【LGBTQ】LGBT理解増進法、権利保護の対象は。「性自認」は”自称”ではない。

LGBT法案(議員立法)をめぐって、差別禁止や性同一性・性自認などの内容で意見が分かれており、各党は同じ意見を持つ政党と連携して対応している。与党は単独で修正案を国会に提出し、野党3党は議連案(原案)を共同提出して、維新・国民両党は別法案の共同提出に向け協議している。

与党案・議連案の正式名称、維新・国民は共同提出に向け協議

LGBT法案の正式名称については以下のとおりである。維新・国民両党は法案について協議中のため、意見の一部を要約したものを掲載。
・与党案(修正案)(自民・公明)
「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(要綱法律案:衆議院HP)
・議連案(立民・共産・社民)
「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(要綱法律案:衆議院HP)

・別法案の共同提出に向け協議する意向(維新・国民)
≪馬場伸幸代表(日本維新の会)≫
2021年の超党派議連の合意以降、トランスジェンダー女性のトイレ使用などの問題が顕在化したことに言及。
≪榛葉賀津也幹事長(国民民主党)≫
与党案・議連案にはシスジェンダーの権利保護の視点が欠けている、と指摘。

文言が重要な理由、LGBT理解増進法は、性的マイノリティの理解増進が目的、権利保護の対象範囲を決める

これらの法案では、「性的指向及び性同一性の多様性」(議連案では「性同一性」の箇所が「性自認」)という文言が使用されている。これは、この法案で扱うセクシュアリティ(性のあり方)を示している。

与党案では、「性同一性」を「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識をいうこと」、議連案では、「性自認」を「自己の属する性別についての認識に関するその性同一性の有無又は程度に係る意識をいうこと」と定義している。

セクシュアリティは、4つの要素(「身体的な性」、「性自認」、「性的指向」、「性表現」)に分けて考えられている。
「性自認」と「性同一性」は、どちらもジェンダーアイデンティティという概念の日本語訳であり、本来であれば同じ意味である。
しかし、松岡宗嗣氏(一般社団法人fair代表理事)は、「自民党内の会合では、性自認は"自称"で、性同一性は、性同一性障害という概念があることから、医師による"診断"かのような、概念自体を歪める議論が行われていた」(※1)と指摘する。

※1 引用元・出典
日本の「二枚舌」が露呈。G7首脳宣言「LGBT差別から解放される社会の実現」問われるLGBT法案(松岡宗嗣)Yahoo!ニュース

性の多様性を理解する上で、こうした言葉の概念や専門用語の定義は重要だ。
LGBT理解増進法は、LGBTQなどの性的マイノリティの理解増進を目的とする法律であり、権利保護の対象範囲を決めるものである。また、基本法・理念法であり、具体的な議論と対応がこれからも必要になる。
LGBT法の目的と位置づけを明確にすることが、議論の着地点を決める鍵となるだろう。

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