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『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩・著。1000円
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スマホで見た、たまたまの雑誌の記事から次々とブックサーフィンをしてこの本にたどり着いた。
雑誌『premium 9』の中の小原晩さんの写真の笑顔があまりにも素敵すぎて惚れてしまった。
速攻で最寄りの本屋に行き買ってきた。
インタビュー記事で又吉直樹の『東京百景』との出会いが語られていた。
その出会いとその後の彼女のストーリーにさらに惹きつけられて彼女が自費出版したこの唐揚げの本を読みたくなって取り寄せて読んでみました。
一言で言ってしまうと、この本は傑作である。
60代の私が言うのもおかしいけれど、この本は今の若者の典型的な心の持ち様を見事に言葉で伝え表すことに成功していると思う。
端的に言えば自分の経験したことを書いたエッセイである。そしてその経験から自分が感じたこと思ったことなどのつぶやきである。痛みや寂しさや悲しみや喜びや幸せを、淡々と綴ったものである。
とってもパーソナルなエッセイだと思う。でも、おそらくはまる人ははまるし、助かったなと感じる人も少なくないと思う。もしかしたらこの人はこれからブレイクするんじゃないだろうかと思うようなところもある。
自分の母親が美容師だった。そのお母さんに憧れて、高校卒業後に美容学校に行きそのまま美容師となる。しかし勤めた美容室の強力なビジネス体質に馴染めず辞めてしまう。その後に勤めた個人の美容室でも色々とあってやめてしまう。どちらも美容の技術とか仕事面と言う部分では問題なく過ごせているが、それ以外のごちゃごちゃに彼女はとても傷つき、悲しみ、呆れ、絶望する。
やがて人生に絶望していく。その途中で出会った又吉直樹の『東京百景』に救われる。
ここから彼女の人生が大きく変わっていく。まさに本との出会いで人生が変わった典型的なパターンである。
美容師で生きていた女性が、文芸の世界で生きていくことをに目覚めていく。
読んでみるとわかるのだが、『東京百景』とこの唐揚げの本は、雰囲気がとてもよく似ている。おそらく小原さんが自然に身に付いてしまったというか、自然に出てしまうほど、『東京百景』を読み込んでいるから出てきたこの本の味だと思う。
東京百景×小原さんの体験×小原さんの感性がこの本で結実しているように思う。
ポエムと思うところもあるし、ミニファンタジーと思うところもある。ただ、すっと癒されるし、1日一編の短編は読んでいきたいなと思った。それだけでも心が救われる気がする。
心のビタミン剤のような本でもあると思う。
他の本も読んでみたくなりました。
⭐️ちなみにこの『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』と言う本は自費出版です。
ですので、一般書店に流通しておりません。
しかし、簡単に通販で手に入ります。
ただ、ご注意していただきたいのは、メルカリやアマゾンで高額表示をして販売をしているところを非常によく見かけます。
これはとてももったいないと思います。
定価は1000円です。
送料を300円ぐらい支払えばちゃんとしたルートから購入することができます。
小原さんと取引をしている本屋さんが小原さんから仕入れて店頭販売及び通販で販売してる商品です。
ちなみに私は荻窪で店を構えている「title」と言うお店の通販で購入させていただきました。インターネットでググってみれば、すぐに1000円で買える店はわかると思います。
文庫本の大きさでとても薄いので、ジーンズのポケットに入ってしまうほど身軽に読める読書体験ができます。
でもそのちょっとした読書があなたの心を助けるかもしれません。もしかしたらあなたの背中を押すかもしれません。