「その作家は零戦に乗ったことがあるんですか?」朝のひらめきメモシリーズ?その1。『永遠の0』から始まった余談。
小説がいい思うところ。
小説は今いる現実から一歩外に出て新しい未来を作る。新しい未来を想像するきっかけになる。
素晴らしい道具だ。
ある人にとっては現実逃避となり、小説の世界にいる時だけ現実を忘れさせられる。
それが現実を解決するということではないが、現実に立ち向かうだけの精神的体力をつけてくれることがあるし、オブラートに包んで心を優しく守ってくれる場合もある。
話は飛ぶが、ある時、僕が「本の力」(本を紹介するイベント)で百田尚樹さんの『永遠の0』を紹介しようとしていた時、客席の中から「百田さんは零戦に乗って太平洋戦争を経験したんですか?」と言う質問があった。
会場が一瞬シーンとなった。
40歳前後と見受けられるスーツ姿の、メガネを掛けた物静かな印象の男性だった。
私はその人を個人的に知っていた。その人は国家試験をたくさん受けて、合格し、資格をたくさん持っている方で、その資格をもとにお仕事をされている立派なビジネスマンである。
しかし、いまひとつ伸び悩んでる感じはあった。どこかに自信のないものを感じた。
あれだけ立派な国家試験を持って働いているのにもかかわらず、何かが足りないという感じはしていた。
その質問をされたときに、その人の足りないものがわかった。
小説である。
小説を読んでいないから、こういう質問をしてしまうんだろうなと思った。
その資格を取った背景には、彼は何らかの自分を劣等感に追い込む過去があったんだと思う。それをリカバーするためにたくさんの資格を取って自分をガードする必要があったんだと思う。
でも仕事と言うのはお金を儲けるだけのものではない。というか人と人との間に、信頼関係を築きお互いに相手を喜ばすことをそれぞれの場所で発信し、活動し、その見返りとしてお金がたまたま入ってくると言う。
それが本当の仕事の形である。
そのビジネスライクなまでの考え方が身についてしまったのは、おそらく小説が足りないからだと思う。
小説は人と人とのドラマです。人と人との間に育まれる愛のドラマです、人間が働いていく上で、実はお金よりも何百倍も必要なものが愛です。
その愛をはぐくみ育て感じさせてくれるのが小説です。
ですので、小説を読まずして仕事をすれば愛情の薄い仕事になると僕は考えます。 まぁこういう風にしゃべってること自体がとてもビジネスライクだし、理論的で嫌な喋り方ですけども、あえてその質問をした方に対して対抗する意味で論理で展開しております。
結局その時は、私はこう答えました。「多分、百田さんは零戦に乗った事はないと思います。でも頭の中でそれを空想することができます。そしてその空想したことを文字にして物語にすることが小説家です。その空想力を駆使してさらに愛を込め書き上げたものを、読者がそれに接することによってやっぱり想像力と愛を育むことができます。
それが百田さんの小説家としての力だし役割だと思います。
ですので、小説家に体験はほとんど必要ないと僕は思います。
逆にそういう想像力があってこそ小説家としてやっていけるのではないでしょうか。と言うようなことを答えた記憶があります
話がだいぶずれましたが、小説は今の苦しい状況から即座に問題を解決してくれるわけではない。ただ即座に心はそこから離すことはできます。
それだけでもかなりの良い効果があるのではないかと思います。
そしていずれは、その小説を読んだ体験が、その人の中に熟成されて徐々に徐々にいろんなものとの関わり合いで化学変化を起こし、その人の血肉となり、そして愛となり、日常生活と仕事に逆流していくのではないでしょうか。
ということで、朝のモーニングサラダを食べていたら、頭の中に突然ひらめいた言葉たちを、そのまま音声入力ソフトでメモをとり、多少の編集を加えて書いてみました。
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