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姫人形【一次創作】


これは、一人の女の子の人生をつまみ食いするための物語である。

えすがつ えふにち
きょうは、ままとお、かいものにいったの。そこでひらひらの、おようふくをきた、おねえさんをみて、「いいな」っていった。のね。そしたら、ままがね、「¿¿ちゃんは、世界一可愛いから似合うわね」っていって、こんど、ね、ひらひらのおようふく、ね、かってくれるおやくそくをしたの。
とーーーーーーーーーーーーーーーーーーっても
たのしみだなー!つておもいました

世界の誰かから見たら、ロリータファッションを着るにふさわしい少女の、可愛げのある日記であろう。この日記に続きは無い。自由帳と書かれたそのノートは、その名の通り自由に使われ、イラストや何かの暗号みたいなものが書かれていた。
でも、この続きを私は知っている。
何故なら、この日記を書いた張本人だからだ。
でも、今は話したくない。思い出したくもない。
あんなに、あんなに、あんなに、世界で1番で可愛くて輝いててお姫様な私が  '平凡な'市民だったなんて。
あまりにも、ショッキングだった。 そこらの、私に関係の無い心揺さぶられるニュースなんかと比べたくもないくらい、つらい、くるしいが重なった。
いつ、だっただろうか。
コルセットを締めて絞めてしめあげて
メイクを濃くして濃くしてこくして
深呼吸をたくさんして、5分くらいして
やっと鏡の前で儀式を行う。
「今日の私も可愛い?ねぇ私」自信に問いかける儀式
返答は無い。やっぱり私は姫じゃなかったんだ。
そう失笑してみて、悲劇のヒロインを演じてみるも
誰も見ていない。
そうだ、私は、一人暮らしだった。
友達もいないから、誰かに「見て!」と送ることも出来ないし、そもそもそんな強い心を持ち合わせていない。
そうだ。街へ買い物に行こう。
そうすれば、今より多くの「可愛い」が貰えるはず。
それならもっともっと可愛いアイテムを持つべきだ
アクセサリーは、こっちとこっちにして、
ヘッドドレスは、こっ、ちよりこっちにしよう。
目立ちそうだ。悪目立ちはしない、、ね。
カバンは、絶対にこれって決めてた。
UV指数、2だけれど日傘も持っていっちゃおう。
これで、無双だ。
可愛いって言われるはず。
だって私は元がいいし。
昔は、毎日言われてて。「今日も可愛いね」って、


いつからだっけ、もっともっとって言うように思うようになったの。可愛いの数にこだわるようになったの。自分の好きな服じゃなくて、自分の好きなメイクじゃなくて、自分の好きなアクセじゃなくて、誰かの好きに刺さるモノを選ぶようになったのって。
あれ?あれ、わたしっ、私って。
存在していますか。これは、私の形をした誰かの人形なんじゃないの?世間が私を着せ替え人形にして、遊んでる、?遊ばれてる。いや、いや!いや!!!わたしは、私なの、私だけしかいないの。
私がいなくなったら可愛いがこの世から消滅するの。だから私は生きてみんなを救って生きて可愛い格好をしてお姫様で、、お姫様なの、私だけが。
女の人、みんながお姫様だなんて許せないの。
わたしだけ、なの。私しかみんなに見て欲しくなくて、だから、お気に入りの服たちの中でも優劣をつけて、じゃあ、お気に入りって。

ぐしゃ

私が欠ける音がした。
せめて
パリン、とか、ぽろっ とかかわいい音であれば良かったのにとこんな時でさえ可愛いを願ってしまうの。


エピローグ
この森には、ひっそり館が建っておりました。
その館は、人の出入りは滅多になく、たまに馬車に引っ張られて食料のようなものが運ばれてきたり、世話人のような人がでかけていったり、そのくらいのものでした。
そうここは、療養施設。
ロリータに、可愛いに、承認欲求に、潰されてしまった少女や少女だった者たちが住まう、いいえ、置かれている場所。
広く寂しい病室には、ベットと少女と、少女の大好きだったコーディネートが2,3着程マネキンに飾られている寂しい病室。少女たちの腕には、命を繋ぎ止めるため、また新しい可愛いを楽しむための液体を入れる針が常時刺さっている。
ただ、例外もある。それが朝1番だ。
少女たちの起きるはずの時間になると、専属の世話人がやってくる。そして、病人服のようなものを脱がせ、丁寧に丁寧にロリータ服に着替えさせるのだ。世話人の好みのものに。
そして、意識があった頃のメイクをしてやったり、世話人好みの顔にしてやったり。
そして、アクセサリーも、世話人が丁寧に選び、丁寧につける。そして、窓際の椅子に座らせ
決まりの台詞を言い、また点滴針をつける。
「本日もお似合いです。お姫様おにんぎょう

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