今週の地域活性化、自治体関連ニュースまとめ(2021/08/16~22)
今週は「自治体DX」「地域の体験プログラム」「関係人口創出」「災害対策」に関するニュースをお届けします。
カバー画像は雲仙市小浜町にある小浜歴史資料館(本多湯太夫邸)。スタッフの方々がとても丁寧に小浜の歴史や見どころを教えてくれます。小浜観光の際はまずこちらに寄られると、より観光を楽しむことができるでしょう。
■自治体DX「職員間にIT知識の差」9割 ベネッセ調査
ベネッセコーポレーションは自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関する調査を実施。DX推進を担う自治体職員の約9割が「職員間のIT(情報技術)知識に差があるため、DXのプロジェクトを進めにくい」と回答。以下のような意見も目立ちました。
・どう学べばよいのかわからない(8割)
・どんなIT技術があるか、活用できるかわからない(7割)
・IT関連の提案を受けても適切な判断をすることが難しい(6割)
企業、自治体関わらず必要性が強く認識されるようになった DX。言葉を濁さず言ってしまうと 「IT(情報技術)に関してほとんど何も知らない」というのが現状なようです。そもそも技術やサービス、できることすら知らないを状態で 「DXを進めるんだい!」 と言ったところで何も進まないのは当然ですね。
そもそも定員削減や、コロナ対応等の突発的な対応を求められることから公務員は慢性的に忙しい状況にあります(公務員安泰説なんてない)また地方公務員の研修費と民間企業1人あたりの年間研修費用は10倍以上の差があるため、DXやITに関する情報や知識に疎いのは当たり前のことです。
この状況を解決すべく、ベネッセは出資&提携するオンライン学習プラットフォームである「Udemy」において、自治体向けにDX関連やビジネススキル等、約5,500講座が学び放題のサブスクプランを用意しています。
また今週、自治体向け研修動画配信サービス「地方公務員オンラインサロン for GOV」の無料トライアルが開始されたというニュースもありました。1人辺り、1000円以下の費用で、40本以上の地方公務員に特化したセミナー動画が閲覧できます。
こうしたサービスを利用しながら職員の知識・スキル向上を図り、自ら業務効率化を進めていければベストですね。また業務時間内のスキルアップを認める等、職員の自学習を奨励する文化の形成も大変重要なことだと思います(この辺りはどうしてもトップダウンで醸成していく必要がありますが...)
一方で、「IT関連の物事に触れるのにそもそも抵抗がある」といった意見も5割近くあるため、まずは趣味程度でよいのでいろんなサービス(メルカリやUberEats等でも)を触り、 「ITを使うことで業務や生活がより便利になる感動体験」 を知ることから始めなければならないかも知れません。
いずれにせよDXを叫ぶ上では、長期的視点をもって、まずは土台をつくるところから始めなければならいないということです。今回の調査内容含むベネッセが発行する「自治体DX通信」は こちら からご覧いただけます。
■北海道東川町、体験型のカタログギフト発売、自然アクティビティや飲食など全34プランを1冊に
北海道東川町が町内の自然アクティビティや飲食などの体験全34プランを1冊にまとめた体験型のカタログギフト「ここのこと。ひがしかわ」(5,500円)を発売しました。庁内店舗やオンライン、ふるさと納税で販売中です。
体験型のカタログギフトとしては「Sow Experience」が有名ですが、そのローカル版といったところでしょうか。
雪山トレッキング等のアクティビティから、地元素材を味わえる飲食、工房でのものづくり体験や、地域の魅力発見ツアー等の4カテゴリから自由に選択することができます。カタログでは各カテゴリのストーリーや思を綴るとともに、綺麗な画像をベースに体験できるプログラムの内容がスッキリまとまっているため、体験後は地域の旅行本や読み物としても活用できるようになっています。以下から冊子が閲覧できます。
自分が地域に眠る良さはなかなか発見できないもの。小規模なエリアで地元の魅力を再発見する 「マイクロツーリズム」 の盛り上がりをしっかりと捉えていますね。
近くにあるのに知らない、心躍る体験や知られざる特産・名産・伝統工芸。見たことない景色、触れたことのない文化、食べたことのない料理にふれるきっかけをくれる大変優れたサービスだと思います。
■関係人口創出「おてつたび」受け入れ先が全国47都道府県に拡大
地域の季節的で短期的な人手不足で困っている農家や旅館などの事業者と、「知らない地域へ行きたい」「仕事をしながら暮らすように旅したい」など地域に興味がある若者をマッチングする「おてつたび」の受け入れ先が全国47都道府県に拡大し、全国で利用できるようになりました。「おてつたび」を活用することのメリットは以下。
受け入れ先
・ 季節や需要の変化等で突発的に生じる人手不足の解消
・ 関係人口の増加
・ 外部からみた地域の魅力再発見
参加者
・ 事業者から報酬や寝床、食事を確保できるため、旅費の削減が可能
・ ユニークな経験&体験を通じ、知らなかった地域を発見することが可能
・ 地域の人々と深く関わることができるので「第2のふるさと」ができる
実際におてつたびを利用するまでその地域をほとんど知らなかった参加者が6割以上。またその中の6割以上の参加者がおてつたび終了後に地域を再訪しており、移住につながった事例もあります。
単発的な人材マッチングサービスとしては海外だと「Instawork」、国内だと「タイミー」あたりの成長が目覚ましく、ギグワーカーの需要が高まっていることが分かりますが、「おてつたび」は地域と参加者の間に中長期的でぬくもりのある関係性ができることを目指しており、単なる人材マッチングではないところに留意。短期人材マッチングと昨今の関係人口創出のニーズをうまく捉えた素晴らしいサービスですね。
事業者の登録費、掲載料は無料。マッチング手数料のみを徴収するビジネスモデルなので気軽に利用できます。
■身近な公民館を避難所に 地域の災害対策について考える
鹿児島県鹿屋市は、災害時に町内会が公民館などに独自に開く「届出避難所」を登録する制度の運用を開始しました。申請のあった施設を市職員が審査した上で、市の指定避難所63カ所とは別に、町内会の自主防災組織が地区内の住民向けにそれぞれの判断で開設します。早期の分散避難や全体の収容力の向上を狙ったものですが、顔見知りの多い環境なら避難者のストレス軽減の効果もあるようです。
さて避難所が増えたことで、新たな課題となるのが、「今、どの避難所に何人くらい避難しているのか」という状況把握。蜜を防ぐために最大収容人数を削減している背景もあり、実際に避難指示がでている状況下の中、車で2,3箇所回ってやっと避難所に入れたということも各地で起きています。未だ多くの自治体において、「1時間毎に各地の避難所に配置されている市職員が、災害対策本部に電話で混雑状況を報告する」といった非効率な運用がなされており、リアルタイムで効率的な避難所混雑状況把握のニーズが高まっています。
これらの解決策として、鹿屋市は市内の指定避難所の混雑具合やライフラインの状況が一目で分かるインターネット上のマップを、7月から運用を開始。マップ上では、避難者数の情報をリアルタイムで更新し、混雑具合を「空き」「半分」「混雑」「満員」の4段階で示す他、電気やガス、水道などのライフラインが利用可能かも表示します。これは一般市民が避難所の状況を書き込める「未来共生災害救援マップ(災救マップ)」を活用しており、開発元の大阪大学の協力を受け、鹿屋市内の避難所は市職員だけが情報を入力できるようにシステムを変更しています。
この他にも飲食店等や施設の混雑状況把握できるサービスを提供するスタートアップの 「VACAN」 が昨年から自治体向けに避難所混雑状況把握システムを無償提供。こちらも避難所の混雑状況を各地にいる職員がPCやスマホで入力することで、混雑状況をVACANで配信。住民は専用のポータルサイトから、避難所混雑状況の把握が可能です。すでに90以上の自治体に導入されています。VACANではセンサーやカメラ等IoT機器から人数の自動カウント技術等を持っているため、人の手を介さない混雑状況把握が実現できるかもしれません(実現可否や料金については要相談)
情報のリアルタイム集約はITの得意分野。このようなテクノロジーを積極的に活用し、安心安全な地域づくりに活かしていきたいですね(← そのためにIT活用でなにができるか、どんなサービスがあるか把握することが重要という最初のニュースのテーマに戻る)
雲仙市での豪雨災害について
8月9日から続く豪雨災害により、雲仙市では甚大な被害が発生し、複数の犠牲者も出ており、その中には地元の観光協会で地域の魅力を熱心に発信し続けてきた方も含まれていました。ようやく雨は弱まってきましたが、今も避難所生活を余儀なくされている方がおり、市役所関係者はじめ、多くの方々が事態の収束、復興に向けて尽力しています。犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復興を願っています。
トラストバンク、九州を中心とした各地の記録的大雨、被災地の29自治体が、ふるさと納税の受付開始
そんな中、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営する株式会社トラストバンクが8月9日から続く大雨により被災した自治体に対して、ふるさと納税枠で寄付ができる仕組みを開始。寄付者は被災地に寄付金と一緒に応援メッセージを送ることができます。返礼品はありませんが、雲仙市をはじめ被害を受けた地域へのご支援をお願いいたします。
自治体側もサイトで被災状況や寄付金の活用事例を報告できるため、いただいた寄付金に対する感謝を伝えるために、また今後当該自治体のファンを増やすためにもきちんとコミュニケーションを取らなくてはいけないですね。