【LGBTQ】子どもたちへの理解増進、学校教育はどうなる。与党単独で修正案を国会提出、野党3党は議連案を。
2021年5月に与野党合意したLGBT法案だが、その後、自民党は修正を加える。修正案は与党(自民・公明)から国会提出された。
日本維新の会と国民民主党は、与党案の共同提出には加わらず(自民党に意向を伝えている)、立憲民主党は共産・社民両党と共同で2021年の合意案(議連案)を提出した。
与党案、「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(※1)
与党単独での国会提出となったLGBT理解増進法案の正式名称は、「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(※1)。
与党案では、議連案の「性自認を理由とする差別は許されない」の文言を「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」など修正されている。
「性自認」は「性同一性」に修正、対象が狭められないか懸念
LGBT法案が成立すれば、その目的や内容などに合わせて行政がおこなわれるが、基本法・理念法としての役割は大きい。
「性自認・性同一性」の表現については、「性同一性」に修正することで、性同一性障害が前提にされ、対象が狭められないかを懸念する声がある。
LGBTQ理解増進のためには、「性自認・性同一性」について、今後も理解を深める必要がある。
「学校の設置者の努力」が独立項目から削除、事業主の項目と一体化。
議連案では「学校の設置者の努力」を独立項目としていたが、削除され、事業主の項目と一体化された。与党案には、学校の設置者が環境整備を通じて理解増進に努めるとの条文は残る。
「子どもに教える必要はない」、「子どもに教えると混乱する」という意見への配慮からの変更だが、「学校を安全な場にするためにも、子どもたちにこそ性の多様性を教える必要がある」と反発する声がある。
理解増進に努めるものとして、ともに「学校の設置者」となっているが、独立項目から削除される意味合いも確認する必要がある。
理解増進において、誰が主体となるのか。学校の環境や教育の役割をどう考えるか。家庭内でLGBTQの理解を必要とする例もある。大人から子どもへの直接的なアプローチだけでなく、子ども同士が互いに理解し合える環境づくりのような間接的な対応も考える必要があるだろう。
議員立法は全会一致での提出が慣例だが…、今国会での成立を目指す
議員立法であるLGBT法案だが、与党単独の修正案と立憲・共産・社民3党の議連案がある。議員立法は全会一致での提出が慣例となっているため、今国会で審議されない可能性もあるとして成立を困難とする声がある。
国内の動きと併せて注目されているG7広島サミット。G7は、LGBTQの権利の保護・促進に積極的な姿勢を示している。関連法の整備は、日本が取り組むべき重要課題のひとつだ。
自民党の新藤義孝政調会長代行は、法案提出後、今国会での成立を目指す考えを語っている。
性的マイノリティー関連の法律に詳しい棚村政行氏(早稲田大学・法学学術院教授教授、家族法が専門)は、基本法・理念法になるLGBT理解増進法案について、「この法律の基本的な精神がどこにあり何のために作るのかはっきりさせることが重要だ。性的マイノリティーの人たちを誰ひとり取り残さない多様性のある社会の実現に向け具体的に取り組んでいくことが大切であり、今後、国会での議論など成立に至るプロセスも大事に注視していく必要がある」と語る。
更新
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法案の正式名称に誤りがあったため訂正。
(訂正前)
「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律案」
(訂正後)
「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」