「書く習慣」1ヶ月チャレンジ17日目。
本日のテーマは「あなたの1番大切なモノ」
う〜〜〜んっ、これもけっこう難しいテーマでしたねぇ。
本以外に対して、わりと物欲がない方なので、
購入の食指が伸びないのです。
だから、ネタがなかなか出てきませんでした。
ということで、すみません、やっぱり本の話になってしまいます。
たった20円の古本が、僕の人生を変えた話です。
ちょっと長いですが、できれば最後までお付き合いください。
ぺぺんぺんぺんぺんッ!
と、ここからは、講談風に読んでいただけますと幸いです。
僕は、
数年前まで、NPO法人読書普及協会と言うところに所属していました。読んで字のごとく、日本全国に読書を普及させる活動をしていました。
そこで僕は「読書ソムリエ」と言う役割をいただいていました。
主な仕事は本の紹介イベントを開催すること。
最初の頃は、理事長であり書店「読書のすすめ」の店主である清水克衛さんと一緒に2人で紹介していたんですね。
イベント名も「ほんのくすり」でした。
この時は、清水さんがとても人気のある方でしたので、毎回30人以上の人が参加してくれました。2ヶ月に一回のペースで1年間続きました。
ところが1年経った時に清水さんから「次からはえちごやさん一人でやってくださいね」と言われてしまった。
イベント名も「本の力」に一新して。
ものすごく焦りました。小学校の頃から人前で話すと膝が震え、声が裏返ってしまうような性格でした。
そんな人間が、1人で1時間半も果たしてしゃべれるだろうか。
いままでは清水さんがそばにいてくれたから、補助輪付き自転車のように、安心して話すことができたのです。
ヤバくね? (^◇^;)
しかしやるしかなかった。
で、やってみた。
お客さん、いきなり6人に。 エッ(⌒-⌒; )
しかも、その内5人が全員下を向いて、何かこそこそとやっていた。
(後で分かったことですが、みんながやっていたのはそのイベントに出席した者同士でメールの交換をしていたらしい。つまんねーなー、眠いなー、早くおわんねーかなー、ビール飲みてぇー、みたいなやり取りをしていたようです)
実際のところ、僕の話は非常につまらなかった。
本の中身の棒読みである。
しかも言葉に詰まってしらけてしまうのが怖かったので、1時間半以上のネタを頭にぎゅうぎゅうに詰め込んで喋り出していたのでした。
喋り出したら、無呼吸で1時間半しゃべりっぱなしになるぐらい、情報を頭の中に詰め込んでいた。
とにかく恥をかくのが怖かった。
シラけるのが怖かった、必死だった。
でも、やればやるほど空回りして、どんどんお客さんは来なくなった。
僕は何とか話し方が上手くなるようにと思い、話し方の本をたくさん買い込んで、必死に読んで必死に練習した。
それでも駄目だった。
やってもやっても上手くならない。
話がつまらない、堅苦しい。
もうやめちゃおうかな、と何度も思った。
しかし、2ヶ月に一回、このイベントは定期的に開催し続けた。
そんな苦しい時に、たまたま、自分が経営している古本屋の店頭で偶然出会った本がありました。
その日も外の本のほこりを払うつもりで、店頭に出て、本棚の叩きがけをしていた。
ルーティンワークですから何も考えず、パタパタと叩いていた。
すると、一冊だけ背表紙が焼けて、真っ白になっている文庫本が目に止まった。
価格は20円。
しかし、いくらなんでも、
これは捨てなければいけない、と思い棚から引き出した。
捨てる前にどんな本だったか中をパラパラと拾い読みした。
群ようこの「鞄に本だけつめこんで」と言うタイトルだった。
本の紹介エッセイのようだ。
うっかり読み始めてしまった。
これがすこぶる面白い。
そのまま自分の店の店頭であることを忘れ、立ち読みしていた。
結局、その本は捨てずに家に持ち帰り、一晩で読み切ってしまった。
群ようこの、めちゃめちゃ悲惨なモテない人生、何をやっても笑いのネタになってしまうような人生が書かれていた。
そこに真面目な本の話を繋げて、上手い具合にクロスオーバーさせていた。
はちゃめちゃな人生と、真面目な本のコラボだった。
硬い本の紹介なのに、群ようこの人生の面白さに引きずられて読んでしまい、その本が読みたくなった。
最後まで読んで、ハッと気づいた。
これ「本の力」で使えるかも?
だって俺、群ようこに負けないぐらい、悲惨な人生歩んでるもんね。
自虐ネタなら負けないかも?
そんなことが頭にモヤっと浮かんだ。
ここから大逆転が始まる。
しかし、実は、その時、今回の本の力はサボろうとして逃げに入っていた。
つまり、開催の告知を見送っていたのだ。
前回からの計算で行けば、あと1週間くらいで開催しないといけない。
無茶な話だった。
(今回はもう間に合わないな、次回にしよう。うん、無理無理)
そう思い、安らかな寝むりについたのでした。
ところが・・・である。
この本を読んだ翌日、
たまたまの用事で、イラストレーターのさくらみゆきさんから電話が入った。
いつも「本の力」の時に配っている、本のレジュメにイラストを描いてもらっていた。彼女は「ほんのくすり」のスタートの時からずっと応援してくれていた。
要件が終わり、電話を切ろうとしたら、
「あっ、そういえばさぁ、本の力そろそろじゃない?」と聞いてきた。
私は、ヤバイ、バレてると思い、でも、
「今月は色々あって忙しいから、休もうと思うんだ」とスルーしようとした。
すると
「な〜んだ、そんなもんかぁ〜。
ふ〜ん、わかったぁ。
じゃあまたねぇ〜」
と言って電話は切られた。
えっ!(^◇^;) なんで?
「ソ・ン・ナ・モ・ン・カ」
まさかの言葉に、ど〜んっと落ち込んだ。
と同時に、例えようのない怒りが体の奥底から湧いてきた。
ふざけんじゃねえよー
なんでテメエにそんなこと言われなきゃなんねぇんだ!
しかし、その怒りは空を切った。
ほんとうは、逃げに回った自分の情けなさへの怒りだった。
うーうーうーうー、クッソ!
携帯電話を握り潰しそうだった。
どこからか、体の奥底から、フツフツと湧いてくる気持ちがあった。
「言ったなこのヤロー、
わかったっ!
やってやろうじゃねーかっ!
クソッタレ」
その夜、
超スピードで原稿を書き、緊急告知をした。
本来なら、イベントは最低でも1ヶ月前ぐらいから告知しないと、人が集まりにくくなる。
それを承知の上で告知した。
1人でも来てくれたら、開催しようと。
一週間、自分の悲惨な人生を振り返り、できる限りのエピソードを掘り起こした。
それをどうしたら本の話と結び付け、笑ってもらえるかを考えた。
お客さんは、笑いとドラマを求めている。
毎晩毎晩必死に考えた。
そして当日が来た。
結果、5人も来てくれた。
「開き直り 本の力」の開催である。
本はいつもの通り、10冊ぐらい用意してあった。
この10冊の本を紹介するのに、1冊につき1つ自虐ネタを挟み込んだ。
90分間ノンストップでしゃべりまくった。
本の内容説明は30秒ぐらいで済ませ、後の10分ぐらいは自分の自虐ネタである。
夢中だった。おそらくゾーンに入っていた。
話し終わって「以上です」と言った瞬間、複数の「面白かったぁ〜」の声とともに、盛大な拍手がわき起こった。
5人しかいないのに、
自分の耳には100人以上の拍手に聞こえた。
(えっ! なに? ウケてる? )
その瞬間、身も心も震えた。
これだ!この話し方でいいんだ!
心の中で、ガッポーズを取っていた。
以上のような顛末がありました。
以来、この「本の力」という本の紹介イベントを10年以上続けていくことができたのでした。
僕はこの「鞄に本だけつめこんで」と出会ったことで、人生が大きく変わりました。
この本は、僕にとっては、ものすごく大切な宝物です。
長文、お付き合いくださり、ありがとうございました。
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