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子どもの未来のための協働 6団体の3年間を振り返って(2023年5月26日号)

こんにちは、佐藤淳です。2020年度開始の「子どもの未来のための協働促進助成事業(休眠預金を活用)」が終わりを迎えています。この3年間何が起きたのか、学びがあったのかをお話しします。

なお、2023年度夏までには、実行団体やETIC.の事業成果や学びを記した事後評価報告書が、日本民間公益活動連携機構(JANPIA)のHPにて公開予定のため、参照ください。特に子どもやその家族への取り組みなど具体的な学びは各実行団体の報告書をご覧ください。
(参考:3年の学びの共有企画の記事​​​​

子どもの未来のための協働促進助成事業の起こり

本助成事業は、子どもとその家族に関連する複雑な社会問題の「予防」「早期発見」「対応」ができる地域エコシステムの醸成(※1)を目指しており、課題の状況・構造把握、関係者間での議論・対話、計画の調整などチェンジ・エージェント(※1)の役割を担う主体を6団体採択・3年の助成・伴走を行いました。(※2)
(参考:立ち上げ経緯や想いを話した記事

なお、事業の構想と推進にあたっては、日本国内の子どもを取り巻く課題解決の取り組みをスタートさせた認定NPO法人かものはしプロジェクトとの協働で行っています。

(※1)本事業での用語定義
地域エコシステム:子どもを中心に、個々人・家族(ミクロ)、小中学校(メゾ)、基礎自治体(マクロ)レベルで取り組まれてきた支援が、相互連携・作用することで、個別のステークホルダーが意図した以上の成果を生み出すための社会的土壌。「地域エコシステムが実現された状態」とは、トップダウンや中央集権的ではなく、各レベルが多中心となりながら社会構造の現状認識・学習・適応力が高まり、個々の課題解決や価値創造が自然発生する状態を指す。

チェンジ・エージェント:子どもや家族を取り巻く多中心なエコシステム形成を促進する存在で、関わる個々人、組織の変容を支援する力を備える。自治体や地域のNPOをはじめ、多様なステークホルダーの変化・連携を促し、組織や制度の変革を進めることは重要な役割。

(※2)実行団体一覧
(チェンジ・エージェントを複数の主体または協働の枠組みで担っている団体もあり)


コロナ禍のなか始まったチェンジ・エージェントたちの挑戦・その結果

助成先の各地域では元々、子どもに関する様々なネットワークや組織/個人が個々に活動し、ときに連携しています。本助成はこういった多層的な地域エコシステム醸成の準備が一定整い、より協働の土台をつくり変革推進に向かっていく段階を主な対象としていました。

ただ、本事業が始まった2020年、新型コロナウイルスが広がり実行団体は対応に追われながら進みました。その後3年間の主な結果は以下の通りです。

  1. 現場支援を協働で行うことが促進され、ネットワーク形成と参加の広がりや関係醸成が進んだ。(連携した子どもや家庭への支援、組織/役職こえた関係醸成、ネットワーク参加主体の増加等)

  2. 子どもや地域内の状況や課題の学び合いや、目指す方向性が定期的に話され、活動の見直しや新規取組もいくつも開始された。(各ケースや地域の状況/取り組み状況の学び合い、アウトリーチも兼ねた共同調査、首長や担当課/支援者等も含めた定期のセッション開催で仕組み改善等)

  3. 1や2のような協働の促進や持続するための仕組みづくり、これらを働きかける主体の体制作りを行った。(地域の各主体からの信頼受け、つながる場や会議体の推進、各主体や連携促進のための基金づくり、チェンジ・エージェント機能を担う主体たちのチームビルドや協働の枠組みの法人化等)

上記の取り組みの結果もあり、助成期間中だけでも子どもや家庭にとって好ましい変化が多く起こっており、実行団体の自己評価でも、6団体中4団体が想定した水準またはそれ以上の成果をあげたと回答ありました。


23年3月実施の実行団体学び合い企画の集合写真

子どもの未来のための協働に向けた学び

チェンジ・エージェントの役割について、私たちも準備期間含め4年間、議論と試行錯誤を重ねてきました。その学びは、上述のような実行団体の活動をはじめ、国内外の実践者(※3)からも学びを得て、ETIC.の事後評価報告書にて約80ページほど記しています。

 (※3)
 こどもNPOセンター福岡(記事)、Here to There Edmonton / Tamarack
 InstituteのMark Cabaj氏との内部勉強会等

その知見をかいつまむと、

  • 地域エコシステム醸成に取り組むには、前提条件(レディネス)が整っていることが必要(例、影響力のあるリーダーの参画、変革への緊急性、利用可能な資源、協働の土台)

  • 地域エコシステムの醸成にはいくつか段階があり、各段階を経る際のポイントがある(例、準備期から形成期には、協働の土台となる関係性を構築し、問題意識を共有することなど)

  • 地域エコシステムをみる際は、ミクロ、メゾ、マクロの観点があり、各レベルでの取り組みが必要。特に、現場レベル(メゾレベル)での連携・協働を出発点に、より大きな変化(マクロレベル)につなげていくことが肝要

  • 計画通りに直線的に進めるよりも、継続的な学習と適応が有効

  • チェンジ・エージェントの役割はいくつか分けて考える必要あり、それらの役割を果たすために複数人/組織等で担い合う等体制面の工夫が重要

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本助成での副次的な特徴は、チェンジ・エージェントを担う方々/組織のトランジションが起きたことで、特に内面的な変容への課題感や伴走ニーズがあったことです。実際、6団体中4団体が、主導するネットワークの存在意義や互いの在り方・役割の見直しを行いました。

私が担当した実行団体では、ネットワークの大きな節目の前後で、リーダーたちへのヒアリング、2日間のリトリートでの対話、中長期ビジョンや新体制を検討する有志プロジェクトの組成や推進、代表交代と共同代表制への移行などを1年以上かけて進めました。活動の推進だけでなく、こういった生まれなおすプロセスの重要さを学びました。

20年9月実施の助成事業チーム内セッションの集合写真


Editor's Note - 編集後記 -

上述の知見は、チェンジ・エージェントを担う実行団体たちの実践知です。実行団体から、1つの組織の経営と、様々な主体とともに地域エコシステム醸成を促すリーダーシップや求められる知見の違いを感じているという声もありました。

本助成事業を企画・資金/非資金的支援を行う私たちも、子どもとその家族に関連する複雑な社会問題のことはもちろん、地域エコシステム醸成やチェンジ・エージェントに関する学習と適応が強く必要と、試行錯誤を重ねました。その点で、実行団体間の学び合いの企画と共に、私たちの体制も、日本の子ども領域の活動や地域エコシステム醸成に携わった方々も多く参画しており、強い想いと知見が集まる良いチームだったと感じています。

最後に、子どものテーマに限らず地域エコシステム醸成やチェンジ・エージェントに関する知見は重要で、実践者間の学び合いや相談し合う場が必要という声もありました。また、実行団体から、日本ではまだ個々の組織の成長や協働的な特定の取り組みの支援がほとんどで、現場支援・地域エコシステム醸成両方への助成で地域の中で仕組みが構築されれば、資金調達や組織基盤整備等の支援が相互に行われ、持続性が生まれるという声もあり。地域エコシステム醸成やチェンジ・エージェントへの助成や各種サポートする取り組みが、広がることを願っています。(佐藤淳)

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