【好きなもの】杉谷庄吾『映画大好きポンポさん』

これは全てのクリエイター、あるいは夢追い人に向けて書かれた漫画だ。
そして、全ての人間は潜在的にはクリエイターであり、夢追い人である。
すなわち、この漫画は全人類に向けて書かれた漫画である。

こんにちは、エトナです。今回は漫画『映画大好きポンポさん』の紹介記事です。

杉谷庄悟先生の描く『映画大好きポンポさん』。
2017年にPixiv上で無料公開されツイッターで一気に拡散、瞬く間に50万PVを越え、半年と経たずに書籍化されました。
現在は続編『映画大好きポンポさん2』とスピンオフ『映画大好きフランちゃん』が刊行されていますが、今でもPixiv上で1巻丸ごと無料で読めます。フランちゃんも読めます。是非、この機会に一度読んでください。
特に、クリエイターの皆さんは必見です。必ず、見てください。絶対に損はしません。本当に面白い。

ポンポさんは敏腕映画プロデューサー。
映画の都ニャリウッドで日夜映画製作に明け暮れていた。
ある日アシスタントの“映画の虫”ジーンはポンポさんから突然、
「この脚本は君に撮ってもらうから」と監督に指名され!?

といった感じのあらすじですが、この作品、映画好きはもちろん「ものづくり」に携わる全ての人に読んでほしいと思っています。
映画を撮りたい人、小説や脚本を書きたい人、音楽を作りたい人、俳優として表現したい人、絵を描きたい人、その他諸々のものづくりをしたい人であったり、自分の好きなことを突き詰めて世に出したい人、夢を叶えたい人に読んでほしい漫画です。
この漫画は映画撮影に関わる話ですが、映画に詳しくなくても読めます。“映画の虫”ジーンのセリフや様々な名作映画の名前が出てきますが、その全てを知らずともこの漫画は面白いです。

作中でテーマとして出てくるのは
「ものづくりに対する情熱」
「夢を叶えるために必要なこと」
の二つです。タイトルは「ポンポさん」ですが、物語の主役になるのはアシスタントの「ジーン・フィニ」と女優見習いの「ナタリー・ウッドワード」の二人。この二人が自分の夢を叶えるために必要なことをポンポさんや周りの人間から教わりながら成長していくという話です。

ただ、一番の魅力はやっぱり「ポンポさん」なんですよね。
ポンポさん、見た目はかわいい女の子なんですが、中身めっちゃかっこいいんですよ。
映画プロデューサーとしての才能はもちろん、その情熱を内に秘めたセリフと生き様がかっこいいんですよ。かわいい。
この作品、名言がいくつも登場するんですが、そのどれも「より良い作品を生み出すために製作者が持っておくべき心構え」みたいなところが多くて。名作を生み出すため、ひいては、より良い人生を生きていくための道しるべになるセリフばかりです。かわいい。
創作に携わる人はみんな心にポンポさんを飼うといい。私も飼ってます。かわいい。

ポンポさんはその信条として
「制作者はシーンとセリフをしっかり取捨選択してできる限り簡潔に作品を通して伝えたいメッセージを表現すべき」
だと語ります。そしてそれはこの作品の作者・杉谷庄吾さんの信条とも一致するようで、この作品、削るべき要素を極力削っていてテーマだけを一直線に描いています。キャラクターの恋愛要素などないし、映画蘊蓄も最小限、悪い人が引き起こすトラブルもなく、他のテーマに寄り道することなく「ものづくり」を表現することに全力を投じています。

それでいて物語としての完成度が高く、伏線はしっかり張って綺麗に回収するんです。特に第1巻のオチ、本当に完璧なんですよ。最高。
第1巻があまりに綺麗に終わっていたので2巻が出るとなった時多くの読者が「え、続編出るの?」ってなりました。
ですが、そこは杉谷庄吾。そんな読者の反応を分かった上でその反応を取り込んでその上を行く展開を用意しています。というか作者自身「一冊で綺麗に完結している」と続編の執筆を断っていたとあとがきに書いているので、そんな人が書いた続編が続編として完成していないわけがない。
この2巻の構成もね、すごく上手いんですよ。作中で映画を作っているからこそメタ的に「続編のあり方」に触れることができるという。

第1巻はクリエイターがクリエイターとして生まれるまで。
第2巻でクリエイター(プロ)になって生きていくために。
スピンオフは自分を知り、自分をプロデュースすることに焦点を当てています。
登場人物の内、誰に共感するかは別れるところだと思います。
クリエイターを目指す人ならジーン・フィニでしょう。
俳優を志す人なら、ナタリー・ウッドワードやフランフェスカ・マッツェンティーニでしょう。
自分をより良く見せる場所を探している人ならミスティアやユーゲン・マイルスジャックかもしれません。
それぞれ立場や生き方の違う登場人物たちですが、最終的にこの漫画の根底に流れるテーマとしては、
「ものづくりは楽しい」
なんですよ。ポンポさんもジーンくんもナタリーもフランちゃんもミスティアさんもユーゲンさんもコルベット監督もペーターゼンさんもマーティンさんも、根底にある衝動は同じなんです。

「超楽しい」

ものづくりってね、楽しいんですよ。それを一人でも多くの人に、この漫画を通して知ってもらったり、再認識してもらえたらなと思っています。

この漫画、特に第1巻を読み終わったとき、多分全読者は同じ感想を抱いたと思うんです。
「この話、映画で見たい」
ということで『映画大好きポンポさん』アニメ映画企画、進行中です。
多分映画スタッフは、この本を読んで私たちと同じ感想を抱いたはずなので、私たちの期待を裏切らない最高の映画を作ってくれると信じています。


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