ソーシャルメディアマーケティングが成功する企業、失敗する企業
「広告代理店に言われてYouTuberやインスタグラマーを使ってみたんだけど、あんまり効果がなかったんですよね」
ここ数年ほとんど毎日のように聞いている話なのだが、そういった企業の担当者の話をじっくり聞いてみると、そうなってしまう原因がわかってしまうことがある。端的に言うとクリエイティブへの口出しが多いのだ。
SNSで一番やってはいけないのは「マス広告のコピペ」
弊社でもインスタグラマーに商品写真を撮ってもらう「ブツ撮りサービス」を提供しているが、まれにいろんな事情でサービスの主旨が伝わっておらず、納品物に対して「ここはこうしてください」「撮り直してください」という依頼を受けることがある。
もちろん打合せに齟齬があり事前の約束が守れていないようなケースはすぐに対応するが、中には「もっとここにピントをあわせてほしい」とか「モデルの髪型が商品イメージに合わない」といった、サービスの主旨を理解していないのではないかと思わざるをえないような要求もある。
通常であれば、そこで「はい承知しました」とすべての要求を受けるべきなのかもしれないが、弊社ではそれを受けるべきかどうか慎重に検討している。なぜなら、そこで言われたことを全部ハイハイ聞いてしまったら、プロのカメラマンが撮る従来の広告写真と何も変わらなくなってしまうからだ。なんのためにインスタグラマーに頼んでいるのかがわからなくなる。
そもそも弊社の顧客は「自社で用意した写真をインスタに載せても効果が出ない」という悩みを抱えて弊社に依頼をしてきているのだ。それなのに従来と同じ「バッチリ被写体にピントの合った広告っぽい写真」「プロのモデルさんを使った綺麗な写真」を言われるままに納品してしまったら、顧客の悩みを解決できない。
だから弊社の顧客がメーカーさんなどのエンドクライアントの場合は、丁寧にその旨を説明し、理解をしてもらうように努力する。ほとんどの場合はこれで問題ない。困るのは間にエージェントが入っている場合で、この場合はなかなかエンドクライアントにまでサービスの主旨を伝えることができない。間に入っている人も大変だろうから...ということで、ひとまず言われたとおりに対応する場合もある。
こうすると顧客はいったんは満足する。しかし、こちらとしてはものすごい罪悪感が残る。その「マス広告のコピペ」のようなクリエイティブには期待するような効果がないことがわかっているからだ。
SNSには、それぞれのSNSごとの「世界観」がある。その世界観にそぐわないコンテンツをユーザーは決して受け入れない。広告であればなおさらだ。
そしてその世界観を一番熟知しているのは、そのSNSの人気ユーザーである。彼らは何をどんなふうに表現すればユーザーにウケるかを、少なくとも我々よりは知っている。彼らの力を借りたいと思うのであれば、なるべく彼らの思うように、自由にやらせるべきなのである。
「お客様は神様です」でみんな不幸になる
私自身代理店と呼ばれるところで働いたことも顧客であったこともあるのだが、代理店の営業はどこも基本的には土下座営業だ。成果を最大限にすることを目指しつつも、顧客からのクレームは絶対に避けなければならないという空気がある。
だから、会社にとって重要な顧客からの要求で、内心「それは違うのでは」「こっちのほうが効果があるのに」と思うことがあっても、それを言えない(言わない)場合も多い。
たとえば、「10代の中高生に流行らせたいのでインスタ使ってプロモーションしたいんです」みたいなリクエストに対して「いやいや、ちょっと待て」と言える代理店はどのくらいあるんだろうか(ちなみに正解は、中高生にはインスタは流行ってないので中高生狙いならツイッターかYoutubeを使え、である)。
おそらく顧客が強硬に「社長がどうしてもインスタ使いたいと…」と言ってきたら、ほとんどの人はあんまり効果がないと知りつつもインスタを使ったプランニングをしてしまうのではないかと思う。なぜならそこに「仕事を断る」という選択肢がないからだ。
わからなかったらとりあえず若者の意見を聞け
そういった不幸を避けるために、弊社では新卒を含むすべての社員に「自分が顧客に貢献できないと思ったら遠慮なく仕事を断っていい」と言っている。そこで妥協して仕事を受けても、顧客のためにもクリエイターのためにもならないからだ。ひいては自社の評判も落とすことになる。
ソーシャルメディアに関することにおいては、新卒社員などの若手の意見は極めて重要である。通常の意思決定ならば経験豊富な上司の意見のほうを優先すべきなのだろうが、ことソーシャルメディアに関してはそうとは言えない。若手の感覚のほうが正しい場合が多い。
ソーシャルメディアマーケティングにおいて「何が正しいのだろうか?」と迷うことがあったら、ひとまず身近な若者に聞くのが一番いいだろう。モスキート音みたいなもので、若者にしかわからない面白さや美しさ、というのは確実にある。
まとめると、ソーシャルメディアマーケで成果が出せる企業は、「餅は餅屋」だということを理解している企業なのである。私がいままで見てきた限り、思い切って企画段階から全部「専門家」に任せられる企業が一番高いパフォーマンスを出している。
そのリスクをとれない企業がいくらSNSマーケに大金を積んでも、思うような成果は得られない。まぁ、向き不向きがあるなと思う。
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