地方移住、就農に失敗した人へ
この記事は、大学を卒業し、大企業やそこまではいかずとも多少名のある会社や公務員に就職して働いていたが、会社を辞めて地方移住や就農の道に進んだ人、しかし進んだ先で思ったようにはいかず、都市や農業以外の仕事に再度ついた人に向けて書きました。
どれくらいいるんだよ、とツッコミたくなるんですが、自分自身と思い浮かぶ友人知人で3人はいるので世間には意外といるのかなと。
●移住、就農は異世界転生と思っていたところがありました
異世界転生とは?…
引用:
「異世界転生・転移」とは、登場人物が事故など何らかのきっかけを経てその登場人物が生まれ育った世界とは違う次元の世界に行くことで物語が始まる作品だ。
https://hite-media.jp/journal/789/
私が新卒で入った会社を辞めたのは2015年の年末になるのですが、辞める時に思っていたことは下記のようなものでした。
仕事は面白くないし、評価もされないといった職場への不満と、地方に移住して農業を自分で切り盛りする年齢の近い人たちへ憧れ。
またぼんやりと社会に対して批判的なところがあり、原発には反対で、農薬にも反対で、今の資本主義は行き過ぎだ、子ども食堂は政府がやることだろ、、とそんな感じでした。
会社への不満や外への憧れ、社会に対しての批判的な思いが混じり合い、
自分の力で生きるんだ!
新しい社会を切り拓くんだ!
みたいな事を考え、実は給与から色々引かれたうえである程度の手取りが確保される大切さなどには無頓着でした。
(なので辞めた次の年の住民税や国民保険、年金の請求が来てなんじゃこりゃと驚きました)
会社を辞めた後、1年間有機農家さんのもとで研修を行い、同時に週一回の農業スクールのようなものに通っていました。
そこで、研修後どのように生活していくかの計画を立てていました。
当時半農半Xという言葉が流行っており、農業を朝から昼まで行い、夕方から塾をやる、そんなイメージをしていました。
なかなか良い感じに計画してんじゃんと思っていましたが、今振り返る本当にしたいことがある人は計画前にすでに関連したことをしているよなと。
外国の人と英会話したいと言いながら話す場には行かず文法書の勉強で日が暮れるみたいな。
頭で考えた「自分がしたそうなこと」は魂がこもらず、それに向かって多少進めてもストレスがあるとすぐに方向転換。家庭教師を始めてみるも自分の思うようではなく、疲弊しそちらも続かず。
昔会社の先輩に、PDCAってあるけど、お前はP型になっている、新人に求められるのはDだと言われたことが印象的です。
就農して続いている人はD型で、続いていない人はP型。D型の人はとりあえず魂に従い動く。やってみて、振り返る。それを繰り返す内に魂が輪郭を持つ。欲望と言っても良いかも知れないですが、欲望が輪郭を持ってきて始めて計画が生きる。そういう順番で始められた人たちは、続いているし、何か他の理由で続かない場合もいい縁を持ち別の局面に移っていけているように思います。
P型でそれっぽい計画を考えるだけで、動かず指示待ちで泥臭いことをせず、経験値は貯まらず、評価も上がらないことは必然で。
しかし本人はいいこと考えているのになんで評価されないのかと悩む。そうするうちに評価されないのは環境のせいであると思うようになる。
別の世界に行けば今のままで評価されるようになるんじゃないかと期待する。
まさに異世界転生漫画のような話を夢想する。自分は何も変わらないのに異世界に転生したら隠された才能で無双する物語。
当時の移住や就農を進めるさまざまな言説はその夢想を捕まえて地方や農業に対して人を送り込む。
しかしそういった人はそこでも評価されず、お金も稼げないため疲弊する。
自分の場合はこんな感じだったんですが、皆さんはどうでしょうか。
●歴史的にみるとよくある話だった
時間も経って過去を振り返り、いくつか本を読んでみました。
地方から都市へ人が流出する流れはずっとあって、50.60年代はとんでもなく動き、農村の次男三男が都市に働きに行った。その後も波はあれど、地方からの流出は進んでいて、東京圏への人口流入は進んだ。農業での自営業は50年代から減り続けてその代わり雇用される人が増えた。80年代以降、農業以外でも自営業が減り、非正規での雇用が増えた。
自分は地方生まれの三男で、進学で地元を離れ、東京圏に出てきて今神奈川で働いている。
物心ついたときに活況だった商店街は寂れ、当時一国一城の主だった友達のお父さんは靴屋をたたみ、うどん屋のバイトをしていた。
あと都市での生活への反発から田舎に行くみたいな話は70年代のヒッピーとかよくある話なんだなと。
自分が社会への反発もあり一度農業の道に進んだけれど、今都市で働いていることはこれまでの選択の結果である一方で、大きな流れに抗えなかった結果であるなぁとも思ったわけです。
●失敗しても生活は続く
農業の職を辞め、一時未経験者募集のベンチャーに勤めた後、自分はどうにか神奈川の田舎とも都会ともつかない地方で公務員としての職を得て、妻子とともになんとかやっています。
(移住や就農した人が地方公務員になるみたいは話は聞く、、)
マイナスな感じで書いてきたんですが、今は後ろ向きな思いはなく、農業の世界に飛び込んで今の生活に至るまでの20代後半から30代の初までの間は心理的にも不安定な時期だった気がします。(クォータークライシスとかなんとか言うそうです)
地方公務員で申し込んだ枠は、歳を取ってても新規採用扱いで、多少社会人経験は給料に反映されるけれど薄給で、ただ残業したら残業代は入るし、年休とか沢山あるし、かなり働きやすい環境です。福利厚生ってすごい。
高校や大学の友人と話すと、1.5倍から2倍くらい給料をもらっている人も多く、マジかよとなることはありますが、まぁ自分の仕事的な実力を思い知った上での今なので納得せざるを得ないなと。
グダグダ書いてきてしまったけど、地方へ移住したり農業の道に進んだりしたけど上手くいかなかった人たちはいかがですかね。
共感してもらえるのか、全然違うよって感じなのか。
と言うか「移住」とか「就農」とか言葉にいい意味を持たせようとしてるところがセコくないですか?
移住は「引越し」だし、就農は別業種への「転職」もしくは「フリーランス化」で、何もカッコよくない。けど、当時は地方創生だなんだってなんかカッコいい感じがしたんだよなぁ。
まあ実際、田舎の広々したところは気持ちがいいし、農業も知的かつ肉体的にカッコいい職なんだけど。
●これから移住とか就農しようとする人になんて言いますか?
今新卒で働いている会社で燻っていて、別世界に行ってやると思っている当時の自分のような人にもし相談されたら、農業とか移住は一度置いといて、一旦転職してみたらとは思う。転職すると普段の人間関係からガラッと変わるから心機一転になると思う。
あと仕事辞めるなら、国保と住民税のかかり方だけは注意して欲しい。やつらは、働いてないかどうか関係なく前年の給与を基に計算された額を請求してくる。会社を辞めてすぐ転職しない人のことは考えてないから、農業の研修とかで無給になるとキツい。
預金残高が減ると精神的にもくる。友達との飲み会を金銭的な理由で断るのも結構胸にくる。
もっと若い、大学生くらいの人にアドバイスするなら、自分がもっともやらなさそうなバイトとかしてみたらと言う気がする。自分は個別塾の講師をしていたけど、そこは生徒と、似たような境遇の学生バイトしかいなかったなと思う。農業の研修を始めてお金がなくなってきたから短期で入った引越しのバイトはこれまで接しなかったタイプの人たちで、そう言う人と接しないと経験値は溜まらない。
共感できる自分と似た人達と一緒にいることは居心地がいいけど、仕事は人の苦手を手助けした代わりに対価をもらう行為である以上、自分と違う人とコミュニケーションを取らざるを得ない。
新卒で勤めた会社を辞めてから出会った、麻の炭を信仰する人達や、時計と車とキャバクラが好きな中小企業社長達、共感は出来なくてもどうコミュニケーションを取るのか考えてきたことは今生きる上での糧になっていると思います。
まあそんなこんなで、自分は楽しくやっています。同じ時期に移住や就農した皆さんはどうでしょう。
元気にやっていると嬉しいですし、心が病んだりしてないといいなと思います。
寒い日が続きますのでお身体ご自愛ください。