最高のあとがき

 小学生の頃に『ズッコケ三人組』で小説の面白さを知り、中学生の頃に『キノの旅』でライトノベルをメインに読むようになりました。今までに読んだ小説の数を覚えている人間は少ないと思いますが、私もその例に漏れず、多くの小説を読んできた一介の読書好きです。その中でよく触れる機会があったのものが本の「あとがき」です。

 あとがき。本文とは別に、著者が自由に文章を書くスペースのことで、ライトノベルとジャンル分けされる作品には大抵ついています。純文学や大衆小説と呼ばれるジャンルの作品にはあとがきが無い作品も多いように思いますが、読書好きを自称する方であとがきを目にしたことがない人はいないでしょう。今回は、そのあとがきについてです。
 あとがきは、著者が本文とは別に自由に文章を書くことができるスペースなので、書いてあることは自由です。フリーダムです。基本的には作品の解説や著者近況、次の作品の情報や著作に関わった人への感謝の言葉が並ぶことが多いです。製本時のページ調整の関係で生まれたスペースを埋める目的があるのか、作品によってはページ数が極端に少なかったり多かったり、それをネタにしているあとがきも見受けられます。

 さて、あとがきについての私の考えは『キノの旅』の著者、時雨沢恵一先生に影響を受けています。それはいくつかありますが、最も重要なのが、「本を買う前にあとがきを読むことがある」です。本を買う前に、試しに本文の書き出しを読んでみる人は多いでしょう。私はそれだけではなく、あとがきを読んでみるのです。
 本文は全て作者がその考えと技術をもって構築した、言うなれば一文字残らず「飾り付けられた文章」です。もちろん綺麗に飾られた本文こそがその作品の価値です。極論、あとがきは蛇足であり本来不要なものだと言えます。ですが、その作者の本音や人柄が見えるのは、本文よりもより自由に書くことのできるあとがきだと思います。もちろんあとがきまで全部考えて書く作家さんもいらっしゃいます。それは、それだけあとがきを魅力的に書こうという意欲のある作家さんです。……こう書くとあとがきが魅力的に見えるでしょうか。まあとにかく、本文以外にも魅力的な文章たるあとがきがあるということと、「本を買う時にあとがきを参考にする勢」は「書き出しを参考にする勢」より多からずとも存在はする、ということは判っていただけるかと思います。なので、全ての作家さんは本文以上に力を入れて本文以上に面白いあとがきを書いていただきたい(謎マウント)。あ、本文に関するネタバレもなしでお願いします(謎マウント2)。

 で、本題ですが面白いあとがきを紹介しようという話です。どんなあとがきが面白いのか、というのは万人それぞれに基準があると思うので、ここでは示しません。あとがきには様々な種類があります、一ページまるまる改行なく文字を詰め込んで長文を書き上げているもの、形式で遊ぶことに凝っているもの、文章を隠しているもの、作者近況がただただ面白いもの、刊行作品一覧に擬態されているもの、カバー裏に書かれているもの、などなどなど。そんな数多くのあとがきを読んだ中で、私が選ぶ最も面白いあとがきがこちら。

 私は今のところ、この本のあとがきが一番面白いと思っています。この本は、「あとがきが購入の決め手になった本」の実例です。アニメが放映された後、その物語を知って面白いことが判った上で改めて原作を読むかどうかを悩んでいた時、書店で第一巻を手に取ってあとがきを読み、その面白さにそのままレジに行きました。後にも先にもこの本だけです、とは言い切れませんが、私の「あとがきが購入の決め手になった本」第一号は『はたらく魔王さま!』です。
 このあとがきは、致命的なネタバレをしない程度に作品の内容に触れつつ、携わった方々への感謝も含みながら、物語の読後感を高める効果も持っていて、なによりあとがきだけで面白いと思える、最高の逸品です。本文(あとがき)の引用は致しません。書誌情報とリンクは貼ってあります。あとは判りますね?

 以上です。面白いあとがきをご存知の方がいれば、コメントいただければ幸いです。

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