらいいかわからない、というのはまあ、まあ、いいとしましょう。
それが絵を描き始めて2、3年ならギリギリ許せる範囲です。
しかし、10年近くやってても、そんなことを言ってくる場合は、当人よりも私がショックを受けることが多々あります。「教え方を間違ったなぁ」と。
なので最近では2、3年の経験年数に達するまでに筆の話をすることが多くなりました。あくまでも初心者ではなく、少しかじった程度で話すのが大切だったりします。
初心者よりも中級者に道具の話題を
これはあくまで私が長年教えてきて思うことですが、中級者未満(初級者よりも少し経験が多い方々)は成長著しく挑戦心も旺盛な場合が多いのです。こちらの提案や、説明をしっかりと吸収し各々の制作に活かせる可能性が高いと思っています。
しかも、少なからず道具に対しての疑問や要望が生まれてくるのもこの頃です。
ですから、道具の説明を丁寧にすれば、その後の制作は明るいものになっていくと予想がたちやすいです。
対して、初心者には道具の話をそれほどしないように心がけています。
大体の場合、入会する際に私が指定していくことになっています。
その際、それほど高価なものでなく安価で使いやすいであろうものを指定します。私が指定しない場合、もしくは受講者自身が用意したいとした場合も初心者向けの道具というのをできるだけ安価で準備してもらいます。
中級未満以上の方と違うことは、安価なものでも良いので、まずは道具を使い慣らしていくことを教えていきたいからです。
使い方も知らず、良し悪しの判断もできない状態で詳しいことを教えることは避けたいと考えます。
さて中級者未満、この後すぐに中級へ昇進なさる方のための道具とはどんなものか。今回の話題では理由だけにしようかと思いましたが、少しどんな道具を持っていたら良いかを列挙してみようと思います。
いや、その前に書いておかねばならないことがありました。
初級者も中級者も道具にあまり差がない分野
さっきまでは水彩画のことばかり書いてましたが、道具、描画道具の話ならば、その他の絵画のことも書くべきです。
鉛筆画(デッサン含む)
色鉛筆画
パステル画
など直接描くタイプの画材たち。
これらに関しては、それほど初級も中級もない気がしています。
どちらかと言えば、どんなことがやりたいか?なのですが、初級者にこの質問をするのは酷なので、まずは何が必要か、と、初めて2、3年の方には何がとりあえずいいかを列挙しておきましょう。
鉛筆画(デッサン含む)
UNIの鉛筆、Hi-UNI(金の帯あり)でなく安い方でいいでしょう。
理由は色数。HBを中心に8B〜8Hがあって、最初は4B〜4Hくらいまで持ってればある程度描けると思います。むしろそれ以上の鉛筆があっても使い所がよくわからず、宝の持ち腐れになりそうです。だからと言って持ってちゃいけないわけでもないので、欲しい方は全種類EBなども買ってみていいかもしれません。
例)4H、2H、HB、2B、4Bと、1番飛ばしで持っていれば十分です。
UNIが売ってない、という場合もあることでしょう。その場合はメーカーで揃えるのではなく、濃さ(色)に重点をおいて選べばいいと思います。
デッサンにしろ、何かの下書きにしろ、鉛筆を使う場合に必要な濃さ(色)は
4B、2B、HB、2Hがあればどんな場合でもなんとかなるでしょう。
鉛筆は強弱による色幅もあるので色数は無理せず選ぶといいでしょう。
UNI以外のメーカーしかなくても色数は最低でも4本はあった方がいいかもしれません。
練りゴム、意外と絵を描かない人は知らないかもしれませんが、鉛筆画、色鉛筆画、パステル画を描く方には必須の道具となります。
練りゴムの1番のポイントは擦り消すのではなく、練りゴムの粘りに鉛筆のグラファイト、パステルの粉を吸着して消すと言う方法です。
その使い方がわかるまで、たくさん練習したらいいと思います。
なぜなら、絵を描く以上に描いた絵を消すのは上級技能です。
消し方、淡く書き上げる場合も同様に練りゴムの使い方次第で出来が変わってくるものと思います。
だからと言ってこの練りゴムが良い、と言うのはほとんどなく、どこのものでも良いように思います。あまり高いものもないので、色々買ってみても良いかもしれませんが、それは中級以上にまで進んでからでも遅くありません。
やや注意が必要なのは、遊び用に作られた練り消し。
匂いがついてたり、すごく柔らかかったりするのですが、中には
紙にへばりついてしまうようなものがあります。そういう玩具風の画材ではないものは避けた方がいいと思いますが、
初級者と中級者の道具の違い
まず、初級者の道具。前にも別の記事で書きましたがおさらいしてみます。
安価な筆と言っても百円均一で5本セットのものなどはやめましょう。
信じられないくらい質が悪く、どちらかといえば使い捨て1回限りかと思います。
もう少し良いやつ。値段で言えば、太さ中くらいで300円くらいのもの。
どのメーカーでも良いですが。合成毛で良いと思います。
むしろ合成毛のものを選ぶ方がいいかもしれません。
合成毛の特徴は、コシが強めなので初心者には書きやすい。ただし、水の含みが悪いので、すぐに色や水分が抜け易く、パレットと画面の往復が多くなります。
余談ですが往復が多くなると言うことは、色が安定しにくい、描いた絵が筆の摩擦で汚れがち、筆の跡が残りやすいなど悪い面もあります。
ですが、初心者にとってコシが強くて描きやすいというのはかなり大きなポイントで、水の利用し方がままならない場合、当てになるのは筆のコシの部分だったりします。
そうやって書くこと自体を体に馴染ませるならば、あまり高価でない画材の方がいいかと思います。高価でなければ、いろいろなタイプの筆を試しやすいし、自分の好きな形を見つけやすいとも考えられます。
中級未満からそれ以上
中級者未満からその後の筆の選び方は、描きやすさもそうですが、できるだけ水の含みのいいものに変えていくということです。
この頃になると、少しいい筆が欲しくなる頃なはずなのですが、制作に熱中しているとそこまで気にしない時期でもあったりします。ですが、筆のせいでの失敗を技術力のせいでの失敗と思いがちなのもこの頃です。
そこで出てくるのはややプロ用の筆たち。プロも熱心なファンがいる、キャムロンプロなどがとてもおすすめです。
キャムロンプロがいいのは、質、レパートリー、値段など魅力的な部分がはっきりしてますが、何より、長年愛されて欠品の心配がないというところだと思います。
気に入って長く使おうと思っても、商品欠品の可能性があるだけで、少し萎えてしまうんですが、キャムロンはその心配が今のところないのはとても魅力的だと思います。
2年以上の経験があるならとてもおすすめです。コシも水の含みもよく、とても扱いやすいと思います。ただ一点注意があるとすれば、変形しやすいので保管する場合はしっかり乾かしてから筆巻きに巻くなどしたほうが良いでしょう。
軸に赤いラベルが巻いてあるものの方が汎用性が高い、黄色いものやピンクのものはより専門性が高いものという印象です。
水彩用筆だけが最適解ではない
水彩筆として売られているものだけが答えではありません。もしも、画材屋に行ってプラスチックの軸筆が嫌であったり、違うものを使ってみたかった場合、書道筆や日本画用の筆を選んでみるのもいいと思います。
あまり高価なものでなければ、使ってみるのも一興と思います。
書道筆の場合、穂先の長さが長いと扱いが少し難しくなるかもしれません。ですから、カナ筆や、小筆を選ぶと良いと思います。
日本画筆の場合、彩色筆や面相筆、平筆などを選ぶようにしましょう。
ただ、どちらにしても天然の毛のものはそれまでの合成毛とは雰囲気が違いますので、まずは何枚か絵を描いて癖を知っていくようにします。
そして、絵を描く際に天然の毛の筆を使う場合、ちゃんと根元まで水を吸わせるように扱い、使い終わりは根元の水気をちゃんと吸い取って保管してください。
さて、今回の話題はこれまでにします。
まだまだまだまだ書きたいことはマウンテンなので、そのうち新たな観点から道具の話をしたいと思います。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。